無能力者の少年は、最凶を破る最強へと成り上がる~魔王、勇者、古代龍? そんなもの、俺の前じゃあ珍しくもねぇ~

異端の雀

12話 「作戦会議」

「で、お前のせいで俺は死んだのか?」

 アインは、アルヴァスを正座させて問い詰める。
 敢えて周りに聞くことはせず、本人に聞くのだ。
 反省を促さねばならないからである。

「そうであるが……。
 仕方無かったのであるぞ?」

 もじもじとし、言い訳をしようとするアルヴァス。
 幼い容姿に惑わされそうになるが、精神力で耐える。
 
「言い訳って言いわけ?
 ゴホンッ、言い訳をしないでくれ」

 だじゃれのような物が聞こえた気がしたが、気のせいであろう。
 気のせいであって欲しい。
 不発してしまい、単純に恥ずかしいだけであるが。

「すまぬ……」

「俺を殺したんだぞ?
 今生きているのは、エリアーヌのお陰なんだろ?」

 真剣な眼差しで、アルヴァスに訴える。
 でなければ、笑ってしまう。
 自分の子供を怒っているようで、何だかやるせない気持ちになるから。
 
「次からは、手加減するのだ。
 それで良かろう?」

 アルヴァスはすっくと立ち、妥協策を持ちかける。
 かなり危険な妥協策を。

「仕方が無…………くねぇだろ!
 また死んだらどうするんだ!」

 どうやら、アルヴァスは微塵も分かっていないらしい。
 アインは、顔を真っ赤にして言う。
 また殺されるかと思うと、本気で怒りが沸いてしまうのだ。
 それと、恐怖が。

