俺と異世界とチャットアプリ
スレ32 無双プレイはカッツアイ
ちなみにだが、別に墓場に閉じ込められたなんてこともないので、その気になれば直ぐにでもレッツパーティーと洒落込める。
ただ、パーティーをするよりも墓場の攻略がしたいんだ。
この墓場の底には、何かがある。
踏破されていない迷宮の底には、守護者と呼ばれる番人が住まう。
階層が深ければ深いほど、守護者は強い。
別に戦闘狂というわけでもないが、守護者はとても賢いらしいので……従魔になってくれるのでは? という悲しい思考もある。
いや、ダンジョンに出会いを求めるのは間違ってないだろう?
魔王にだって会える世界だ、きっと従魔でなくとも仲間になってくれるヤツがダンジョンには居るかもしれないな。
『ギャハハハハ! シニツクセー!!』
「……無理なのかなー」
『グギャ──!』
目の前にいる3m級の神官アンデッドへ、仕舞っておいた“虚無槍”を投げつける。
膨大な量の魔力を一瞬で注ぎ込まれ、神官アンデッドは悲鳴を上げて悶えた。
「さて、この杖は……浄化特化ねー。昔、この場所を浄化しに来たのか? まっ、無念を晴らすことはできないけど、踏破ぐらいは俺の方でやっておくさ」
神官アンデッドが落とした長杖を解析すると、『清浄特化』の効果が存在した。
リア充君の聖剣が有している『破邪特化』は強引に魔を滅する効果を持ち、この『清浄特化』には成仏しやすくする効果がある。
本来、『破邪特化』の方がアンデッドを消し去るだけなら効率的なのだが……きっと、信念があったんだろうな。
──よし、俺も少し頑張ってみよう、とそれを見て思ったんだ。
魔道具の一つ、使い切りだが一度だけ聖属性の魔力を使える指輪を使って、拾った杖に聖属性を付与する。
「杖技──『払浄魔倶』」
そして練り込んだ気を、同様に杖の中に押
し込む。
杖の中から溢れ出しそうな力を制御して、悶えて倒れ込んだ神官アンデッドへとスッと向ける。
「せめて、祈りを。願わくば、貴方が輪廻の中に還れますように」
暴れていた神官アンデッドは、杖のから放たれた眩い閃光によって動きを止める。
『……アァ、アリ、アリガ……トウ』
体から本来の神官の姿が抜けだし、お礼を言ってから上に飛んでいった。
……物凄くダンディだったが、そこは必要のない情報か。
デュラハンに使わなかったのは、彼を武人として剣のみで倒すためだ。
まあそのときは気を練丹し、『流星剣』を振るったのだが……浄化というか消滅させるならば、気だけで充分だと気づいていた。
しかし、今回の相手は元聖職者。
神が地球よりも幅を利かせるこの世界で、神を信仰する者へ親切なことをしておくのも得かな~と邪推してな。
手作りの魔道具を使って、強制的に浄化してみた。
……まあ、俺独りで浄化作業をするのは初めてだったんだけれど、上手くいって良かったよ。
◆ □ 攻略中 □ ◆
下へ下へと潜っていくのだが、段々と現れるアンデッドが強くなっていく。
さすがにデュラハンや神官アンデッドのようなものは一度限りなのだが、その複製体らしき劣化版のアンデッドが現れたのだ。
強くはないが、彼らが行わなかった連携を行って俺を追い詰める。
多対一の戦闘術を習っていなければ、もしかしたら負けていたかもしれないな。
「……そして現在、俺は最下層へとやってきたわけですよ」
うん、詳細は動画で観てくれ。
一層前の所なんて、今までに出てきたすべてのアンデッド(中ボス除く)が軍隊のように襲いかかってきたぞ。
こっちも負けじと対抗し、命辛々勝利を掴めたな。
「またしても、とても広い場所だ。何コレ、ボスもこのサイズのアンデッドなの? さすがに巨体相手は大変なんだよなー」
こういうとき、日本人は東京ドームいくつ分とかで例える。
それで言うと……あっ、普通に一個分だ。
とにかく、広いことが理解してもらえただろう。
「さて、階層主は……って、ん?」
反応は掴めた。
ダンジョンコアのある場所から、ゆっくりとこちらに歩を進めている。
強さも相当だと分かるほどに、巨大な魔力の反応が感じられた。
……しかし、この場所に合った大きさではないのだ。
大きさは俺よりも少し低く、二足歩行をしている。
うん、つまり人型なのだ。
武器を体のどこにも持たず、武芸者特有の歩き方をしている。
たぶん、魔法で収納しているんだろうな。
魔法を使ってやっていることだからだろうか、空間が歪んでいることが魔力探知によって感じられている。
「こ、こりゃあ本当に死ぬかもな」
体中から汗が噴きだす。
セリさんと闘った時は、まだセリさんが完全に能力を体に馴染ませていなかったからどうにかなった。
しかし、まだ視界に映っていない守護者がそうとは思えない。
死んでこの墓場の守護者になってから、今までこの地が踏破されることを防ぎ続けていたのだ。
今は別としても過去──まだ一層しかこの墓場が無かった頃、中ボスとして俺の前に立ちはだかった奴らを相手取ってきている。
「なのに弱いなんて……絶対にありえないからな」
最初から支度は本気。
魔力の鎧は全力で堅め、武器は予め大盾を取りだしておく(立派な武器だ)。
一度だけ耐えれば、相手の戦闘パターンが理解できるからな。
もっとも重要な初撃へ備え、相手が動く瞬間を待つ。
そして、ついに視界に守護者が入る。
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