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36話 学内ランキング2位『エリク』の悲鳴。


 36話 学内ランキング2位『エリク』の悲鳴。

「逃げ足だ……人間の足音。おそらく、先に行った連中が引き返している音……かなり慌てている。めちゃくちゃ必死で逃げてやがる……」

 渋い顔でそう言ったドコス。
 そこで、エーパが、

「ねえ、お嬢……今日、参加している人の中には……確か、エリクさんもいたわよね」

 その問いに、カルシィが答える。

「ああ」

 カルシィは、渋い顔になって、

「ドコス……『エリク』も、その逃走グループに入っているか?」

 エリクは、学内順位2位の実力者。
 戦闘特化でおそろしく強い。
 汎用型の魔法使いタイプで、広域殲滅も一点集中も得意という万能魔法使い。
 存在値30級のモンスターが群れで現れても瞬殺できる超人。

「……ああ。あいつの足音は特徴的だから間違えない。あいつも逃げてきている。というか、近い」


 と、そこで、森の向こうから、


「ひぃいい!」


 真っ青な顔で悲鳴をあげながら、こちらまで駆け抜けてくる青年の姿が見えた。
 青いローブを纏っている高身長の男。

 そんな彼の姿を目視したカルシィは、

「エリク! どうした? 何があった!」

「に、逃げろ、逃げろ! 死ぬぞぉ!」

「なにがあったかと聞いている!」

「古龍が出やがった! 勝てるか、あんなもん!」

 そう叫び、ダダダァっと走り去っていくエリク。

「カルシィ、逃げるぞ!」
「お嬢! 逃げるわよ!」

 カルシィの命が最優先の二人が、カルシィにそう叫んだ。

「そうだな。流石に古龍は相手にできない。すぐに逃げ――」

 逃走する決断を下した、ちょうと、その時、





「――他は逃がしても、貴様は逃がさない――」





 上から、気品がある龍が降ってきて、そう言った。
 サイズ的には『二階建ての一軒家くらい』で、超巨大サイズという程でもないが、その気品とオーラは半端なかった。

 カルシィは、一度、フーマーの海域を守護している『エンシェント・リバイアサン』をその目で見た事があるが、目の前の古龍からは、それ以上の圧力を感じた。

 古龍は、カルシィを睨みつけ、

「――そこの娘……貴様、『東方』の『深き血』を継いでいるな――」

「……」

「――目覚めの食事に相応しい。貴様を殺し、その魂魄を奪わせてもらう――」

 ヨダレを垂らしながらそう言うと、全身の魔力を高めた。

 強大な魔力にあてられて、
 カルシィは、

「っ! ……剣気ランク5!!」

 反射的に、戦闘態勢をとった。
 全身のオーラを膨らませ、必死になって、古龍の覇気に耐える。

「――人の身で、龍種のエンシェントである我に勝てると思うか――」

 古龍はそう言うと、翼を広げて、フワっと飛びあがり、
 グンっと体重を乗せ、カルシィめがけて急降下してきた。
 まるで、ライダーキック。
 左足にオーラを込めて空から突撃。

 凄まじい速度と圧力。
 ギリギリのところで回避するカルシィ。
 だが、風圧で体勢を崩され、そこに、長いシッポが、ムチのように、

「がぁあ!」

 バシィンっとカルシィの全身を打ちつける。

 大量の血を吐くカルシィ。
 鮮血が舞って、骨が砕ける。

「カルシィ!」

 ドコスが叫び、その後ろで、エーパが真っ青な顔で気絶寸前の顔をしている。

 一瞬、頭が真っ白になりかけた二人。
 すぐに自分を取り戻し、カルシィの救出に向かおうとするが、
 それを、

「くるなぁ!」

 カルシィは大声で制する。
 カルシィの命令でピタっと立ち止まる二人。

 そんな二人に、カルシィは、

「私の獲物だ……邪魔するな……」

 フラつきながら、立ち上がって、

「お前たち、全員、この場から消えろ。こいつを狩るのは私の特権。誰にも譲らない」

 スゥっと息を吸って、

「何をしている! さっさと消えろ!」



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