『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

最終話 俺が最強の神だ。




 最終話 俺が最強の神だ。




「あぁ、大きいな、センエース。お前は本当に大きい……お前こそが、神の王だ」
「そうだ! 俺が! 俺こそが!」
「だが、勝つ! 俺は!! 神の王を超えた!!」

 ぶつけあった、意地と意地。
 極端なほど、膨れ上がっていく。
 光は、暴走の中で真理を得る。
 居場所を失って、心を見失って、
 蒙昧になって、
 剛毅が溶けて、

 一つ、一つが、一致していく。
 まだまだ、ふくれあがる。

「うそだ、うそだ、うそだ……負ける……俺が……」

 涙が滲んでいた。
 嗚咽が混ざる。

 魂魄の号哭が聞こえた。
 己の未来に、叡嘆あそばされる。

 声が震えて、
 魂がかすむ。

「絶対にイヤだぁあああああ!!」

 滅びの閃光が、まるで砂嵐のように吹き荒れた。
 リミッターの解除。
 神が煌めく。

「褒めてやるよぉお、ソンキィイ! お前は、限りなく俺に近づいた! だが、超えさせはしない!! 主人公は俺だ!! 最強で、無敵で、絶対の神! 最後には勝つ主役! それが、俺! 舞い散る閃光センエースなんだよぉおお!」

「そうだ! 主役はお前だ! 俺は、これまで、ずっと、『センエースが活躍する場面』を整える『かませ犬』担当だった! クライマックスを見守る端役でしかなかった! どこかで! 俺は、その地位であることに安堵を感じていた! 責任を背負うのは趣味じゃない! だから、お前が主役のままでもいいと思った!」

 エネルギーのぶつかり合い、その凶悪性が、さらに加速していく。

「だが、やはり、魂魄は騙せねぇ! センエースの引き立て役で終わりたくねぇ! 拒絶する! そんな運命! そんな惰性!」

 センエースだけではなく、
 ソンキーも、また輝く。

「かませ犬のソンキーは、今日、死んだ! 俺はお前を超える! ガラじゃねぇが、趣味じゃねぇが、心底めんどくさくて仕方ねぇが! それでも! 俺は叫ぶ!!」

 限界を超えた先。
 そのビジョンが輪郭になる。





「ヒーロー見参!!」





 固まった覚悟が、ソンキーの可能性を、さらにもう一歩、先へと推し進めた。
 違う世界。
 新たな次元。

 憧れが、具現化して、
 『本物』に近づく。

 グンと、一回り大きくなって、
 だから、重さが増して、

「うぐぅ……そ、そんな、ありえなっ……主役の俺が……負けるワケ――」

 それが最後だった。

 爆発的な光の収束。
 すべてが、輝きの中に収まっていった。



「う……ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ――」



 膨大な照射。
 輝きの渦。

 爆発は、陽炎のように、どこか静かで、けれど、やはりやかましくて。

 永遠にも、一瞬にも思えた、確かであやふやな時間が、
 神々の間でザラリと、歪な手触りでもってして流れた。

 無限にも思えた咆哮は、
 無慈悲に、神の王をさらっていった。
 死の輪郭だけを残して、
 気高き影を喰いつくす。

 雅量(がりょう)のある風が、不遠慮に吹いて、そよと流れた。


 神々の演舞に耽溺(たんげき)していた世界が目を覚ます。
 緩慢な拍動の中で、
 ほんのりと光彩を放つ。

 飲み込まれて、
 奪われて、
 そして、
 だから、

 ――あとかたも残さずに消えたんだ。





「はぁ……はぁ……」





 波動が収まって、輝きも落ちついた頃、
 全てを見届けたソンキーは、
 天を仰ぎ、

「俺は、ソンキー・ウルギ・アース。最果ての修羅。舞い散る閃光を狩った冒涜。つまりは――」

 ボソっと、


「最強の神だ」


 そう宣言すると、
 右手を、天に掲げ、

「お前の……お前達のおかげで辿りつけた……その礼をする。願いを叶えよう」

 掲げた右手が淡い輝きに包まれた。
 その強い光は、大きく広がって、
 全てを包み込んでいく。

 無限にも思えた激動の時間が圧縮されて、
 理想の終焉を整える。

 ――






 ★






 ――病院のベッドの脇でうたたねしていたナツミは、
 優しい震動で、目をさました。

 柔らかな、まどろみの中で、ナツミは、目をこする。

「……ぁ、あれ……」

 死の記憶がフっと、蘇った。
 『殺された』という強くて重たい記憶。
 痛みはまだ、心の奥に残っている。
 なのに、

「なんで……どうして……」

 そんな辛いだけの記憶は、

「……ナツミ……」

 耳に届く声が、かきけしてくれた。

 愛を与えてくれた声。
 ナツミは、顔をあげた。
 視線の先には、
 穏やかな顔で微笑んでいる母の姿があった。
 ベッドから降りて、ナツミを抱きしめている母。
 血色のいい、元気な姿。

 いつもは、寝たきりで、やつれていて、髪の毛も抜けて、全身の痛みにもがいて苦しんでいる母親だが、今は、その面影はなかった。
 特異な筋ジストロフィー(筋力の異常低下+白血病+脳炎の症状が出る地獄のような病気)の末期で、全身ボロボロ。
 最近では、起き上がることはおろか、目をあけることすら難しくなっていたほどだった。

 そんな母が、艶のある、おだやかな顔で、ナツミの頭をなでていた。

「マ……ママ……どうして……ね、寝てなくて大丈夫なの……?」

「うん……信じられないんだけどね。ウソみたいに、体が軽いの。体の中の、悪いモノが、全部、熔けちゃったみたいに」

「ほ……ほんと……?」

「きっと信じてもらえないだろうけど……ついさっき……夢の中で、『誰か』に言われたの。『願いを叶えてやる』って。私……『ちゃんと、あなたの、お母さんになりたい』ってお願いしたら……そしたらね……」

 母は、そこで、耐えきれなくなったように、
 ボロボロと涙を流しながら、ナツミを、力一杯抱きしめて、

「叶ったの……ほら、あなたを……ちゃんと強く抱きしめてあげられる。ごはんを作ってあげられる。一緒に買い物にもいける……あなたと一緒に……生きていける……」

 母は泣いた。
 我慢していた全てが壊れたみたい。
 だから、母の腕の中で、ナツミは泣いた。
 どうしたらいいのか分からなくて、ただ泣いた。
 産まれた時と同じくらい、力一杯、ただ泣いた。

 溢れた涙で世界がにじむ。
 命が、キラキラと光った。

 心が、命の意味を知る。
 心の定義とか価値なんて勉強しなくても分かる。
 大事な時に、ただ暖かくなって教えてくれるから。

「『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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コメント

  • キャベツ太郎

    えっ?嘘だよな?
    長万部さん?
    ↑こういう時もボケていく自分がマイブームです

    1
  • キャベツ太郎

    今までお疲れ様でした。
    これまでとても長く短い幸福をくれてありがとうございました。






    で、3章は明日からですか?

    1
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