センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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99話 本気の……


 99話 本気の……

「あいつは、俺の一歩先を行ったが、それでも、まだ、『永遠に手探りを続けていく無間地獄』の中にいる。究極超神の序列一位。神界の深層を統べる暴君にして、運命を調律する神威の桜華。舞い散る閃光。……そんな最果ての地位にあって、しかし、まだ……」

「……」

 ソンキーは、自分の両手をみつめながら、

「必死にあがいて、苦しんで、もがいて、どうにか枠から抜け出たと思っても、気づいたときには、また、『一回り大きな枠』の中でもがいている。いつだって、誰だって……」

 痛みを含む声。
 破格のイケボだけれど、脆い弱弱しさしか感じない。

 高みに立って、だからこそ見える弱さを背負い、
 ――ソンキーは言う。

「俺は、誰かにモノを教えるのが嫌いだ。向いていないし、やりたくもない。だから、俺は、お前に講義はしない」

 その発言を受けて、
 トウシは、軽く苦笑いを浮かべ、

(すでに、ここまでの段階で、それなりに、やってもらえとる気もせんではないけど……そのへんは、黙っとこか……)

 心の中で、ボソっとそう言った。
 そんなトウシの心情に関しては鈍感なソンキーが言う。


「ウォーミングアップはもういいだろう。というわけで、これから、俺はお前を――」


 ソンキーの視線が、そこでギンと鋭くなって、





「――本気で殺しにいく」





 重量のある発言を受けて、トウシは、思わず息をのんだ。
 心がズシンと重くなる。
 一瞬、クラっとして、
 けれど、

(ワシは、おそらく……)

 どうにか、

(世界で最も幸運な生き物……)

 自分を立て直す。

 ――『己がいかに恵まれているか』という理解と、
   『ここで折れたら、本当に終わる』という認識が、トウシの両足を支える。

 理解が本能を追い越していく。

(これほどの『偉大なる闘神』から、『本気』の手ほどきを受けられるヤツが……はたして、ほかに、どんだけおるやろうか……)

 脳汁があふれた。
 バチバチと、全身がしびれている。
 一筋の、感極まった涙が流れた。

 トウシの両目は、
 ひたすらにソンキーをとらえていた。
 一秒たりとも、目を離すことができない。

 ――ソンキーは言う。


「出し惜しみはするな。時間をかけようとするな。脆さや弱さに甘えるな。ただ全力で、お前の全てを俺に叩きこめ。できなかったその時は、そのまま黙って死ぬがいい」


 トウシの『認知の中』で、ソンキーの威圧感が、『絶望的なほど具体的』になっていく。
 特に、強大なオーラを放っている訳ではない。
 覇気は抑えられており、表情以外は、とても穏やかで、静かで……
 なのに、

(嵐の中……)

 無慈悲な暴風に晒されている。
 極度の不安定に包まれた。
 視界が狭くなる。
 ドクンと跳ねる心臓の音がやけに大きい。

 ゆったりと、ソンキーは、武を構えた。
 柔らかに、しなやかに、肘を曲げて、
 フワっと、遊びを残した拳を握る。

 その姿を見ると、トウシの脳はキュっとなった。
 気付けば無呼吸になっており、
 心臓も、かすかにトクっと、
 まるで空気を読んで気配を殺しているかのような、小さな鼓動に変化していた。


(――死を『受け』る――)


 脳が、異常なほど活性化しているのに気付く。
 トウシの目は瞬きを忘れていた。
 乾いていくのは、眼球だけではなく、全身のすべて。

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