センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)
52話 神の要求
52話 神の要求
「お前が、この先、『ガラクタ以外の何かになれるかどうか』はしらん。だが、今ここで諦めれば、お前は間違いなくガラクタで終わる。それだけは断言できる」
神に、ガラクタと認識されたままデリートされる。
つまり、永遠のガラクタとなる。
「だが、高みを目指すというのなら、お前という、今は『しょうもないだけのガラクタ』が、いつか、『それ以外のナニモノか』に変われる可能性はゼロじゃなくなる。それも事実だ」
これは『本気』のメッセージ。
だから、一つ一つの言の葉が、
『フッキの心』の奥へと届く。
――そこで、センは、
「とはいえ、あくまでもゼロじゃないだけで、限りなくゼロだとは思うが。……なぜ、そう思うか、その根拠も欲しいだろうから、特別に、少しだけ」
フッキの頭部に手をあてて、
「俺が辿ってきた道を見せよう」
言いながら、目を閉じた。
そして、フッキの脳内に、センの記憶を流していく。
積み重ねてきた道。
一歩ずつ、一歩ずつ、
気が遠くなるほどに積んできた研鑽の嵐。
「ぁ……ぁ……」
『地獄』なんて評価は生ぬるい。
どんな品詞でも装飾しきれない、
『膨大な基礎』の上に築かれた、
天高くそびえ立つ巨大な神の城。
センの軌跡、『その一部』を目の当たりにして、
フッキは、
「あぁ……ぁあ……」
身を震わした。
涙を流すことができたならば、きっと、人目もはばからずに泣いていただろう。
神は、想像を絶する絶望を超えて、
今、ここに立っていた。
「どうだ? イヤになるだろ? カラッポが高みに至るためには、最低でも、それぐらいはしんどい想いをする必要がある。それだけの道程を経て、いまだ俺はナニモノでもない。真理はカケラも掴めちゃいない。最強を目指すってのは、そういう事だ」
――神の言葉に包まれて、ついに、フッキは泣いた。
構造上、涙は出ないが、確かに泣いた。
衝動に揺さぶられて、言葉が出てこなかった。
湧き上がってくる『何か』を抱えるだけで精いっぱい。
――そんなフッキに、センは続けて言う。
「くだらねぇ。しょうもねぇ。無意味で無価値で、ただ虚しい。最強ってのは、そういうカラッポの延長でしかない。それを理解した上で……もし、まだ、『自分は最強だ』と『無謀なバカ』を叫び続ける気概が残っているのなら、お前に可能性をくれてやる」
「かのうせい……ま、まさか……」
センの発言を受けて、フッキの脳裏に、都合のいい未来が浮かんだ。
あまりにも虫のいい夢。
そんな訳がないとは想いつつも、口に出して確認せずにはいられない。
「まさか……俺なんか、を……あなたの……剣に……していただけると……?」
「この先、俺が望む領域まで、もし辿りつけたなら……考えてやらないでもない」
「っっ!」
ぶっこわれそうなほどの衝動が走った。
曇天が晴れていく。
心の形が分かった気がした。
「もちろん、俺が望む世界まで辿りつけなければ、迷わずスクラップにする。ちなみに言っておくが、俺は妥協を許さない」
神の発言を、決して聞き逃すまいと、フッキは意識を集中させる。
「俺の要求水準は狂っている。正直、お前が辿りつけるとは思っていない。お前は、ほぼ確実に廃棄されるだろう」
神の発言に嘘などあろうはずもなく。
ゆえに、フッキは、素直に、自分の置かれた状況が『厳しいものである』と思った。
目の前の神が積み重ねてきた地獄に妥協はなかった。
センエースという神は、終わりない絶望を乗り越えて、今、ここに立っている。
その『圧倒的な強さ』には、想像を絶する裏打ちがあった。
わずかな弱さも許さない、飛びぬけて狂った精神力。
磨きあげてきた努力の結晶。
その果てなき鍛錬は、もはや狂気の沙汰。
最果てに辿り着いた神。
理想を体現する究極の英雄。
フッキは思う。
自分ごときが、これほどの神の剣になれるとは思えない。
神が言うように、自分は、いずれ、ただ廃棄され――
「……だが、もし、」
そこで、神はフッキの目をまっすぐに見据え、
「お前が、この先、果てなく努力を重ね、血反吐にまみれながら研鑽を積み、いつか、俺が満足する領域まで辿りつけたその時は――」
歪みも濁りもない、全てを射抜くような、強い視線で、神は言う。
「お前の全てを愛すと誓おう」
「……っっ」
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