『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

100話 そして、トウシは、


 100話 そして、トウシは、

 ソンキーの静かな気にあてられて、トウシの魂が蒸発していく。

(ここは檻(おり)……カギのない牢獄……)

 音が消えていく。
 シンと響いて、冷たくなる。
 バキバキになったシナプスの応酬。
 実に高性能なノイズキャンセラー。
 頭の奥から、何かが分泌されている。
 それは、きっと、科学では解明できない根源的な『命』をつかさどる粒子。

(逃げ場のない、閉ざされた世界……しかし――)

 ハッキリと分かる。
 ジワリと滲んで、しみわたっていく。

(ヒビが……見える……)

 豪速で回転する思考が、ソンキーの拳をパノラマにした。
 意識の全てをもって、ソンキーの拳と同調する。

 『重なった』と電気信号で理解するよりも速く、細胞が核を枯らしてわめいていた。
 最小単位の震えを追い越していく、魂の号令。

 不思議と恐怖は存在しなかった。
 ――だから、

 トウシは、

 ……届く。





「――神化――」





 コンマ何秒だったか分からない。
 一秒をミキサーにかけて出来る、欠片の時間。

 トウシのオーラが、はじめて常識を忘れた瞬間。
 暴力的に膨れ上がる。
 そして、一気に収束した。

 いまだ一秒がはるか遠くで瞬く『そんなコンマの底』で、
 闘神ソンキー・ウルギ・アースのソウルレリーフは確かに聞いた。


「まだ、足りへん」

 ギュっと圧縮された時間の中で、

「……『この上なき闘神』と向き合うためには……最低でも、もう一歩――」

 トウシの意識だけが明瞭で、
 だから、

「――超神化――」





 一歩、先に進むカオスの螺旋。


 トウシは、ソンキーの拳に着地した。


 重力を感じさせないトウシの下肢は、
 止まり方を忘れた回転運動の中で、
 優等生なエネルギーたちと、
 おててを繋いでルートに乗って、

「ぐぬっ――っ!!」

 ソンキーの顎に、カカトを叩き込んだ。

 衝撃が弾けとぶ。
 ズシンと脳天に届く。

 少しだけよろけたソンキーだが、
 すぐに、グっと姿勢を戻し、


「俺を演算した上で、思考を放棄して飛びこんできたか」

 二人の距離が、わずかに開く。
 ソンキーが求めたその距離は、
 実際のところ、かなり短いが、
 トウシの視点だと時空の彼方。

「真理を失った果ての二律背反。あるいは、主とすべき命題と合理に対するトレードオフ。なんにせよ、一歩先に踏み込んだが故のハイリターン」


 言葉が波になる。
 押しては引いて、
 揺らぎを包み込む。

「賞賛に値する」

 お褒めの言葉を受けて、
 トウシは、けれど、

「……はぁ……はぁ……」

 バッキバキの目をひん剥いて、必死に呼吸を整えることしかできない。
 そんなトウシに、ソンキーは言う。

「神になった気分はどうだ、タナカトウシ」

 明確に問われる。
 回答を求められていると理解して、なお、

「……はぁ……はぁ……」

 いまだ、呼吸が整わず、無粋な呼吸を繰り返す。

 心が燃え盛って、凍え切って、
 そして、もちろん実際のところは、
 そのどちらでもないという面倒極まりない混乱。

 フワフワとしていながら、ビリビリとしている、
 そんな厄介な時間の消化に全神経がからめとられる。

 けれど、その面倒な拘束も、永遠には続かない。
 適切な時間経過で、意識だけは正常に近づく。
 だからこそ、

(ワシは……)

 自分という概念そのものに困惑している。

 そんなトウシに、

「最初に、事実を伝えておこう。タナカトウシ……お前は天才だ。俺に匹敵する」

 ソンキーの言葉が、トウシの耳を撫でた。

「ワシは……どうなった?」

「扉を開いた。現世の限界を超えた。今、お前は、神の領域に辿り着いた。いや、正確に言うと、神を超えた世界に辿り着いた」


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コメント

  • キャベツ太郎

    ファッ?急展開スギィいいww
    ソンキーと同じぐらい天才とか今現在のセンに勝ち目なさすぎわろりんちょじゃね?

    1
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