センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

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6話 龍試。


 6話 龍試。

 ピーツは、数少ない『記念受験生』だった。
 自分のスペックを十二分に理解していた彼は、『この人生では何者にもなれない』とハッキリ理解できていた。
 何も成さず、ただ生きて、ただ死ぬだけの空虚な人生。
 そうなることはわかっていた。
 だから、彼は、『大学校に落ちた』という看板を欲した。

 『何者でもない』よりは『大学校に落ちた者』の方がましだと思った。
 意味不明……とも言い切れない、感情の錯綜(さくそう)。

 だから、本人も、まさか受かるなんて思っていなかった。
 つまりは、本当に運だけで受かってしまった。

 ただ、周りは盛大に喜んでくれたため、辞退する訳にもいかなかった。
 『せっかく入学できたんだから』との想いもあり、
 どうにか頑張ってみようとはしたものの、当然、まったくついていけず、
 結果、精神的に追い込まれて、自殺という選択肢を選んだ。

 試験の選択肢では運で正解しまくったのに、
 人生の選択肢はミスってしまったという、ちょっとした小話。


(1単位しか取れない基礎科目でもお手上げ……いやいや、これ……龍試なんてとれるワケねぇぞ……やべぇな……)

 ピーツは思う。

(……三年くらい基礎学習の詰め込みにあてて、残り五年で単位を回収するという作戦を取れば、どうにか学士号は取れなくもないだろうが……)

 根性の塊センエースがその気になれば、
 『大学校で学位を取る』くらいの事は、そこまで難しい事ではない。

 フーマー大学校の難易度は高いが、『学士号』までなら、根性さえ据わっていれば、誰でも取れる(フーマー大学校にちゃんと入学できるだけの力がある者なら、誰でも)。

 ただ、

(だが、別に、俺の目標は学位を取ることじゃねぇんだよなぁ……)

 ピーツの目標は、悪の宰相ラムド・セノワールの討伐。
 そのために、冒険者試験を突破する必要があるだけで、
 年単位をかけるのであれば、わざわざ龍試を経る必要などなく、
 単純に、来年か再来年に冒険者試験を受ければいいだけの話なのだ。



 ★


 10単位が取れる実技――通称『龍試』。
 龍試には、『講義+テストのパターン』と『テスト一本勝負のパターン』の二つがある。

 龍試は『宝くじ感覚』で受けるやつを減らすため、
 『成績が極めて悪い者は退学処分にする』という処置がとられる。

 そのため、龍試は、学内ランキング上位の者しか受けない。
 ガチガチのエリート志向の者だけが受ける最高峰の科目。
 龍試の『合格数』が、大学校内では最大級のステータスになる。

 ちなみに、学内ランキングは、学生の総合スペック+テストでの評価で決まる。
 大学校の学生は、全部で2000人~2500人くらい。



 現在のピーツの順位は、2000人以上が在籍するフーマー大学校内で、ぶっちぎり最下位!!。



 完全に周りの人間からシカトされているレベル。
 エリート志向が蔓延しているフーマー大学校では、
 学内ランキングが全てみたいな所がある。


 ちなみに、勇者は歴代ぶっちぎりの一位を獲得していた。
 本来なら、『流石の大天才』ともてはやされるところだが、
 あまりにも態度が悪すぎたため、
 当時は、最下位のピーツよりもシカト&敬遠されていた。


 ちなみに、各学年の人数は↓な感じ。

 1年生は300人、
 2年生は295人
 5年生は270人、
 8年生は250人、
 9年生は120人、
 12年生は50人、
 15年生は10人くらい。



 ★



 3限が終了したところで、食堂に向かうピーツ。
 定食を購入し、なんとかあいている場所を見つけて、腰を下ろすと、

 そこで、



「勇気があるな。それともただの無知?」



 二つ隣に座っている『気ぐらいの高そうな青年』から、そんな風に声をかけられた。
 そこで、ピーツは記憶を探ってみた。
 そして気付く。

 ピーツが腰かけたココは、学内ランキング上位者限定のテーブルだった。
 別に、学校内のルールでそう決まっているというワケではない。
 どの世界にも存在している、暗黙の了解。
 だから、ピーツは、

(おっとっと……俺、めんどうな事をしちゃったねぇ……)

 と、心の中で焦った。
 空気が読める『閃壱番』は、第一アルファだと、ちゃんと、『この手の面倒』を綺麗に回避してきた。


「その顔、ここがどういう席か思い出したようだな? どうする? 居座るか? それとも、退散するか?」


「……もちろん、退散します。上位カーストに対する反骨精神とかは持ち合わせていないので」

「賢明だ。ここに座っている時点で、賢くはないが」

 気位が高そうな青年は、ジットリとした重たい目で、ピーツを睨み、

「……『分』と言うのは、キチンとわきまえないといけない」

 言われて、ピーツは、

「……ははっ、ですよねぇ」

 と、場を流すような笑い声をあげてから、
 定食の乗ったトレーを両手に立ち去ろうとするが、

(……ほかは、あいてねぇ……)

 既に、低成績者用の席はうまっていた。
 立ち往生していると、
 周囲から、クスクスという笑い声が聞こえてきた。


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