『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……
12話 生まれて初めての勝利
12話
五分後、
「はぁ……はぁ……」
センは立っていた。
目の前には、壁にもたれかかって気絶している気室。
「はは……なんだ、見た目だけかよ、お前……」
思いっきり振り回した拳が、たまたま顎に当たった――だけだが、素人のブン回しを避けられなかったというのも事実。
――センは、
「こっちが勝つってパターンだと、蝉原も俺を無視できねぇじゃん……ちゃんと、俺を叩き潰してくれよ、バカが……」
口の中の血をベっと吐き出しつつ、ボソっとそう言いながら、その場にへたりこんだ。
決まり手の拳が入る前に、センは気室から5発ほど殴られた。
掴まれて、壁にぶつけられて、膝もいれられて、頭突きも二発いれられた。
「痛ぇ……痛ぇ……アドレナリン切れた……はぁ……興奮状態って、あんまりもたないんだな……手ぇ、痛ぇ……一回しか殴ってないのに、こんな痛むの? ……ボクサーとか、拳、どうなってんだよ……あ、だからグルグルにバンテージとか巻くのか」
まだ興奮が完全に収まっていないようで、いつもより早口気味にブツブツ言いながら、
「あー、どうっすかなぁ……これって、もしかして、俺も少年院にいくパターンのやつ? いや、それは流石にねぇか? てか、死んでねぇよな」
センは、気室の様子を確かめる。
普通に肩が動いていた。
「まあ、そう簡単に死なんわな……」
ハハっと渇いた笑い声をあげると、切れた口角からジワっと血が溢れた。
「……ぁあ、痛ぇ……鉄くせぇ……これ、骨とか折れてんのかな……肋骨、すげぇ痛ぇんだけど……くそが、ったく……ああ、痛ぇ、痛ぇ! うぜぇ!」
センは、体の痛みを嘆きながらも、
(けど……なんだろう……)
深く息を吸うと、脳に直接届いたような気がした。
目の前が、いつもより、少しだけ明るいような気がする。
(……『こっち』の方が……まだ、『なにくそ』って思えるな……)
最初、センは一方的にボコられていた。
抵抗しないつもりだった。
逆らう気概を見せるだけのつもりだった。
けれど、
殴られて、掴まれて、頭突きされて、
『不利』だと認識したとたん、
『敗北』が脳裏をよぎった瞬間、
――グワっと全てが熱くなった――
心臓の鼓動が……驚くほどはやくなった。
勘違いではなく、気室の動きがスローモーションに見える一瞬があった。
だからという訳ではないけれど、カっとした体が、理性の制止をシカトして、自分で想像するよりも、少しだけ鋭く動いた。
殴ろうと思う前に、殴っていたんだ。
(ケンカ……初勝利……はっ……バカバカしい……)
心の中で吐き捨てる。
こんなもの、なんの意味もない。
人を殴って、倒して、だからなんだってんだ。
ここがリング上ならともかく、学校で同級生を一人殴り倒したって、得られるモノなんか何もない。
わかっている。
バカじゃない。
だから、わかっている――のだけれど、
(嬉しいとか、気持いいとか……そういう、安い感情じゃなくて……いや、結局、その安い感情なのかね……わかんねぇや……なんせ、はじめての感覚なんでね……)
心がジンとしている。
拳は痛い。
間違いなく痛い。
けれど――
(こんなしょうもない殴り合いじゃなくて……ちゃんと、しっかりとした『戦闘』なら、喜びも悔しさも、もっと感じるのかね……)
くだらない痛みと、何が何だか分からないままの勝利。
それでも、確かに、心は熱くなった。
わけのわからないモノが込み上げてきて、妙に叫びたくなる。
理解不能。
けれど、この熱さは事実で、だから――
(……格闘技……か。はは……大学に行ったら、そっち系のサークルでも入ってみようかね……)
なんて事を考えていると、
「……へぇ。面白い状況だなぁ。ねぇ、ユズ、そう思わない?」
「べつにぃ」
『エグザ○ルに進化する直前』と表現するのがベストな『爽やかにギラっとした細マッチョの男』が、ハデ目なJCを連れて、そこにいた。
