センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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58話 二人、みつけた。それだけの話。


 58話 二人、みつけた。それだけの話。

「ぼくが本気を出せば、どうでもいい相手には、絶対に気付かれん。少なくとも、特に洞察力が鋭いわけでもない女子中学生にバレるようなヘタはこかん。大きな声では言えんけど……ぼくかて、タナカ家の人間や。そこらの連中とは質が違う」

 『凡人と話を合わすことができる』という技能そのものは、タナカ家のソレとは一線を画しているものの、『難易度の高い超絶技巧をサラっとやってみせる』という特異性は、確かに、タナカ家特有の資質。

 ――ウラスケは、そこで、
 ごほんと、からっぽなセキをはさんでから、

「具体的に、『当面の問題』の解決策を述べたる。ぼくは、バグの中におった時、バグを解析して、あいつらの関係性――『原初の個体』と『フラグメント』の結びつきを暴いた。完全には無理やったけど、システムの一部はトレースできた。奪って、改造して、ぼくの中にくみこんだ。ぼくは、間違いなく、あんたの加速装置になれる」

「ふむ……」

「ぼくは、絶対に、高瀬ナナノと繭村アスカを助けたい。あの二人を取り戻すためなら、ぼくはなんでもする。あんたと合体でもなんでもしたる。あんたの……強化パーツに成り下がることも……いとわん!!」

「……ええ覚悟や。で、ちなみに、聞いておきたいんやけど、『どっちをメイン』で助けたいんや?」

「どっちもや!」

「……それは……どうなんや? 目移りは感心せぇへんなぁ……ワシみたいに、こう、『たった一人』を相手に『真剣勝負』というのが、なんというか、その……いや、まあ、ワシの恋愛観はともかく……倫理的・道徳的・社会的にも、二人選ぶいうんは、誠意にかける気がしてならんとワシなんかは――」

「あんたは、『たった一人』をみつけたんかもしれんけど……ぼくは違う。ぼくは、目移りなんかしてへん。ただ、純粋に、『二人』見つけた……そんだけの話」

「……ふむ……」

 熱に圧倒されて言葉をなくすトウシ。
 コンマ数秒の思考のすえ、

「……ま、好きにしたらええけど。ワシに、お前のその辺をとやかく言う権利はないし。ただ、一つだけ言うておくと、この国で重婚は認められてへんで」

「この国に固執せないかん理由が、ぼくにはなさすぎる。今の時代、ネットと端末があったら、どこでもビジネスは出来る。あんたほどやないけど、ぼくかて、最低限、パソコンやスマホを使う事くらいはできる。ぼくの素養があれば、たった二人を養う程度、楽勝すぎてアクビが出るわい」

 宣言を受けて、

「……歪んでいて、理解しがたい……が、しかし、まあええやろう。…………お前の覚悟、しかと受け止めた」

 トウシは、目を閉じて、
 右手を、ウラスケの胸にあてた。

「モノは試し。もし、ノイズにしかならんかったその時は、吐き捨てればすむ話……と、ソンキーも言うとることやし……貰うで、お前の全部」

「言っておくけど、ぼくとあんたが合体するんやから……あんな虫ケラに負けるなんて許されんで」

「プレッシャーかけんなや。重圧感に負けて、チビってまう」

「……そんなタマやないやろ」

 交わした言葉が混ざり合って、
 魂魄が重なった。




「「……ぁあ、なんや、これ……」」




 ブゥーン、と震える音がした。
 直後、
 互いの奥から、
 大噴火のように、何かが、突き上げてくる。

「ぼくのメルクリウスと……」
「ワシのエルメスが……」

「「共鳴しあっとる……」」

 まるで、最初から一つであったかのように、
 なんの問題もなく、素直に互いを受け入れる。

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