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55話 さあ、みんなで悪いことをしよう

 55話






 そこから、五分ほどかけて、『定められたルールうんぬん』や『悪になれ』どうこうを含めた『神から賜った命』をしっかりと伝えてから、


「貴様らの役目は、世界の裏に根を張る事。かつ、この世界の支配層全域に、ゼノリカが巨悪であると認識させること。ルールを守りさえするのであれば、手段は問わない。好きにやれ」




 バロールは、そこで、一度言葉を切って、




「主より直接賜わった命……その重要性が理解できぬアホウはいないはず。言うまでもないが、死ぬ気で応えよ」




「「「「「「「ははぁーっ!!」」」」」」」






「最後に、こたびの任務で最も成果をだした者、最大三名に……」




 ピクっと、誰しもの耳が動いた。
 ドクンと心臓が高鳴る。


「ゼノリカの天上、九華十傑の第十席に、その名を連ねる栄誉を与える。心を尽くして奮励せよ。以上だ」










 ★




 バロールが退席してから、十人蒼天は、即座に、再度、資料へと目を通す。




 途中、アンドロメダが、


「地盤を固めるまでは協力すべきじゃ」


 続けて、アクエリアスが、


「賛成。乗る者は?」










「……私は個で動きます」


 UV1がすぐさま答え、


「私もそうするつもりです」


 長強もそう言った。










「ぬしらはそうであろうな……」


 そこで、アクエリアスは、他の沙良想衆に目を向ける。


 確認は必要なかった。
 まずは協力すべきだ、と認識が一致。




 そして、すぐさま、計画を話し合う。


「とりあえず、いくつかの物流をおさえておくか」
「魔カードの市場を独占するのが早いじゃろうな。魔力エネルギーの中心じゃから、一撃で世界全体を支配できる」
「そうじゃな。この世界は、社会全体のマナ依存度がかなり高めじゃから、基本的な医衣食住のすべてをコントロールできるじゃろう」
「同時進行で、ガーゴイル・サービス(この世界のセ○ム的な警備会社)もおさえておきたいところじゃのう。多角的に利用できそうじゃ」
「裏社会は全てひとまとめにして管理しやすくしておくか? 悪を演出するのなら必須じゃろう」
「確かに。……大きいのじゃと、火龍会に、イバラ組、グリゴール商会……」
「生の情報が欲しいところじゃな……この世界の人間を何人かさらうか」
「それは、忌避すべき悪に該当するのでは?」
「さらって奴隷にするというのならともかく、事情聴取に協力させるだけならば問題あるまい」
「そうじゃな。支配系の魔法をかければ拷問の必要すらない。当然、相応の報酬もだそう」
「それならば、問題はないか」
「むしろ、相手にとっては僥倖だろうよ。宝くじに当たったようなものじゃ」
「悪を演出するのであれば、『百済』の力は必須じゃな」
「それがどれだけ美しき影であっても、理解できぬ者にとって、歪んだ闇と変わらぬ」
「UV1、配下の者を何人か借りるが、構わんな?」


「ご自由に。というより、私にそれを拒む権利はありませんゆえ」
「長強、ぬしのところの配下も何人か使わせてもらうぞい」
「……御好きに、UV1と同じで拒否権などありませんから」


 おざなりにそう答える長強の言葉を右から左へと流す。


 楽連に属する『停滞している連中(努力はしているが、才能の限界に達してしまい、ランクが変動しなくなった者たち)』の中には、長強以外の十人蒼天の『誰か』を、『自分の上司』としている者も少なくない。
 『上に行けそうな者にすりよって、そのおこぼれを貰おうとしている』などという、しょうもない理由ではない。
 十人蒼天は、誰もが優れたカリスマを持っている。
 ただ、カリスマにも方向性はある。
 『自分に合った王』につき、尽くそうとするのは、人としての単なる必然。
 楽連に属しているからといって、トップの長強を崇めなければいけない理由などはない。
 長強は、ただ楽連の中で『最も強い』というだけであり、かつ、有事の際には下に対する最上級の命令権を持つというだけ。









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