最弱属性魔剣士の雷鳴轟く

相鶴ソウ

260話 ドラゴン・イーター

 黒氷と雷撃をぶつけられたレヴィアタンが怒りに吠えながらサエとエヴァを噛み砕こうと首を伸ばす。
 だが、その側面から俺が接近し、絶断の黒刃を振るう。


「雷帝流奥義 雷神式・霹靂神!!」


 シュデュンヤーを一直線に振り下ろし、レヴィアタンの首に斬りつける。鱗とシュデュンヤーが衝突し、火花を上げる。


「グギャシャァァァァァァァァ!!」


 流石に鱗を削られると痛みを感じるのか、レヴィアタンは身をよじらせて逃げようとする。
 その余波で尻尾が海面に叩きつけられ、波が荒れる。だが、振り払われるわけにはいかない。この技は恐らく獄化・地装衣インフェルノトォールを維持して撃てる最後の技。ここで仕留めるしかないッ!


「うおおおおおおお!!!」

「シャァァァァァァァァッッ!!」


 鱗に亀裂が走り、レヴィアタンの抵抗力が弱まる。
 これ好機と地獄の力と俺の中にある全ての魔力を放出してシュデュンヤーをさらに深く斬り込む。鱗を断ち切って、その肉を黒雷が焼き斬る。


「クロトッ!!」


 シュデュンヤーを振り抜くと同時にレヴィアタンの骨をも断ち切って胴と首が分離する。そして全ての魔力と体力を使い果たした俺の視界はおぼろげになり、体にも力が入らなくなる。頭をグイっと引っ張られるような感覚に襲われ、俺は指一本も動かせないまま海へと転落。それと同時に昏倒の中へと落ちる。





 クロトがレヴィアタンの首を断ち切って海に落下するその寸前で何とかクロトを支える。意識は完全に飛んでるし、シュデュンヤーも私が持たなかったら海に落ちていた。
 クロトが頑張りすぎでダウンすることは何度かあったけど、今回のはクロトにしては早すぎる。普段より感じる魔力も小さいし、何よりクロトの生命エネルギーとかそういった類のものが感じられない。


「エヴァリオン! ぼーっとしないで! ここからが本番なのよ!」

「わ、わかってる」


 クロトの事は一旦置いておくとして、今はレヴィアタンの方が優先。
 海に浮かぶレヴィアタンの死体をよーく見ると、死んだはずのレヴィアタンの体から青い煙のようなものが漏れ出し、小さいレヴィアタンを象って完全に体から分離した。


「これが、魂……」

「シュデュンヤーも効果が無かった……リュウ! 次の作戦!」

「わかってる! フリューゲル!」


 甲板の上に居たリュウがその背中に竜の翼を生やし、こちらへ飛んでくる。
 その間にもレヴィアタンの魂はゆっくりの速度で船に向かって動いている。多分印を持つエレルリーナさんの下に向かってるんだ。


「リュウ、急いで! 無理なら別の手を試さないと」

「うん! 行くよ……」


 リュウの話では七頭のドラゴンを倒して竜鎧装に力を封じるにはそのドラゴンの一部を体内に取り入れるのが最も有効な手段。
 そのために竜鎧装には捕食者ドラゴン・イーターという特別な力がある。本来はドラゴンの力を吸収するものだが、今では七頭のドラゴンの収集法になっている。


捕食者ドラゴン・イーター、発動!」


 竜鎧装の口の部分が開き、鋭い牙と口内が見える。
 リュウが大きく息を吸い込むと同時に青い煙のようなレヴィアタンの魂が引き寄せられ、少しずつリュウの体内に吸収されていく。


「これでだめならもう……」

「どうなのよ、リュウ!」


 レヴィアタンを吸い込んでからリュウは動いていない。
 そもそも目に見える形で魂があるのもおかしいのに、それを吸い込んで無事なんて保証は……


「おいしい」

「え?」

「多分もう大丈夫。魂が印の中に入らない以上はエレルリーナさんがレヴィアタン化することはないよ。後遺症で少しの間は鱗とか出るかもしれないけど」

「そう……はぁぁ、よかった」

「とりあえず船に戻ろう。クロトもこのままにしておけないし」


 船に戻ると、エレルリーナさん達に一体何が起こったのかと矢継ぎ早に聞かれ、掻い摘んで話すと少し安心したような顔をしていた。スーサに至っては少し泣いていた気もする。
 リュウの言った通り、腕の鱗は消えていなかったが、格段に元気になったように見える。多分レヴィアタンになってしまうという精神的負担から解放されたおかげだと思う。


「一日ここに停泊して、明日の朝からシーゼロッタの街に帰還する」


 エレルリーナさんの指示で船の方針も決まり、私もクロトを休ませるために船室に戻ると、氷纏・姫装束イエロ・プリンセスコートの効果も切れてきて酔いと疲労のダブルパンチで眠りについた。


 クロトの謎の体調不良。確かにクロトはいつも常人離れした強さを見せるけど、今回の体調不良はどこか引っかかる。
 もしもクロトの体に何かが起きているなら……私は何かできるかな。

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