センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
28話 完全に人間をやめた……わけではない。
28話 完全に人間をやめた……わけではない。
「なんでも裏社会の方では、『ウチの家系に手を出したらあかん』ってルールがあるらしいから。仮に、そういう基本ルールすら知らんレベルのショボいチンピラにさらわれたとしても、すぐに、『やんごとない誰か』が動いてくれる」
「……」
「それに、『今のぼく』を誘拐できるやつは、この星におらん。メルクリウスがおれば、数百人に囲まれようと、マシンガンをつきつけられようと、余裕で対処できるから。ぼくの身柄をどうにか出来る可能性があるんは、さっきの連中くらい」
と、そこで、アスカは、少し暗い顔になって、
「あの人たち……またくるかな」
「くるやろな。それも一番ヤバいやつ……噂の『聖主様』ってヤツがくるはずや」
「……」
「まあ、でも、心配せんでええ。あいつらの闘い方はだいたい分かった。ぼくには勝てん。ぼくがおる限り、あいつらは、お前に手を出せん」
「私が心配しているのは……」
「ん?」
「田中くんの命……」
「……」
「あの人たちのこと……私はよく知らないけど……でも、なんとなく、雰囲気でわかる。あの人たちは、目的のためなら、なんでも出来る人たち……」
「その言い方したら、あいつらが、とんでもない悪人集団に聞こえるから、言語って不思議なもんやな」
おかしそうに笑ってから、
「人類を守るため……という、大義名分のためなら、なんでもすると覚悟しとる連中……あの手の連中はしんどい。信念を折るんは難しい」
そこで、ウラスケは、しんどそうに天を仰いで、
(神殺し……か。ほんまにやったんやろか)
心の中でボソっと、
(神を殺したようなヤツと、ぼくは、この先、殺し合う……抗うためには、神以上の力がいる……無茶な話や……)
自分の状況をまとめてみた。
すると、全身の奥で、恐怖が湧きあがった。
(神がどんなヤツか知らんけど、さすがに、ぼくより弱いってことはないやろ……ああ、しんどいなぁ……)
アスカの前なので、カッコつけて、平気なフリをしているが、
彼女がいなければ、きっと、嘔吐しながら、のたうちまわっていた事だろう。
タナカ家の人間は、どいつもこいつも、異常なスペックをもっているサイコパスだが、
しかし、『完全に人間をやめている』というわけではない。
つらい・くるしい・きつい・しんどい、それらの感情も、普通に持ち合わせている。
「……田中くん……」
ふいに、
アスカが、ウラスケの名を呼んだ。
「ん?」
視線を向けてみると、
アスカは、
「これ……見て」
と、言いながら、シャツのボタンをはずしはじめた。
「……ぉいおい、なにしてんねん……」
と言いながらも、彼女の手を止めたりはせず、
ジっと、血走った目で、その動向を見守る。
『止めるべき』という理性に、本能が真っ向から反論している。
その辺は、中学二年生男子まっしぐらだった。
アスカは、ボタンを外しおえると、
躊躇なく脱ぎ捨てて、
グイっと、中に着こんでいるTシャツも脱いだ。
そして、上半身は、『実用性だけを重視しているスポーツブラ』のみとなった。
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