催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武

探り合って行動しよう



「王様も頑張ってるみたいだなー」

 従魔の一体を派遣して観ていた会議、それに関する俺の感想はこんな感じだ。

 ダンジョンに行かないのはどうせ行っても監視が付くからであり、何か特別な考えを有しているわけでは無い。

 しかも、あそこまで注意念入りに調査されているのに、少し本気を出さなければばいけない迷宮ダンジョンに行くなど愚の骨頂じゃないか。

 この国、夜も監視を付けてるんだぞ。
 クラスメイトが消音できるスキルを持っていなかったら独り言も呟けなかったわ。

 しかも、監視員は定期的にチェンジして俺に何かされていないかを確認しているらしいので、十八番おはこの催眠魔法も使用できない。

 ……本当、従魔で情報収集を行っていて良かったよ。

「それにしてもまあ、和弓女子が思いのほか役に立ったな」

 未だにベットの上に居る状態だが、ステータスを確認してみる……うん、しっかりスキルが取れている。

 面倒だったが、仕方なく彼女と弓の勝負を行ったときに縁を結んでおいた。
 その結果、俺は彼女とも視界を共有できるようになっているのだ。

 クラス最強のパーティーの一員なんだ、レアなスキルを視る機会もごまんとあるだろうと考えてのことである。

 先に言っておこう――【勇者】ってガチでチートなスキルばっかり手に入るよな!

  ◆   □  王の間  □   ◆

「えっと、私の実力……ですか?」

「そうですとも、イム様。貴方のそのお力、魔族の侵攻時に連携を取るために確認しておきたいのですが……ダメ、ですかな?」

「いいえ、構いませんよ。私は後ろで弓を射ることしかできませんので、皆さまには大変ご迷惑をお掛けすると思いますし……ぜひ、やらせてください」

 当然、このイベントも彼らにとってはすでに話し合っていたものである。

 受ければ俺の力の一片が分かるし、受けなければ何かを隠していることが分かる……どちらにせよ、彼らに損は無い。

 俺としても、彼らが俺の肉壁になってくれるかどうかを知りたいわけだし……ああ、互いにWinWinな関係を結べているよな。

「しかし国王様、私はあまり近接戦はできないのですが……いったい、どのような方法でご確認をなさるつもりで?」

「イム様にはある者と共に、迷宮へと潜ってもらいたいのです。我が国の迷宮は小迷宮ですので、イム様だけでも簡単に攻略することができます」

「それは……そうですね」

「なので、迷宮でどれだけイム様が戦えているのか、それを見させてもらおうと思っています。その迷宮はすでに地図が完成しておりますので比較的安全かと」

 地図ができているということは、どこに何があるかが把握できるということだ。
 面倒臭いマッピングをせずとも、楽に攻略できるわけだな。

「なるほど……」

「接近する魔物も、イム様の今のお力ならば掠り傷すら負わせられないようなダメージしか与えられませんので……そういった場合の対処法も含めて、私たちにお見せいただけないでしょうか?」

 結構アグレッシブに要求してくるな……。
 要するに、手の内すべてを晒せって言ってるようなものだよ。

 普通、そんなことを言われて──はい、そうですかなんて言えるわけないじゃないか。

「はい、そうですか……分かりました」

 まあ、そう答えるんだけどな。

  ◆   □  5階層  □   ◆

 ちなみにだが、元居た国が書いた報告書には、俺が弓を使うことと魔力操作ができることしか書かれていない。

 そもそも国側が気づいていないし、定期的に行われる鑑定スキルによる確認も、しっかりと偽装させている。

 ……つまりバレる理由が存在しないのだ。

 まあ、リュウハン君が定期的にいろんな所に『魅了』を振り撒いている影響もあり、俺が暗躍する手間が省けたということは……説明しなくてもいいか。

 あの国、その内リュウハン君の傀儡国家になるんじゃないか?
 王族は安全のために状態異常を無効化するアイテムを持っていたが、他の奴は持ってなかったし……。

「まっ、なるようになれだな」

 小迷宮『ハイランド』の地形情報は予め覚えておいたので、待ち伏せを行う。
 わざわざ背負っていた矢筒から一本抜き取り、遠くに見える壁から現れた魔物に放つ。

「──お見事です」

「そういう接待はしなくても構いませんよ。それより、こちらの世界の方から見て、私の弓の実力はどれくらいのものなのですか?」

 監視として付いてきた女性にそう訊く。
 ……色気? ハニートラップってヤツでもするつもりなのか?

 この人のステータス、たしかいろいろとヤバかった気がするので、まったく手を出す気は無いけど。

「そうですね……上の下、と言ったところでしょうか。元の世界では、弓を鍛錬されていたので?」

「貴女がそう言うのなら、きっと中の上が限界でしょうか。いいえ、元の世界では私はうだつが上がらないただの学生でしたよ。……そういえば、この世界では学生は珍しいのですか?」

「御謙遜せずとも、私はただ客観的な事実を述べただけですよ。この世界では、クリュンと呼ばれる文教都市にそういった施設が多いですね。賢者様が理事長を務める学園がありますので」

 まあ、こんな感じのやり取りがずっと行われているわけだ。
 彼女、実は監視用のアイテムが渡されており、こうした会話もあとで会議に出されると会議で話していた。

 なので俺もあまり深い質問はできず、こうして浅くても沢山の情報を集めようと工夫を凝らして会話を行う。

 魔物の方は本当に雑魚が多いので、弓を射ればすぐに対処できる。
 一度だけ、近くに魔物が生まれた為近接戦闘を行わなければならなかったが、手抜きの状態でもどうにかなる魔物だった。

 はてさて、この先はどうなることやら。


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