『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

16話 輝く道。


 16話 輝く道。

(この俺が、負けるわけねぇ……負けていいわけがねぇ……つぅか、てめぇ、俺を誰だと思っていやがる……俺は……世界最強の勇者ハルス・レイアード・セファイルメトスだぞ……てめぇごときに負ける訳がない風雅な刃……勝ち続ける事しか許されていない狂気の暴風……)

 血の流れが『内・下』から『外・上』へと変化したのが『原因』かどうか分からないが、

(……ン……?)

 今まで見えていなかったルートが見えてくる。
 線になって、高速で繋がっていく。
 一致していく。

(これは……)

 『この勝負は長引く』と思った。
 負けるにしても、かなり時間をかけた末の敗北だろうと思っていた。
 しかし、違った。

 道はあった。
 これは光。
 まばゆい閃光。

 複雑で、ねじ曲がっていて、
 答えに辿り着くまでに、おそろしく時間を必要とする困難な道――だが、

(……見える……見えてきた……繋がる……一致する……一手が光る……導かれる)

 ハルスは、



「……見えた……」



 ボソっとそう言ってから、
 パチリと、
 ――『正解』の一手を打った。
 たった一つしかなかった、勝利の一手。

 その姿を見た177番は、嘆息(たんそく)して、



「……本当に、驚いたねぇ……」



 ボソっとそうつぶやいてから、
 177番は、ソっと目を閉じた。

 そして、整えるように、心の中で、ゆっくりと30秒を数える。
 一定のリズムで、
 おだやかに、
 ゆるやかに、
 静かな時間が流れていき、
 ついには、





「30秒経過。170番((ハルス))の優勝! コングラッチュレーション!」





 司会の称賛の声など、今のハルスの耳には一ミリも届いてはいなかった。
 ハルスは、脳を使いきったような、憔悴した顔で、
 しかし、ギリっと強く奥歯をかみしめながら、

「……俺の……勝ちだ」

 絞り出したような声でそう言った。
 そんなハルスに、177番は、

「そうだね、そっちの勝ちで、俺の負けだ。悔しいよ」

 ゆっくりと頷いて、
 177番は言う。



「くく……ほんとうに、見事だ」

 薄く笑ってから、まっすぐな目で、

「その才覚は、嫉妬に値する」



 そう言って、ゆっくりと席を立つ。
 そして、177番は、ハルスの目を見ながら、

「ちなみに、君、さっき、『見えた』とか何とか言っていたけど、あれはどういう意味かな? いったい、なにが、どのくらい見えたのかな? 参考までに聞かせてもらえるかな」

「……俺は、お前がつくった問題を……詰将棋ってヤツを解かされただけだ」

 ハルスの言葉を聞いて、
 177番は、ニっと微笑んで、またゆっくりと頷いて言う。


「……いやぁ、ほんと、すごいねぇ……感心、感心」


 ハルスは、ギリっと奥歯をかみしめながら、

「……お前、何者だ?」

「何者? さあ、何者だったかな……敗北のショックで忘れたよ。確か、そこそこの存在だったと思うんだけど……でも、まあ、しょせんは君に負ける程度のちっぽけな人間さ」

 そう言って、177番はその場から去っていった。

 ハルスは、見えなくなるまで、ずっと、177番((運命を調律する神威の桜華))の背中を睨みつけていた。



 ★


「お疲れさまでございました」

 戻ると、深く頭を下げているアダムが出迎えた。
 アダムはスっと顔をあげると、

「しかし、あんなカスに負けてやる必要はなかったかと存じますが。もちろん、主上様には深い御考えがあったのでしょうが、しかし、主上様が負ける姿というのは、どのような理由があれ、見たくはないものです」

「ふっ」

 そこで、この上なく尊い命の王『究極超神センエース』は、ニヒルに微笑む。
 そんな『含みのあるセンの優美な横顔』を一心にみつめながら、
 アダムは、

「ちなみに、どのような理由から、あのカスに白星を譲られたのでしょうか? 参考までにお聞かせいただけませんでしょうか? ありとあらゆるすべての意義を知り、主上様のご意思に届くための一助としたく存じます」


「アダム、理解しておけ。俺がやる事には、とにもかくにも、深ぁい意味がある。あまりにも意味がありすぎて、たまに、『あれ? 意味ないんじゃないの?』と思ってしまうこともあるかもしれないが、しかし、それは勘違いだ。俺のやる事には、絶対的に意味がある」


「『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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コメント

  • キャベツ太郎

    ただ負けてしまっただけということ。分かります。

    0
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