センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

40話 命は、喰われるために存在している。

 40話 命は、喰われるために存在している。

「俺は、P型センキー。お前の精神力と、ソンキーの天才性を併せ持つ、最強の神!! その上で! 狂気の性能を誇る、ブッチギリ最強の携帯ドラゴンを所有した、完全なる王!!」

 その宣言を、

「……」

 センエースは黙って聞いていた。

(ナメた話だよ、実際。……俺が……俺たちが積んできたものを全部パクられて、ごちゃまぜにされて……振り回されて……)

 普通にイライラしていた。
 これは『許せない』とかいう、ちっぽけな感情ではない。
 なんというか、
 言葉にしきれない不快感。

 表現しきれずに、ただイライラしているセンエースに、
 P型センキーは、ボソっと、

「センエース。お前は終わった。俺が勝ち、世界は終わる。俺に喰われて、全て消える」

「……お前の最終目標は、世界を喰う事なのか?」

「ん? 言ってなかったか? ……ああ、そう言えば、言ってなかったかもな。俺の中では当たり前のことすぎて、宣言し忘れていた。悪い、悪い」

 センエースは、さらに膨れ上がったイライラをグっとのみこんで、
 スゥハァと、一度深呼吸をしてから、

「……なぜ、世界を喰いたい?」

 そう問いかけると、
 P型センキーは、

「はぁ?」

 と、心底呆れたような顔をしてから、

「お前、腹が減ったこと、ないのか?」

「……」

 質問に対し質問でかえされていながら、
 なんの文句も抱かなかった。
 それほどに明瞭で快活な解答だった。

 P型センキーは、バカなガキに道理でも教えるみたいに、

「世界を喰らい、腹がいっぱいになったら、また新しい世界を創る。そして、あるていど育ったところで、また喰らう。俺は、それを……今まで、ずっと繰り返してきた。俺は、そういう存在だ」

「……っ」

「なぜ、そんな顔をする? 人間だってやっていることだろ? 畑に種をまき、育ったら収穫して、また種をまく。俺がやっていることと、何が違う?」

「……」

「少しばかり、規模は大きいが、やっていることは何も変わらない。ようするに、命とは、俺を満たすための贄なんだよ。豚は太らせてから包丁をいれるだろ? 夢も、希望も、愛も、慈しみも、すべては、ただの肥料。命を太らせるエサに過ぎない。お前たちは、時折、自分が産まれた理由について悩むが、そんなものはハッキリしている。お前らは食糧。俺に食べられるために産まれてきた。それ以上でもそれ以下でもない」

「……なるほど」

 そこで、センエースは少し深く息を吸った。
 ドクンと、胸の奥が熱くなる。
 気づけば、イライラは消えていた。
 イライラが消えた理由はいくつかあるが、一番の理由はチグハグ感。

(本音を言っているんだろうとは思うが……それだけではない気がする……なんなんだろうね、この妙な感覚は……まあ、どうでもいいが。今、この瞬間において、最優先されるべきは、俺の疑念ではなく……)

 ジンと重たい熱だけが、芯の奥でチラチラと燃えている。

「ちなみに、一つ聞いておく。答えろ、P型センキー」

「なんだ? 支障がなければ答えてやる」

「お前にとって、世界が食い物だというのはわかったが……しかし『メシを食べなくても生きていける種』は存在する。それをふまえての質問だ。世界を喰わなければ、お前はどうなる?」

「さあ、知らん。俺は今まで、自分の欲望を我慢した事がないからな」

「……そうか。じゃあ、質問を変えよう。お前は、今まで、自分の欲望のために奪ってきた命の数を覚えているか? ああ、あらかじめ断っておくが、俺が今までに食べてきたパンの枚数は聞くなよ。俺のことはどうでもいいんだ」


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