『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……

祝百万部

20話 究極のセーブデータ。


 20話 究極のセーブデータ。


「俺がスマホでやっていた携帯ドラゴンのデータを! お前に転送するとかぁ!」

 そう叫んだ直後、

 携帯ドラゴンがクルっと背中を向けた。
 その背中から、ペカーっと光が出てくる。
 その光は、エアウィンドウとなり、そこに文字が表示された。
 内容は、


『可能です』


「ま、マジか! なら――」

 そこで、エアウィンドウの文字が切り替わり、

『そのコマンドを実行するために、全てを捧げられますか?』


「……すべてを……ささげ……どういう……」


『センエースのセーブデータは強大です。あれほどのデータの転送には莫大な魂魄が必要となります。最低でも、あなたの魂魄全てが必要です』

「……全てを捧げるってなったら、その時点で死ぬから意味がな――」

『全てを捧げるという意志を示すのであれば、携帯ドラゴンに、迎撃プロラグムをインストールさせていただきます。あなたとの接続が切れても、携帯ドラゴンは十五分ほど稼働できます』

「俺が死んでも……お前がオートであいつらを撃退してくれるようになるって……ことか……」

 ピーツは考える。
 必死になって考える。

「……」

 三分間が、おそろしい速度で過ぎていく。
 脂汗が浮かんでは流れていく。

 『自分とは関係のない命』と『色々なもの』を天秤にかけた。
 『今さっき、はじめて顔を見た赤子の命』と『たくさんのもの』を天秤にかけた。


「バカバカしい。なんで、知らんガキのために、ここまで悩む必要がある。しったことか。ガキなら偉いのか。どこにでもいるガキ。赤ん坊だからなんだってんだ。甘えんな。泣くことしかできない無能が。泣きたいのはこっちだ。言っておくが、テメェが将来犯罪者になる可能性だってあるんだぞ。1000人を殺す殺人鬼になる可能性。功利主義どうこう関係なく、そんなヤツは死ぬべきだ。つまり、赤子だったら偉いわけじゃねぇ。だから、つまり、だからぁあ……――」

 悩みが加速する。
 天秤にかけた『自分の命』がどんどん重くなる。

「残り、一分」

 亜サイゾーの言葉が耳をつく。
 おそろしくはやい、二分の経過。
 そんな、
 異常に進む速度がはやい時間の中で、
 ピーツは、



「不良になる可能性もある……なんて、そんな領域でモノを話すなら……逆に、このガキが『救いのヒーロー』になる可能性だって、あるだろ……」



 ボソボソと、

「もし、このガキが、将来、1万人を救う存在になったらどうする……その責任を……俺はとれるのか……って、は、はは、なんだ、それ……責任なんかあるか。なんだ、この考え方……意味不明……あれ? もしかして、俺は……死にたいのか? 違う……そうじゃない……くだらない……なんで悩んでいる……それは……イヤだから……なにが……わからねぇ……いや、ほんとは分かっている……」

 悩みは、どんどん膨らんで、

「目の前の命をないがしろにしたら……俺が俺でなくなる気がしたから……あ? なんだ、それ……意味不明……自分の命はないがしろにしていいのかよ……そうじゃない。この思考も結局は言い訳……意味のない……」

「残り30秒」

「結局のところ、ただの意地。無意味で無価値……いや、それも違う。少なくとも俺は、『目の前に困っている人がいるから助ける』とか、そういう高尚な人間じゃなくて……いや、それも違う。ただ、俺は……誰からも愛されていない、ただのボッチで……」

 と、そこで、
 ようやく、ピーツは、ハっと顔をあげる。
 そして、モニターを見る。
 必死になって、いなくなった我が子を探している母親の姿を見て、

「ああ、そうだ。……ソレだ。それが答えだ」

 解答にたどり着く。

「いなくなったら必死になって探す母親が、このガキにはいる……俺にはいない……」

 なんだか、肩の荷がおりたように、
 ニィっと、自嘲して、



「……充分な理由だ」


「『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

  • キャベツ太郎

    前言ってなかったかもだけど、私がこの作品を好いてるのは葛藤を文字として表すからですw

    0
コメントを書く