センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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26話 シャットアウト・ゾーン。


 26話 シャットアウト・ゾーン。

(もし、あのまま、さっきのヤツと戦っとったら……途中で、完全集中が切れて殺されとった……ほんまに引いてくれてよかった……助かった……)

 田中ウラスケには、

 ――『集中力を抑え込んでいる【通常時】は、全スペックが【同年代の最高レベル】程度にまで落ちるかわりに、完全集中状態時のスペックが跳ね上がる』――

 という『覚悟のアリア・ギアス』が積まれている。

 プラチナスペシャル『シャットアウト・ゾーン』とのシナジーで、超絶的なスペックになれるが、しかし、発揮できるスペックが凶悪すぎるのと、『現時点で捻出できるオーラ』が少なすぎるせいで、『ハイパーウラスケ状態』を長時間保つことができない。

 凶悪な力には、凶悪な制限が伴う。
 当たり前の話。
 勿論、この先の人生で、果てない訓練を経ることにより、ハイパーウラスケ状態の持続時間を延ばすことは可能。
 ただ、十数年しか生きておらず、絶望も地獄も経験していない現状では、ほんの数分しか保つことが出来ない。


「うぇ……おぇ……ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ!」


 限界近くまでハイパーウラスケ状態を維持してしまった反動で、
 ウラスケの全身は、莫大な疲労感と、極端な気血不足に襲われる。

 猛烈な頭痛と、筋肉の悲鳴。


 ――ブラックアウトしかけた、
 その時、

「し……しっかりっ……」

 アスカが、ウラスケの体をささえて、

「だいじょうぶ? どこか痛い?」

「疲れすぎた……だけ……フルマラソンした後……みたいな感じ……そんだけ……」

「ほんとに……大丈夫?」

 真っ青な顔で、ウラスケの心配をしているアスカ。
 その必死の表情を見ると、

「……は、はは……」

 ウラスケは、つい笑ってしまった。

「ど、どうしたの?」

「今、お前の頭の中は……ぼくの心配だけでいっぱいになっている……そんな気がして……だから……なんか、変に嬉しぃてなぁ……はは……キモいなぁ、ぼく」

「……」

 アスカの中で、声にならない想いが溢れてきて、
 だから、

「ちょっ……」

 アスカは、ウラスケをギュゥっと、強く、強く、抱きしめた。

 その力が、かなり強かったせいで、じゃっかん痛かったが、
 ウラスケは、痛みを訴えることはなく、そのまま、彼女の腕の中で、力を抜いた。


 ★


 ――その夜、
 ウラスケは、彼女と共に、自宅へと帰っていた。
 『また神話狩りに襲われる可能性』を考慮して、一緒にいるべきだとの考えから。

「大きな家……」

 ウラスケの自宅は、趣のある豪邸で、
 ほんのり『反社』系の香りがする屋敷だった。

「これ、ヒイジイさんの別荘なんや。ウチのヒイジイさんは、なんか、戦争の時、裏で色々やってて、めっちゃ金持っとったとか何とか聞いているけど、詳しくは知らん」


 ウラスケの曾祖父『田中裏吉(うらよし)』は、田中家の中でも異端だった。
 田中家の血筋は、極端な孤高主義者で、基本的には、他者との関わりを拒絶する傾向にある(恋愛に対してだけは特別で、深い関係を結んだパートナーとだけは蜜になる傾向にある)。

 だが、裏吉は、タナカ家の人間にしては珍しく、
 『個』ではなく、『国』を重んじた。
 『大勢の命』を守る為、自らを『闇』にさらした、タナカ家の突然変異。


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