センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
38話 エグゾギアの一閃。
38話 エグゾギアの一閃。
――闘いが始まる直前、
「ん、ちょっと待て」
意気揚々と飛びだそうとしたゼンに、フッキが声をかけた。
「な、なんだよ」
水をかけられて眉をひそめるゼンに、
フッキは、低いトーンの声で、
「そのエグゾギア……もしかして、無改造か?」
「無改造じゃねぇよ。ちゃんとよく見ろ。改造値『0.2%』になっているだろう。ちょっとだけ改造して、使える時間を17秒から18秒にのばしたんだ。えっへん」
「……く、クソすぎる……」
フッキはそうつぶやくと、
右手を、自分の胸に当てた。
そして、ブツブツと何かをつぶやくと、その右手に、小さな鉱石が出現した。
神々しいオーラを放つその鉱石――『フッキ鉱』を、
「これを使え」
ゼンに投げ渡す。
「稼働時間の上昇に全て注ぎ込めば、30分は使えるようになるはずだ」
「……ぇ、マジで……てか、なんでくれんの?」
「今のままでは、クソすぎてテストにもならないからな」
「……なるほど……想像していたよりも『ずっと高い場所』から見下ろされているって訳か。ここまでくると、もう、ヘコむ気力すら沸かねぇ」
溜息を一つはさんでから、
「介護されなきゃ、まともに闘う事すらできねぇのが現状か……情けねぇ話じゃねぇか」
『今の自分』をグっと飲み込んで、ゼンは、アスラ・エグゾギアにフッキ鉱をブチこんでいく。
以前にちょっとだけ改造経験があるので、さほど迷うことなく、ゼンは、フッキ鉱をアスラ・エグゾギアに組み込む。
そして、稼働時間を目一杯上昇させた。
一瞬、他のステータスにも振ろうかと考えたが、与えられたフッキ鉱は、既に手が加えられていて、稼働時間の上昇にしか使えなかった。
――ほんの数秒で終わる改造。
結果を目の当たりにして、ゼン歓喜する。
(おお、すげぇ。マジで、30分くらい動けるようになった)
『お情けで与えられた力』でしかないので、おおっぴらに喜ぶことはできないが、
『爆発的に上昇した継戦能力』に対する興奮をゼロに抑える事はできない。
「最大の弱点、ついに、克服っ」
ボソっとそう言ったゼンに、
フッキが、
「それでは、はじめるぞ」
軽く肩をまわしながら、そう言った。
その瞬間、フッキの視線の圧力が、グンっと増した気がした。
にらみつけられて、ゼンの体がわずかに委縮する。
(超恐ぇし、微塵も勝てる気がしねぇ……けど……)
開幕してすぐ、ゼンは、エグゾギア用の亜空間倉庫から、エグゾギア用の大剣を取り出して装備して構える。
「己の弱さを理解できる程度には強くなった『今の俺』がエグゾギアを使ったらどのくらい闘えるのか、ちょうど、知りたくてたまらなかったところなんだ。……実験相手になってくれて感謝する」
そう言いながら、ゼンは、
「一閃!!」
数え切れないほど振ってきたグリムアーツを使用する。
素の状態の時とはうってかわり、エグゾギアの『バ火力』で振った一閃は、
驚くべき速度の『飛ぶ斬撃』となって、フッキを襲う。
攻撃力100億オーバーが繰り出すグリムアーツ。
その威力は文字通りケタ違い!
空間を切り裂く、凶悪な一撃!!
――なのだけれど、
「……ぉ、おそい……」
フッキは、『運動オンチの女子が投げたドッジボール』でも避けるような気楽さで、ゼンの一閃を、ヒョイと軽く回避して、
「……酷い……な……」
ボソっとそう呟きつつ、溜息をついた。
心の底から呆れている声。
(……ほ、本当にコレが、神になるのか?)
『主の軌跡』の一部を見ているため、
『ゼン』が『若き日のセンエース』である事を疑う気はないのだが、
(ぁ、あまりにも……酷過ぎる……)
比べる対象がセンエースであるため、
どうしても、『ゼン』のことを『クソすぎる』と思ってしまう。
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