『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

34話 エンディングノート(遺書)


 34話 エンディングノート(遺書)

「平熱マン・スラ――」
「その愚直さが通用するのは、お前よりも『少し強い者』までだ。俺には届かない」

 センは、
 サラリと、平熱マンのふところにもぐりこみ、
 まったく力の流れを感じさせることなく、
 平熱マンに、ほとんど触れることもなく、

 フワリと、
 平熱マンを背負って投げた。

 まるで、体育の授業で行われる教師の実演。
 ケガをさせないように・力をこめないように、
 細心の注意が払われた、背負い投げ。


 だから、平は、うめき声の一つも出さなかった。
 少し驚いて、それで終わりだった。

「――っ」

 痛みも衝撃もない。
 ただ、ぬるりと投げられただけ。
 だから、
 すぐに立ち上がって、反撃しようとした――が、

「っ」

 動けなかった。
 意識はある。
 痛みはない。
 だが、動けない。

(……血だけではなく、オーラも止められた……)

 ――そんなに難しい話ではない。
 先ほどのように、陽気だけを停滞させられたのではなく、
 陰陽まとめて調和を崩された。
 それだけ。

 センは、平熱マンを投げると同時に、
 『停滞の気当て』を放った。
 ズレるように、歪むように、混沌を背負うように。
 だから、正確には止まったのではなく、停滞している。

 停滞の気当ては、特に難しい必殺技ではなく、
 気功術の初歩の初歩。
 オーラの運用術で最初に学ぶ技法。

 非常にシンプルな技だが、
 効果は絶大。

 まるで、ジョーにアッパーを決められたボクサーみたいに、
 意識はハッキリしているし、
 戦意は十分だし、
 痛みも何もないのに、

 ――体が言う事を聞いてくれない。


「……よくわかっただろ。これが『センエース』だ」


 天から降り注ぐ言葉。
 究極超神センエースは、どこまでも雄大に、尊大に、
 少しだけ乱れた衣服をパパっと正し、
 平熱マンに背を向けて、

「お前の負け。これ以上の譲歩はしない」

 切り捨てるようにそう言ってから、

「それでは、先ほどの命令を実行に移せ。俺は、少し遠出して、この世界の全体像を見てくる」

 淡々と事務的にそう言った。

 その間も、平熱マンは、必死に体を動かそうとしているが、
 しかし、まったく言う事を聞いてくれない。

(こ、ここまで深く停滞させられるなんて……ゆ、指一本……わずかも……な、なさけない! いや、自己嫌悪をしているヒマなどない! どうにか! どうにかして、動くんだ! くっ……動けぇ! 頼む! ……師が……師が行ってしまう!)

 焦燥・不安、
 そして自分の弱さに対する怒り。

 だから、よけいに気が乱れて停滞はより強くなる。

 そんな平熱マンに、
 センが言う。


「そうだ。一つだけ言っておく」


 簡単なことのように、
 なんでもないことのように、
 偉大なる神は言う。

「万が一……まあ、そんな事はありえないんだ……が、しかし」

 慎重に、
 言葉を厳選しながら、
 神は、





「……けど、もし俺が殺されたら、以降は、シューリがゼノリカの頂点だ」





 『その言葉』が耳に届いた瞬間、
 平の心臓にビリっと電気が流れた。

 痛い。
 苦しい。

 ――想像するだけで死にそうなほどの絶望。

 そんな平に、
 センは続けて、


「シューリは俺より要領も器量もいい。俺なんかよりも、ずっと優秀な指導者になってくれるだろう。シューリの言う事を聞いていたら間違いはない。なんせ、あの女神は『どこにでもいるただのボッチ』を『神の王』にした女だ。ハンパじゃない」


 と、デリカシー皆無の発言をする。

「ありえないことだが……仮に、俺程度が死んだとしても、そんなことは、ゼノリカにとって大した問題ではない。だから、俺ごときの心配とかするな。俺風情が消えてもゼノリカに支障はないから」

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