五分後、
「はぁ……はぁ……」
センは立っていた。
目の前には、壁にもたれかかって気絶している気室。
「はは……なんだ、見た目だけかよ、お前……」
思いっきり振り回した拳が、たまたま顎に当たった――だけだが、素人のブン回しを避けられなかったというのも事実。
――センは、
「こっちが勝つってパターンだと、蝉原も俺を無視できねぇじゃん……ちゃんと、俺を叩き潰してくれよ、バカが……」
口の中の血をベっと吐き出しつつ、ボソっとそう言いながら、その場にへたりこんだ。
決まり手の拳が入る前に、センは気室から5発ほど殴られた。
掴まれて、壁にぶつけられて、膝もいれられて、頭突きも二発いれられた。
「痛ぇ……痛ぇ……アドレナリン切れた……はぁ……興奮状態って、あんまりもたないんだな……手ぇ、痛ぇ……一回しか殴ってないのに、こんな痛むの? ……ボクサーとか、拳、どうなってんだよ……あ、だからグルグルにバンテージとか巻くのか」
まだ興奮が完全に収まっていないようで、いつもより早口気味にブツブツ言いながら、
「あー、どうっすかなぁ……これって、もしかして、俺も少年院にいくパターンのやつ? いや、それは流石にねぇか? てか、死んでねぇよな」
センは、気室の様子を確かめる。
普通に肩が動いていた。
「まあ、そう簡単に死なんわな……」
ハハっと渇いた笑い声をあげると、切れた口角からジワっと血が溢れた。
「……ぁあ、痛ぇ……鉄くせぇ……これ、骨とか折れてんのかな……肋骨、すげぇ痛ぇんだけど……くそが、ったく……ああ、痛ぇ、痛ぇ! うぜぇ!」
センは、体の痛みを嘆きながらも、
(けど……なんだろう……)
深く息を吸うと、脳に直接届いたような気がした。
目の前が、いつもより、少しだけ明るいような気がする。
(……『こっち』の方が……まだ、『なにくそ』って思えるな……)
最初、センは一方的にボコられていた。
抵抗しないつもりだった。
逆らう気概を見せるだけのつもりだった。
けれど、
殴られて、掴まれて、頭突きされて、
『不利』だと認識したとたん、
『敗北』が脳裏をよぎった瞬間、
――グワっと全てが熱くなった――
心臓の鼓動が……驚くほどはやくなった。
勘違いではなく、気室の動きがスローモーションに見える一瞬があった。
だからという訳ではないけれど、カっとした体が、理性の制止をシカトして、自分で想像するよりも、少しだけ鋭く動いた。
殴ろうと思う前に、殴っていたんだ。
(ケンカ……初勝利……はっ……バカバカしい……)
心の中で吐き捨てる。
こんなもの、なんの意味もない。
人を殴って、倒して、だからなんだってんだ。
ここがリング上ならともかく、学校で同級生を一人殴り倒したって、得られるモノなんか何もない。
わかっている。
バカじゃない。
だから、わかっている――のだけれど、
(嬉しいとか、気持いいとか……そういう、安い感情じゃなくて……いや、結局、その安い感情なのかね……わかんねぇや……なんせ、はじめての感覚なんでね……)
心がジンとしている。
拳は痛い。
間違いなく痛い。
けれど――
(こんなしょうもない殴り合いじゃなくて……ちゃんと、しっかりとした『戦闘』なら、喜びも悔しさも、もっと感じるのかね……)
くだらない痛みと、何が何だか分からないままの勝利。
それでも、確かに、心は熱くなった。
わけのわからないモノが込み上げてきて、妙に叫びたくなる。
理解不能。
けれど、この熱さは事実で、だから――
(……格闘技……か。はは……大学に行ったら、そっち系のサークルでも入ってみようかね……)
なんて事を考えていると、
「……へぇ。面白い状況だなぁ。ねぇ、ユズ、そう思わない?」
「べつにぃ」
『エグザ○ルに進化する直前』と表現するのがベストな『爽やかにギラっとした細マッチョの男』が、ハデ目なJCを連れて、そこにいた。
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