『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

51話 狂う事すらゆるさない。


 51話 狂う事すらゆるさない。


 冷たい時間が流れていく。
 そんなおり、
 ――ソンキーが言う。

「一手一手が軽すぎる……そもそもの、根源的な、攻防のバランスに対する認識が甘すぎる。闘いになっていない。現闘や神闘がどうこうという次元に達していない」

「……」

「なあ、カス野郎。一つ教えてくれ……俺はいつまで、このくだらないギャグにつきあえばいい?」

「……っ……っ……」

 あとじさる。
 気力を狩りつくされた。
 まるで小動物。

「……っ……は……う……ぅう……」

 そんなウラスケの様子を見て、
 ソンキーは、軽く溜息をつき、

「この場からは動かず、使うのは指一本だけで、触られたら負け……この程度の縛りでは、さすがにヌルすぎるのか?」

 そうつぶやいて、
 少し空を見上げ、

「んー……しかし、それ以下なんて、何がある? もう、現状で、すでに、ハンデは精一杯……だろ? これ以上のハンデを背負うとなると、もはや、それは最低限の闘いですらなくなってしまう。俺はお前用のトレーニング器具じゃねぇんだよ」

「……っ……っ」

 過呼吸になり、
 上手に息を吐く事もできなくなった。
 全身の血が冷たくなって、
 頭を染める白色が、どんどん純度を増していった。

 頭の白が限界に達した時、

 プツンッと音がして、
 何かが切れて、

「は、ひゃははは!! か、勝てるわけねぇ! 紫の海は飲めませーん! ひゃはは!」

 歪んで壊れた。
 ソンキーの神気にあてられて、SAN値がマイナスになったのだ。

「殺せ、殺せ、ヒヒハハハハ」

 心を放棄した。
 発狂という、楽な道に逃げる。
 ――しかし、

「狂ったら終われる……とでも思ったか? 残念だが、逃避は許さない」

 そう言って、
 ソンキーは、人差指をウラスケに向けて、

「――神の慈悲――」

 魔法によって、ウラスケは、

「かはっ……はっ、ひっ……は? え?」

 強制的に、正気を取り戻させられる。

 バグった頭を元に戻されたという無慈悲な事実に困惑し、
 けれど、錯乱逃避することも出来ず、
 ただ、ジンワリと、『とまらない狂気の渦』の中心でもがき続ける。

 その耳は、正確に、
 ソンキーの無慈悲な言葉をとらえてしまう。

「お前が自分の意思で選んだ『その場所』は、決して、『ビビって尻込んでいれば済む甘い世界』じゃない」

 空気が、危殆(きたい)に瀕する。

「――ここは神域。修羅の牢獄」

 命の岐路。
 幻想の虚空(こくう)。
 静謐(せいひつ)な黒銀。

「理解できたら、さあ……とっととかかってこい。今のお前に許されている行動はそれだけだ」

「……」

「何を黙っている? まさか、魂がすくんで動けないとでも?」

「……」





「――だったら、最初から、絡んでくるんじゃねぇよ」





 声が、一段階低くなった。

「……ぅくっ」

 思わず、息をのむウラスケに、
 けれど、ソンキーは止まらず、
 その極端なほどの凍える声で、

「ソードスコール・ノヴァ」

 そう詠唱すると、
 ウラスケの周囲に、100本を超える『魔法の剣』が召喚された。
 100本を超える魔法の剣は、
 それぞれ、自由意思を持っているかのよう、
 まるでニタニタと笑いながら、ウラスケをもてあそんでいるようだった。


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