センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

36話 クソバカ。


 36話 クソバカ。

「……ワシ、イケメンが嫌いやねんなぁ……このリビドーは止められへん。あと、エクストラアイテムにも興味がある。ここで入手しとかんと、あとで後悔する気しかせぇへん。うん、間違いない」


 トウシの覚悟を理解したナツミは、

「ここで死なれると困るのですが……」

 と呟いてから、

「まあ、でも……」

 純度の高い迷い。
 重たい葛藤を経て、

「そうですよね……どうせ、拒否しても……なら……」

 あきらめたように、そうつぶやくと、賞金の10万をトウシに贈与する。
 大金を受け取ったトウシは、


「さて、ほな、というわけで……」

 コホンとセキをしてから、



「ヒーロー見参」



 そう言って、ガチャを引くトウシ。
 即座に『大量に入手した☆X』を、

(基礎ステアップはシカトで、シナジー効果の上昇率を重視――スキルと称号でパッシブバフ加速――総合的には、トランスフォームを強化した方が強くなれると判断――おっと、この固有空間スキルは大あたり。ワシに合っとる――こっちをメインでの強化に変更――空間系スキルと戦闘力サポート系のクロスオーバーを――)

 ほとんど一瞬で掌握し、

(完成! これが最適解!!)

 最善の組み合わせを導き出す。
 凶悪な演算能力で『合理の正解』をはじき出したのとほぼ同じタイミングで、

 トウシの視線の先にいる、
 ボッコボコ状態の岡葉が、
 最後の力を振り絞って叫ぶ!



「たすけて! お願い! 誰かぁあああ!」

「うっさぁああい! 何回も言わんでええ!! ずっと、聞こえとる!!」



 そう叫び、
 トウシは、戦場に飛び込んだ。

 その背中を、

「……くそばか……」

 ジュリアは、悲痛な顔で睨みつけていた。





 ★




 飛びこんできたトウシをチラ見したジャミは、

「私の実力を目の当たりにしていながら、それでも飛びこんでくるとは……少しだけ不愉快だな。自信をなくす……もしかして、自殺志願者かな?」

 平坦な声でそう言った。
 その発言に対し、トウシは、じゃっかん渋い顔で、

「いや、ワシは自殺志願者やなく、ハイリスクハイリターンを求める生粋の博徒や。自分の命をベットして賭けをする狂気のギャンブラー。どうや、こんなやつ、相手にしたくないやろ? 引いてもええで。というか、引いてください、おねがいします」

「何度も言わせるな。私は主の命を受けてここにいる。タイムリミットがくるまで、私が引く事はありえない」

「あっそ……残念やなぁ……」

 言いながら、トウシは、

「トランスフォーム」

 エルメスを纏い、戦闘態勢を取る。

「ほな、タイムリミットがくるまで……どうにか粘ってみよかぁ」

「できると思うか?」

「できん可能性の方が高いな……わかっとる。でも、ワシなら、決して不可能やない」

 トウシはグっと腰をおろし、両手を握りしめて、

「リスクは承知。それでも、ここは、前に出るべきと判断した。そんだけ!」

「愚かな判断だ」

「言われんでも分かっとるよ。ワシはアホやない。どっちかといえば、頭ええ方なんや。せやから……全部、ちゃんとわかっとる!!」

 そう言って、トウシは飛んだ。
 足にちょっと力を込めただけで、グンっと体が上昇した。
 エルメスを纏っている今のトウシは、凄まじい身体能力を得ている。

 圧倒的な力。
 神にも匹敵しうる、強大なスペック!

 拳を振るうごとに大気が鳴動し、
 跳躍をするたびに空間に亀裂が入る。

 アホでも理解できる、トウシの圧倒的な強さ。
 言葉はいらない。
 誰だって、一目で理解できる、絶対的な能力の格差。

 そんなトウシの風神のような様を見て、
 だから、岡葉たちは、目を丸くしていた。
 ポカンと口をあけて、ただ、トウシとジャミの闘いを見ていた。

 理解できる範囲にはない、高次戦闘。
 はやく、鋭く、大きく、
 ただ、目の前で、暴風のように繰り広げられる戦闘の渦。


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