『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

52話 進化を止めるな。

 52話 進化を止めるな。


「ソードスコール・ノヴァ」

 そう詠唱すると、
 ウラスケの周囲に、100本を超える『魔法の剣』が召喚された。

 ソンキーが続けて、

「――呱々(ここ)の声、
   心を寄せて、うたかたの、
   干戈(かんか)に濡れた杯(さかずき)を干す――」



 詩(うた)を並べると、
 100本を超える魔法の剣は、
 酔ったように、奇怪なダンスに興じつつ、
 瀟洒な嵐のように、
 リズムの乱れたステップを踏みつつ、
 ウラスケへと襲いかかった。

 ザクリ、なんて、無粋な音は聞こえない。
 ただ、スルリ、スルリと、
 軽妙洒脱に、ウラスケの全身を、薄く刻んで、かつらむき。

 ――薄っぺらな嘘となったウラスケの魂魄を、
 ソンキーは、粗雑にすくいとって、

「無様だな……本当に、タナカトウシと同じ血が流れているのか、はなはだ疑問」

「……」

「言葉すら失ったか……ゴミが」

 ソンキーは、感情のない声でそうつぶやくと、
 ウラスケの魂魄をその辺に投げ捨てて、

「さて、それじゃあ、サクっと終わらせようか。もう少し楽しいゲームになるかと思っていたんだが……拍子抜けだ」

 言ってから、
 ソンキーは、右手を、バグに向けて、


「じゃあな」

 核を破壊し、
 アスカとナナノの魂魄も奪い取ろうとした、
 ――が、

 しかし、そこで、





「――ナぜ、進化を止めタ――」





 ウラスケを包んでいたバグが、ボソボソと、


「――マだまだ、いけただろウ――」

 精気のない、
 電子音のような声で、


「――スでに許容量の限界? 知ったことカ――」


 禍々しい黒いオーラが、
 ユラユラとうごめいて、


「――コの、胸の叫びを昇華させる。そのためなら、いくらでモ――」


 もう止まらない。
 バグは、リミッターを失った。

「――サあ、謳おう、謳おうじゃないカ――」

 グンと、
 膨らんで、
 直後、
 バチンと弾けた。


 弾けて、砕けて、
 また集まり直して、

 そして、バグは、
 最後の理性を失った。


「――ィギイイイ――」


 そんな、異常な状態に陥っているバグを見て、
 ソンキーは、ボソっと、


「壊れ堕ちたか……」


 そう言ってから、

「……垂涎の展開だな。『ただの的』が『狩る価値のある獲物』になってくれた。くく……うれしいねぇ」

 ニタニタと笑みを浮かべ、

「誇れ。お前は、俺を磨く砥石。俺のために肥大し、俺のために死ぬオモチャ。さあ、行くぞ……殺してやる」

 一度、ギンと睨みをきかせてから、
 ソンキーは、右足にグンと力を込めた。

 ダンと、衝撃波が舞って、
 異常な練度の瞬間移動で、ソンキーは、空間を駆け抜ける。

 最速で最短距離を駆けたソンキーは、
 そのままの勢いで、
 右手に込めたオーラを、
 バグへと叩き込もうとした、

 ――と、その時、


「キィイイアアアアアアアアアッッッッッ!!!!!」


 バグが、天を仰ぎ、
 奇声を発した。
 その耳障りな音は、
 歪に連鎖して、
 けれど豊かに手を取り合って、
 一つの『大きな塊』になると、

 じゃれつくように、
 ソンキーへと襲いかかった。

「うぐぅっ――」

 あまりの圧力に、思わず声を漏らしてしまったソンキー。
 明確なダメージ。
 頬に刻まれた傷から高貴な血が流れる。

 ――『心底ナメ切った相手』から受けた『ちょいとシャレにならない一発』。
 油断が招いた、狂おしいほどのダサさ。
 そんな自分のみっともなさに怒り心頭。

「ゴミが……っ。見るも無残なカスの分際で、この俺に、恥をかかせやがって……っ」

 静謐(せいひつ)なブチ切れに身を任せ、
 豪速にブーストをかける。

「膨れ上がっただけの虫ケラが……はしゃいでんじゃねぇ」


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