『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……
10話 久しぶりの彼。
10話 久しぶりの彼。
(ぁ、ありえ……ねぇ……な、なんだ、あの虫……)
その中型犬サイズの羽サソリは、観察するように、『光を反射している真っ白な五つの目』でゴートを見ていたが、襲ってきたりはせず、数秒後、ゴートから距離を取るように、ゴートから視線は外さないまま、どこかへ飛んでいった。
(……ぉ、おい、これ……もしかして、ヤバい事になったんじゃ……)
血の気がひく。
心が、はやる。
だから、
「リーン……」
そこからゴートは、青い顔になって、
必死に、リーンの行方と出口を探しまわった。
走り回った先で見つけた大きな階段を駆け上がり、
長い廊下をまっすぐに進んだところで、
ゴートは、巨大な広間に出た。
そこで、ゴートは、
『ヤツ』から声をかけられる。
「やあ、センくん。そんなに慌てて、いったい、どうしたのかな?」
「……蝉……原……」
巨大な広間の最奥で、玉座に腰かけて、優雅に足を組んでいる男が一人。
蝉原勇吾。
センエースの同郷で幼馴染(中学が同じ)。
この世に二人しか存在しない、『ゴートを折った男』の一人。
一つの世界を崩壊させた宇宙一のヤクザ。
そんなヤクザの周囲には、
先ほどの『異常な存在値を持つ虫』が、
――山ほどいた。
10や20じゃない。
存在値『1000億』を超えているバケモノが、
全部で『10000体』!
「もしかして、この子を探していたのかな?」
言いながら、蝉原は、足下に転がっているリーンの顔を踏みつける。
ミシリと圧力がかかる音。
呻き声をあげるリーン。
その光景を見て、グワァっと熱くなったゴートは、
「蝉原……言いたい事は色々あるが、とりあえず、まずはリーンを離せ」
「君の命令を聞かなきゃいけない理由がなさすぎる」
「では、言いかえよう。殺されたくなかったら、リーンを離せ」
「君じゃ俺は殺せない」
「……これを見ても、同じ事が言えるか?」
言ってから、ゴートは全身にオーラを充満させる。
一気に膨れ上がる生命の炎。
内包されている『ケタ違いの輝き』を、惜しみなく御披露目(おひろめ)。
『EXレベル9兆』を超えている強大なオーラ。
ステータスカンストの絶大な力!
――しかし、蝉原は、悠然としたまま、
「ソレを見ても、同じ事が……言えるんだなぁ、これが」
言いながら、蝉原は、指をパチンと鳴らした。
すると、それまでは蝉原の周囲でジっとしていた虫――『バグ』たちが、
ブブブブッと、音をたてて、いっせいに飛び上がり、
ゴートを、その真っ白な五つの目で睨みつける。
「もしかして、そいつらが……お前に、『あのふざけた力(故郷を狂わした力)』をあたえた『バグ』ってやつか?」
「んー、違うね。こいつらは『究極完全態グレート・バグ』。俺に力を与えたバグのスーパーサ〇ヤ人3バージョンって感じだよ」
「……」
「こいつらが『俺に力を与えている』って点に関しては、その通り。こいつらは、なぜか、俺に対して、無尽蔵に力を与えてくれる。……ああ、そうそう。これは、最初に言っておかないと」
そこで、蝉原は、コホンとセキをして、
「あのね、センくん。――実のところ、俺は、今の自分の状況を、あまり理解していないんだ」
「あ? それは……どういう意味だ?」
「あの日、バグの暴走で『全てが消えた』と理解できた直後、気付けば、俺はここにいた。そして、いつか、こうして『君がここにくる』ということを、なぜか『理解』していて……その時をジっと待って……で、今に至る。それだけなんだよ。だから、俺に質問とかはしないでね。意味ないから。何を聞かれても、知らないから答えようがない。こいつら『グレート・バグ』に関しても、『超絶強くなった』って情報以外は持ち合わせていない」
「……それが事実だと仮定して」
「完全な事実だけど……まあいいや。『信じる・信じない』なんて、いつだって、個々の自由。で? 俺の話が事実だと仮定して、なにかな?」
「お前の目的はなんだ?」
「君を殺す事だよ、センくん」
「……なんでだ? 『俺を殺す事』を目的にしている『理由』はなんだ? 『俺』が『お前を恨む理由』は山ほどあるが、『お前』が『俺を恨む理由』はないはずだ」
「そうだねぇ。確かにその通りだ」
「じゃあ、なんで……」
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