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27話 何度でも言おう。タナカ家は異常。


 27話 何度でも言おう。タナカ家は異常。

 タナカウラスケの曾祖父――タナカウラヨシが全盛だった当時は、戦後の混乱真っ最中。
 ヤクザと警察が互いに支えあって、非合法行為を解決していた混沌の時代。

 止まらない冷害による凶作によって、世相は荒れに荒れていた。
 占拠や爆破という物騒な単語が連日新聞をにぎわした。
 急増する身売り、道端に転がる腐敗した死体。
 敗戦国の戦後という地獄。

 『おもろないな』
 そうつぶやいたウラヨシの拳は、かたく握りしめられていた。
 時代が彼に意地を与えた。

 決意したウラヨシは、縁があった右翼の源流とも呼ばれる組織でしゃにむに働きだす。
 その後、様々な事件と出会いの果てに、二十代半ばで、戦略物資の買い付け事業を開始。
 表ではタングステンやニッケルなどを海軍に納入していたが、
 裏では色々と、口に出すのも憚られる『悪事』をこなした。
 地獄の底で闘うための資金がどうしても必要だったから。

 裏社会で戦っていくために必要な金が安定して回収できるようになってからは、
 余った金を懐に入れるという名目で、多数の孤児院や慈善団体に寄付しはじめた。
 どうしようもないほど黒い金だが、そのおかげで、水は飲めるし、メシは食える。

 名乗っていないから、寄付された側は、その金が黒いかどうかも分からずにすむ。
 まともにやっていては稼げない大金……そのおかげで、救われた者が大勢いる。

 ――そんな金で救われて喜ぶ者がいるか?
 ――いる。なぜなら、生きられるから。

 ウラヨシは、自ら、闇の調整役という汚れ役を買って出て、多くの人を守ろうとした。
 身を削って汚い金を稼ぎ、多くの命を救おうとした。

 ――その結果、この国は、水と安全がタダという恐ろしいほどの豊さを得た。


 ★



「お手伝いさんとかいそうな家なのに……誰もいないの?」


 シンと静まり返った、人の気配がまったくない家に入ると、アスカはそうつぶやいた。
 ウラスケは、淡々と答える。

「日中に、掃除とかはしてくれるようになっとる。週に2回、五人くらいでとりかかって2時間くらいでパっと終わる感じ」

「田中くんの家って、お金持ちなんだね」

「ヒイジイさんから継いだ土地と家が立派なだけ。プラス、オヤジの保険金というか……なんかよう分からん金があるぐらい。何世代も遊んで暮らせるほどの超大金ではないけど、働かんでも困らんぐらいはある。あと、この家は、理由知らんけど、固定資産税とか払わんでええらしいし、他も、ウチの家系は、いくつか金の件で、免除になっとることがあるから、まあ、総合的に考えて、金持ちの部類かな。……ぼくが稼いだ金は一円もないから、なんの自慢にもならんけど」

「オヤジの保険金って……それ、もしかして、義父(おとう)さんは、もう亡くなっているってこと?」

「たぶん。知らんけど」

「知らんけどって……」

「ウチの家系はラリっとるって、さっき説明したやろ。もろもろ、気にせんでええ」

「……義母(おかあ)さんは?」

「小学生のころは、一緒に住んどったけど、中学に上がったと同時に、母親は自分の実家に帰った。で、月に一回、ぼくの様子を確認しにくるだけ。だから、ぼくは、実質、一人暮らしみたいなもん」

「え、なんで、一緒に暮らしてないの?」

「……もう、ぼくは充分に自立できるから。それと、ぼく自身、一人の方がよかったからかな。ほら、普通、独り暮らしって憧れるやん? そのノリ」

「……田中くんって、すごく変わっているんだね……」

「はぁ? いやいや、普通やろ。大学生とか、みんな、普通に独り暮らししてるやん。時期が6年ちょっと早くなっただけやで。6年とか、五十代とか六十代の視点で言えば、一瞬とかわらんからな」

「十代の視点でいえば、六年は、一生に等しい長い時間だよ」

 ボソっとそう言ってから、家の中を見渡し、

「……不自然でヤバそうなバックボーンがある超お金持ち……誰もいない家で独り暮らし……やっぱり、いろいろ、変だよ、君。……ていうか、だいじょうぶ? この状況だと、誘拐とかされ放題な気がするんだけど? 警備員とかも、一人もいないし」

「ああ、その心配はない。なんでも裏社会の方では、『ウチの家系に手を出したらあかん』ってルールがあるらしいから。仮に、そういう基本ルールすら知らんレベルのショボいチンピラにさらわれたとしても、すぐに、『やんごとない誰か』が動いてくれる」


コメント

  • 隠泉レイ

    友達に田中という苗字の人がいるのだが…………!!

    1
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