「分かったのである……」

 仕方がなさそうにとぼとぼと歩き、はぁと溜め息をついた。
 
「何でだろう。
 こんなに貞操の危機を感じたのは、生まれて初めてだ」

 アルヴァスは、テグスにも抱き付いていたのだろうか。
 もしかすると、子供に抱き付いてしまう呪いでも……。
 いや、単純に嬉しかったからだと思いたい。
 
「そうだ、村はどこにあるんだ?」

「はい、付いてきてください。
 直ぐそこです」

 エリアーヌが指す先には、木々が生い茂るばかり。
 しかし、そこにあると言う。

妖精フェアリー達よ、永遠エタニティ迷宮・ラビリンスを解いて」

 エリアーヌがそう言うと、周りに生えていた木々が霧のように消え去り、元の砂の大地に戻った。
 少し進んだ先には、集落のようなものが見えるように。

「一応、二重の安全対策をしてるんです。
 そして、あそこが村です」

「騙されてたなんて、微塵も気づかなかったぞ……。
 こんなに近くにあったなんて」

 アインは、感激した。
 カモフラージュが、大変上手いからだ。
 
「グワァッハッハ!
 我が提案したのだぞ?
 元々は、我が管理していたのだからな!」

 アルヴァスが自慢気に話す。

「まあいい、村に入ろう」

「話を聞けー!」

 アインは村には村に入ることしか考えていなかった。
 そのため、アルヴァスの話をスルーした。
 長くなりそうだし、自慢だろうから。

 村には、直ぐに着いた。
 近かったからである。

「うーん……。
 中々寂しい暮らしをしてるんだな」

 アインは、驚いた。
 畑を作り、家畜である馬と牛を飼い、特徴的なものは何一つないからである。
 それこそ、娯楽などない生活だ。

「我々は、毎日生きるので精一杯なのです。
 ですので、大したおもてなしは出来ませんが、ゆっくりして頂けたらと……」

 セルケイは辛そうに話した。
 見たところ、家の数も少ない。
 家とは、木で出来た掘っ建て小屋のようなものだ。

「その内、この村を改造しようか。
 このままだとあまりにも寂しいからな」

 アインが呟く。
 すると、セルケイは嬉しそうに

「ありがとうございます!」
 
 礼を言った。

「そうだ、色々あってうやむやになってしまったが、早急に死龍王カースドラゴン対策をしないといけないな」

 アインは、周りに話しかける。
 すると、アルヴァスやエリアーヌらは一斉にさささっとその場を退き、セルケイに話を譲った。
 セルケイは、

「え、私が言うんですか!?」

 と周りに抗議していた。 
 なんでなのかは、アインだけが知らない。
 
「すいませんでした!」

 セルケイは、謝罪の意を込めて頭を下げた。
 目をつむり、殴られることを覚悟して。
  
「取り敢えず、対策方法は固まりました!」

 エリアーヌは、アルヴァスの様子を伺う。
 セルケイと共に叱られるかもしれないからだ。

「おお、それは良かった。
 手間が省けたよ。
 で、どうやったんだ?」
 
「アイン様の、擬似死亡状態を利用しました……」

「何!?
 だがしかし……、今回はそうするのが最善か」

 アインは、悩んだ末にそう結論付けた。
 それを見たエリアーヌは、胸を撫で下ろした。 
 
「セルケイ、頭を上げてくれ。
 今回は許すが次はやめてくれよ?
 死にやすくなったりしたら、大変だからな」

 アインは、頭を下げるセルケイに声をかけ、冗談半分で笑いかける。
 それも、こうするしか無かったのだ。
 俺がセルケイ達でも、こうするだろう。 

「それで、分かったことは?」

「はい、死龍王は魂を複数に分けてむくろに移します。
 それによって、多くの魔物(骸)を操っているのです」

「なるほど」

 予想とは違ったようで、アインは一瞬驚いた。
 しかし、直ぐに理解したようだ。

「中々厄介だな。
 村には、どのくらいの鳥獣族ウィンデンがいるんだ?」

「およそ、二百名程です。
 生殖能力が低いため、少ないのです」

「十分だな。
 それを村の防衛戦力に当てよう。
 後、エリアーヌの配下達も村に残すんだろ?」

「はい、そのつもりでした」

「それで、大体三百人ほどか。
 村に死龍王カースドラゴンの兵士が来ても、迎撃可能だろう。
 死龍王カースドラゴンは、俺とアルヴァスが相手しに行く」

 それで、周りは納得した。
 一人、アルヴァスを覗いて。

「我は、隠れている分与体を探しに行く故、アイン一人で戦っていてくれ」

 そうだ!
 とエリアーヌは思い出す。
 その話をすっかり忘れていた。

「一人だと!?
 流石に辛いだろ……。
 え、俺だけで勝てるのか?」

「いや、勝ち負けではない。
 重要なのは、力を出しきる事であるぞ!」

 アルヴァスは、アインの前に立ち、ガッツポーズをとる。
 どうにかなるとは思えないが、仕方があるまい。

「分かった、何とかやってみるよ」

 アインは了承する。
 断る事は出来まい。
 本当に危なくなったら、一度戦線離脱を行えば良いのだから。

 すると、何かが空間把握に引っ掛かった。
 百メートル以内に反応があった。
 今まで気づけなかったのは、かなり痛手だ。

「誰だ!?」

 素早く反応があった方を振り向く。
 すると、傷だらけとなった二人の鳥獣族ウィンデンがいた。

「お前ら!
 こやつらは、私の部下です。
 偵察に行かせていたもので…………。
 何があったんだ!」

 セルケイは、二人に駆け寄った。
 すると、返事をしない。
 不思議に思って、アインが近付こうとすると、一人が反応した。

「危ない!
 セルケイ離れろ!」

 アインは敵意を感じ取った。
 それも、殺意混じりの敵意を。
 直ぐ様魔刀を造り、セルケイを突き飛ばす。

「なっ!?」

 セルケイを突き飛ばした所を、一人が攻撃した。
 爪で大きく抉るように、土を撒き散らす。
 そして、次の標的をアインに設定したようだ。

「ちっ、操られているのか?」

 よくよく見ると、二人とも目に光はなく、無理矢理に動いているような不自然さを感じる。
 人形のように、もてあそばれているのだろう。
 許せない。

「斬るぞ!」

 セルケイに一応言ってから、魔刀を引き抜いて一閃する。
 すると、刀から出た斬撃が彼に向かって飛んで行く。
 それは、二人の身体を貫通した。

――――チャキッ。
 
 刀を鞘に戻すと、上半身と下半身がずるりと落ち、二人とも崩れ落ちた。
 そして、魔刀を魔力に還す。

「ああ……」

 セルケイは、涙を流した。
 大事な仲間が無惨な姿に変わってしまったのだ。
 会ったこともないアインだったが、惜別の念が込み上げる。

「っそうだ、ルシオ!」

 ガリアが戻ってきていないかどうか確認しようとする。
 
《アイン様!》

(ルシオ!
 大丈夫だったか?)

 彼方あちらからも連絡をしようとしていたのか、直ぐにルシオから連絡が来た。

《はい。
 それより、使者の事ですが……》

 ルシオは、暗い雰囲気を醸し出す。
 その口調からは、不幸があったのだと予想がつく。

《何者かに操られていました。
 今は、配下に交戦させています》

(やはりいたか。
 では、直ぐにこっちに来れるか?)

《いや、どこか分からないので何とも……》

「エリアーヌ、外にルシオを迎えに行ってくれないか?
 俺の仲間なんだ」

「分かりました」

 エリアーヌは、先程の場所まで飛んでいき、消えた。
 すると、数秒で戻ってきた。
 ルシオを連れて。

(ルシオ、死龍王カースドラゴンの話は聞こえていたよな?)

《勿論です。
 私は、アイン様のサポートでしょうか?》

(いや、村に残れ。
 もしもの時、役に立つだろうからな)

《分かりました……》

 どうやら、一緒に行きたかったようである。
 残念そうに返事をした。

 そして、アインは事実確認をした上で、判断をした。

死龍王カースドラゴンの能力下に置かれた奴が出たってことは、もうこの近くに居るんだろう。
 だから、俺は一度村を出る。
 でないと、結界に阻害されて空間把握が効きずらいんだよ」
 
 周りは頷き、アインの意見に賛同した。

「では、エリアーヌの兵は入り口の周りを囲うようにして配置しろ。
 鳥獣族ウィンデンは、村を覆うように。
 それと、アルヴァスは直ぐに行ってくれ。
 いつまでも決着を付けれないからな」

「「分かりましたぞ!
 分かったのである!
 分かったのです!」」

 三人の声が、妙に耳に残る。
 これは、指揮官的な立場にいる自分に酔っているのだろうか。
 まあ、存分に酔えばいいが、仲間が増えて嬉しいのが本当の所。
 この戦いが終われば、良い感じに友好関係が築ければなー。
 なんて思うアインであった。

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