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16話 狂った愛。


 16話 狂った愛。


 Gバグの中で、肉体を失い、『砕けた魂魄のみ』になったゴート。
 まだ、ギリギリのところで、かすかに残っていた意識は、
 ひたすらに、『リーンへ謝罪の言葉』だけを並べていた。


(ごめん……ごめんなさい……何もできなかった……結局、俺は、何もできず……また……諦めるだけだった……)


 漂い続けるだけの魂魄。
 意識だけの粒になったゴート。


(ごめん……リーン……守って……やれなくて……約束……守って、あげられ……)


 そんなゴートの意識に、


 ――まだ終わってない――


 リーンの魂魄が触れてきた。

 ――勝手に終わらせるな。あなたは、まだソコにいる――

 まだ消えていなかったリーンのカケラ。
 リーンの核は、まだ残っていた。



(……リーン……)

 ――ラムド……あなたは……まだ、終わっていない。
   こんなところで終わるような……そんな、ちっぽけな器じゃない――



 Gバグの中で、ゴートは、リーンの魂魄と直結する。
 ゴートは、Gバグに蝕(むしば)まれる中で、リーンの『想い』の中核に触れた。

 彼女の想いが、ダイレクトに伝わってくる。
 それは、狂気的なほど深い『温かさ』だった。
 果てなく高次の慈愛。


 ――ラムド……ワシは博愛主義者じゃない――


 リーンは、『自分そのもの』を、ゴートに伝えようとしてくる。
 ゴートに、『己の全部』を流し込もうとしている。


 ――幸福の意味なんて知らない。『平和』って概念の『本当の意味』も知らない。
   ただ、ワシは……
   ホっとするような優しさを、ふれたら温かくなる愛を、
   そういう、『ワシが大事だと思えるもの』を、
   『なくしたくないと思うもの』を守るために闘ってきた。
   ラムド、あなたはそれを守ると言ってくれた。嬉しかった。
   暗闇の中で見つけた、たった一つの光。
   ……たった一つ……けれど、とても大きな光――

 リーンの全てに包まれる。
 恐ろしいほど深い献身。
 狂気的な愛。

 ――あなたに全部を託す。あなたにだから、たくすんだ。
   その意味を、どうか忘れないで。
   これは……本当なら、誰にもわたしたくないもの。
   相手が『あなた以外』だったら、死んでも渡さないもの。
   ……だから……お願いだから、なくさないで――

 リーンの想いは、
 ゴートの中で、
 どんどん膨らんで、





 ――『ゴート』・ラムド・セノワール。
   大丈夫。あなたは、本物のヒーロー。
   あんなやつに、負けるはずがない、すべてを包み込む光――





 触れあった意識が混ざり合って、
 一つの命になっていく。
 重なり合った、命の鎖。
 とても、とても、あたたかい呪縛。
 呪われて、縛られて、
 そして、



 ――自由になるの。



(……ぁあ……)

 ――心が具現化していく。
 リーンの命が、
 ゴートの中で『完全なる領域』に昇華される。



(俺は……ヒーローじゃない……)



 ゴートの意識が、小さく震える。
 いつまでも消えてくれない『弱さ』の奥で、
 見失ってしまった自分の『全部』を求める。

 ――繋がっていく。


(ただの脆い命……すぐに諦めてしまう、意気地のない弱虫……けれど……)


 『だけれども』と、自分に『呪い』をうちこむ。
 破れない縛り。
 魂の誓い。
 アリア・ギアス。
 自分で自分に『命の掟』をつきつける。


(それでも……なくさなかったものは、確かにある!)


 ゴートの全てが沸騰する。
 壊れそうなほど、強く、熱く、膨れ上がっていく。

 芯の奥から膨れ上がる勇気を加速させる。
 リーンの『核』に触れたことで、
 ゴートは、『彼女の底しれない気高さ』を知った。

 ――ゴートは想う。

(リーン。俺は、永遠に、お前の魂に寄りそうと誓う。たとえ、どんな時であろうと、俺の魂魄は、必ず、お前と共に在(あ)る! お前が全部をくれたから、俺は、まだ、勇気を叫んでいられる。だから、俺も、お前に全部をくれてやる)

 ぶっこわれて、ゆがんで、くさって、
 けれど、だからこそ届いた想いを――




 ――受け取ってくれ、俺の、この、狂ったような愛を――





 混ざり合った魂魄が溶けあって、一つの形になる。
 繋がった、命のカケラ。





 ――『狂愛のアリア・ギアス(原初の愛)』、発動――

コメント

  • キャベツ太郎

    そんなことも無かったw

    0
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