センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

15話 初デレ



 第15話。


 アダムは、かつての世界で、63000年という永き時を闘い抜き、頂点に立った。




 当たり前の話だが、決して楽な道のりではなかった。




 吸収は確かにチートスキルだが、無敵の能力ではない。
 自分より強い者に出会った時点でアウト。


 アダムはもがいた。
 必死にもがいた。


 魔王が山ほどいるアルファという、弱者にとっては地獄のような世界で、最下級の魔物として生まれ、それでも、アダムは、頂きに上ったのだ。


 運もあった。
 幸運に助けられた場面は何度もある。
 それは事実。




 だが、それは、自分の力で引き寄せた幸運だ。




 アダムは、一度も神に祈った事はない。
 助けてくれと祈った事など一度もない。


 常に、どうすれば、目の前の困難を討ち砕けるか。
 それのみに腐心し、今日という『己の運命が決まる日』まで、自分の足で歩いてきた。


 ずっと、ずっと、ずっと、自分の力だけで闘ってきた。
 そして、頂点にたったのだ。


 何度も死を乗り越えた。
 積み重ねてきた。










 ――だから、その武は、センに届いたのだ――










 決して一蹴はされない。
 闘える。
 通用する。
 それだけの強さがアダムにはあった。


 無数のグリムアーツを組み合わせた音速のコンボを叩きこむ。
 決して反撃を受けない距離の奪い合い。


 ――AGI(敏捷性)は同じはずなのに、どうして、
      どうして、そうまでも、私を置き去りにした動きができるのですか――






 一度、『本当にコピーなのか?』と疑った。
 自分のステータスに、自分の能力を上乗せしたのではないか?






 疑いはすぐに晴れた。






 ――闘いの中で、見てしまったのだ。


 己が、もっと果てしない研鑽を積んだ果てに、
 目の前で魅せられている領域へと辿りつく姿。




 まだ、闘える。
 腕は一本も折れていない。


 心臓は動いている。


 眼球に異常は見当たらない。
 何も問題はない。


 闘える。
 ここから、三日三晩だって、やろうと思えばできなくはない。




 ――しかし――




(勝てない……何千年闘い続けても……私が、勝つ事はありえない。……これは、そんな、つまらない次元じゃない)


 15分経った。




 六万年よりも遥かに濃密な15分を経て、アダムは両膝をついた。




「はぁ……はぁ……」






 ただ、力なくうなだれて、顎から垂れていく汗だけを見つめていた。






「素晴らしいぞ、アダム。お前ほどの戦闘力を持つ者を、俺は、他に5柱しかしらない」


 柱。
 それは、神の数え方。


 アダムはつい、微笑んでしまった。


「私より……『強い』者は……どのくらいいるのですか?」


「さぁ、分からん。数えた事がないからなぁ」


「なるほど……数え切れないほど……ですか……はは……」


「あ、ちなみに、俺より強い神はいないから、安心しろ。戦闘力だけなら同等のヤツが二柱いるが、あれは、色々と例外だ。勘定に入れる必要はない」


「色々と例外な神すら、あなたは超越しているのですか……つまり、まぎれもない全世界の頂点が……ここにいるという事……はは……なんという僥倖……」


 アダムは顔をあげて、センを見つめる。


 その表情は、神であるセンですら、欲情するほど美しかった。


 凛とした、大きな瞳。
 頬を伝う汗。
 より輝きを増した髪が肌に張り付いて眼福。
 溺れてしまいそうなほどに薫る、極上のフェロモン。


 キュっと引き締まったパツンパツンのパーフェクトボディが畏怖に震えた。






 ――アダムは、覚悟を決める。






 腹をくくる。


 彼女は思う。
 もしかしたら、自分は壊れてしまうかもしれない。


 しかし、
 それでも!


「もし、よろしければ……わたくしめに、あなた様の高みを、見せていただけませんか?」


 闘いの中で、アダムは理解した。


 戦闘中にいくつか交わした会話、僅かな機微、諸々の所作、一手一手の匙加減、全てが、『コピーの魔法はハンデ』だと物語っていた。


 ただのハンデじゃない。






 『小さな虫を、潰してしまわぬように』
 それと同じくらい、丁寧に慎重に繊細に、神の手は、アダムを包み込んでいた。










 センはアダムのまっすぐな視線を受け止めて、ゆっくりと目を閉じた。







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