『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

44話 免許皆伝。旅立ちの日。


 44話 免許皆伝。旅立ちの日。

 『極限を超えた匠の神業で磨き抜かれた業物』を超える狂気の鋭さをもって、
 キノキの棒が、平熱マンのノド元に襲い掛かってくる。

 ――その流れの中で、神が叫ぶ。


「平! 『お前の剣の限界』はそこじゃない!」


 踏み込み足が空間を裂いて、
 振りぬかれた棒が、次元に風穴をあける。

 センの猛攻に、

「ぬう! ぐぅうう!」

 平は必死になって耐える。
 センの『導き』は止まらない。


「届け! 届いてみせろ! もう背中は見えているはずだ! 今のお前を置き去りにしたお前の背中! 手を伸ばせ! 掴みとれ!」


 師の声がこだまして、
 脳がギンギンに熱くなっていく。

 膨れ上がった熱は、
 不思議な話で、
 絶対零度よりも凍えていた。

(ボクの剣が加速していく……熱く……冷たく!)

 確かな輪郭が見えた。
 未来は平熱マンの手の中。
 自分を囲っている牢獄にヒビが入る。

(もう一歩……あと少し……)



「いくぞ、平!」



 師の加速が臨界点に達した。
 棒を握る両手に光が宿る。
 形容しがたい、暖かな光。

 禍々しさが昇華されて、
 集約されて、
 だから、


「――心神殺華(しんじんさっか)・一閃(いっせん)――」


 それは、心を殺しにいった一手。

 神々しい剣波が、
 平を裂かんと向かってくる。
 その剣波は、
 最善最強の一手でありながら、その上で、
 平熱マンを試す一手でもあった。

 一瞬、平熱マンのすべてがスローになった。
 超感覚。
 殻が砕ける音が確かに聞こえた。
 ほんのわずかな、けれど、破格に濃密な一瞬。
 ――その向こうで、

 平は、


「……見えた……」


 穏やかな時間の底で、
 剣(つるぎ)の神髄をつかみ取る。





「――閃光・平熱マン・スラッシュ――」





 ――重なり合った、二つの魂魄。
 神々しい閃光に包まれる平の一手。

 センエースの目の前で、
 平熱マンは、

 ――尊き『一閃』を、
         切り裂いてみせた。


 キュインっと、
 光と光がぶつかった音が世界に響く。
 そして、パンッっと、景気よく光の弾ける音がした。


 すべてが重なって、
 世界には、
 二人の残身が刻まれる。


「……っ」


 気づいた時、
 センの頬に切り傷がついていた。
 紙の端でシュっと擦った程度の傷。

 『ダメージ』とまでは表現できない、ちょっとした傷。
 回復魔法なんて使わなくても、明日までにはふさがっているであろう擦傷。

 しかし、そのキズは、間違いなく、
 平熱マンが『油断していないセン』につけたもの。

 だから、

「……」

 穏やかな沈黙を経た二秒後、
 センは、

「見事だ、平……」

 感慨深そうに目を閉じて、
 ボソっと、

「文句なしの免許皆伝。お前は……強くなった」

「すべては『師のお導き』があったからこそ……そう、なにもかも……あますことなく……」

 平は、心からの感謝で包み込まれる。
 師の魂魄と己の軌跡が重なったことに対する恍惚が止まらない。

 センは、穏やかに言う。

「俺はお前を誇りに思う」

 師の言葉は、いつも、平熱マンを狂気的な多幸感で包み込む。

「ぁあ……なんと……なんと、もったいない御言葉……」

 片膝をつき、右手を胸にあてながら、歓喜の言葉を紡ぐ平。

 そこで、センは、
 浸っている平熱マンに背中を向けて、


「さあ、我が弟子『平熱マン』よ……『一人立ち』の時だ。『辿り着いたお前』は、今日より『俺の手』を離れる。少し寂しくなるが、これも師弟のサダメ。涙を呑んでお前を『見送ろう』じゃないか。これから先、『巣立ったお前』と俺の間には『物理的な距離』が出来てしまうわけだが、しかし、俺はいつも『遠く』から、お前を見守っているぞよ。それでは、さらばじゃ」


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