『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

18話 お前は誰だ?


 18話 お前は誰だ?

 ほんのわずかな一瞬で、ほんのわずかなスキマを見つけ、そこに、コンマ数秒の遅れもなく収まり続けなければ、無残に全身が貫かれてしまうレーザー地獄。

 その地獄を、

「ん? もう終わりか? 速度はそこそこだったが、持久力はイマイチだな」

 汗一つかかず、鼻歌交じりに乗り越えたセンを見て、
 蝉原は、


「……」


 茫然(ぼうぜん)とした顔を見せるばかり。

 まるで、心が枯れたよう。

 スゥと、みじめな冷や汗を流し、
 二・三度、口をパクパクさせて、
 そして、
 五秒後、

「……っ」

 気力の抜けた『弱いため息』をついて、



「は、はは……まいったな……」



 心底から絶望した顔で、

「絶句するよ……イカれてる……つ、積んだものを、残さず、全部放出したのに……」

 蝉原が放出したのは、自分が溜めていたものだけじゃなかった。
 P型センキーが密かに積んでいた『いくつかのバフ』――
 そのバトンを受け取った蝉原は、
 さらに、先ほどの、センとの会話の中で、
 ソっと、バレないよう姑息に狡猾に、積み技を重ねがけしていた。

 『限界の全力』を出せるよう、しっかりと下準備をして、
 一手のミスもなく、
 かつ、ほぼ全ての魔力とオーラを込めて、
 『今の蝉原に出来る最強の一撃』を放った。

 禁止魔カードの助力も受けて、
 実はとんでもなく存在値が上がっている状態で、
 かつ、溜めに溜めに溜めに溜めに溜めた一撃。

 全身全霊をぶちこんだ、文字通り『魂の一撃』だった。
 『殺し切る事はできないだろうが……せめて、センエースのHPを半分ぐらいは持っていってほしい』――と願いながら撃った。
 そんな……本当に、最強の一撃。

 ――だけれど、結果は散々。
 HPを半分もっていくどころか、
 かすりもしなかった。


「……こ、このレベルの敗戦処理をやらされるとは……聞いていないぞ……」


 ギリっと、奥歯をかみしめる蝉原。
 じっとりとした汗が頬を伝っていった。

 蝉原は、一度、震える両手で、グシャグシャっと頭をかきむしってから、

「……一つ、聞いていいかい、閃くん」

「なんだ、蝉原」

 蝉原は、うつむいて、目を伏せて、

「……本当に、君は……俺なんかに憧れていたのかい?」

 その問いかけに、
 センは、二秒をかけた。
 『何を言うべきか』ではなく、
 『どう言うべきか』に悩んだ時間。

 純粋な二秒後、
 センは言う。


「……まあ、あの頃は俺も坊やだったからな……」


 ボソっと、そう言ってから、
 しかし、フイっと首を振って、


「――なんてクソ以下の言い訳をする気はない。お前は、間違いなく、俺の憧れだったよ。鬱陶しくて、厄介で、面倒くさい、畏怖の象徴だった。だから……」

 そこで、センエースは口を紡いで、
 まっすぐに、武を構えた。
 しっかりと、
 本気の構えで、
 蝉原と対峙する。
 もう言葉はなかった。
 センエースは、ジっと、強い視線で、蝉原センキーを見つめている。

 その姿を目の当たりにした蝉原は、

「は……ははっ」

 泣き笑いの顔をして、
 一度、小さく頷くと、
 両手の拳を握りしめ、

「もう一度名乗りたい。どうしても。だから……聞いてくれないか。俺が誰なのか」

 蝉原の頼みを、

「俺の前に立つ者よ。……お前は誰だ?」

 センエースは受け入れた。

 これは、お情けじゃない。
 この想いは、決して、情(じょう)なんかじゃない。

 ――これはケジメ。

 だから、

「……俺は、閃光を纏(まと)う冒涜――その強大な器に寄生する亡霊。『この上なく尊き神の王』を煩(わずら)わせた時計仕掛けのオレンジ、蝉原勇吾」

 今もなお『蝉原センキー』のままだが、
 しかし、彼は、堂々と、蝉原勇吾を名乗った。

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