最弱属性魔剣士の雷鳴轟く

相鶴ソウ

252話 〈海の現身〉

雷撃ライトニングボルト!!」


 左手をシュデュンヤーから離し、シーサーペントの鼻先に付けて電撃を流し込む。
 シーサーペントは叫び声をあげながら海の中に潜る。だが一匹倒してもすぐに別の奴に狙われる。全方位を囲まれている以上一匹に集中するのは命取りだ。


「雷帝流 稲妻剣・獄! からの雷槍!」


 正面から来たシーサーペントをシュデュンヤーで受け止め、背後から来るシーサーペントに雷槍をぶつけて追い払う。


「雷斬砲・獄!」


 シュデュンヤーで抑えていたシーサーペントを押し返して雷斬砲をぶつける。


「十匹どころじゃねーな。二十匹は軽くいるか……っと、雷砲!」


 次はシーサーペントが動く前に雷砲をぶつけて引かせる。


「リュウ、ここで落として!」

「え、でも……」

「いいから!」


 少し離れた上空でサエが海に向かって落ちる。リュウは心配そうに見ていたが、すぐ状況を思い出して、こちらに戻ってくる。
 サエは海こそテリトリー。周囲のシーサーペントは任せて、船を守る方に集中しよう。


「リュウ! 散弾は打つな! 船が沈む!」

「り、了解! 火竜砲カノン・オブ・サラマンダー!」


 凝縮された炎の塊がシーサーペントの頭頂部に当たり、激しく燃え上がる。が、海の魔物だからか、炎の効果は薄く、痛みに叫び声をあげるが、沈みはしない。


「ハァ!」


 クラクラしているシーサーペントの顎に下から竜牙閃デストリカオを振り上げる。細長い体を仰け反らせ、水中に沈む。
 そこをすかさず、別のシーサーペントが突進を食らわせ、リュウが吹き飛ぶ。


我龍弾カノン!!」


その勢いを逆に利用して別のシーサーペントにエネルギー弾をぶつけて一匹が海に逃げ込む。


「雷帝流 雷斬砲・獄!」


 リュウを突き飛ばしたシーサーペントに斬撃をぶつけ、続けざまにシュデュンヤーを甲板に刺し、両手を向かい合わせてリュウの居る方向へ伸ばす。
 丁度リュウを狙うように海面から三匹のシーサーペントが昇って来ている。


「リュウ! 何とか避けてくれ!」

「え、ええ!? 噓でしょ!?」

神鳴かみなり術 神鳴放電砲しんめいほうでんほう!」


 雷が一直線に迸り、シーサーペント三匹をまとめて爆撃する。三匹とも黒煙を上げながら海に沈んでいく。


「クロト、危ないよ!」

「ああ、でも避けれたみたいで良かった!」

「違う! 後ろ!」


 リュウに言われてとっさに後ろを振り返ると、シーサーペントがすぐそこまで迫っており、食らえば俺ごと甲板を貫いてしまう。


「しまっ……」

黒き氷は汝を串刺しにせんシュバルツ・アイス・ドゥ・スティング・シュピリス!!」


 シーサーペントの鼻先が俺の体を貫こうとしたその刹那、視界の端から空を切って飛んできた氷柱がシーサーペントの横っ面を弾き飛ばし、シーサーペントの突進は不発に終わる。
 だが気を抜いている暇はない。すぐにシュデュンヤーを甲板から抜き、両手で握る。


「雷帝流 雷鋼剣!」


 下から振り上げたシュデュンヤーがシーサーペントの顎を捉え、体を仰け反らせる。すぐさま地面を蹴り、上空に飛ぶ。拳を振り上げてシーサーペントの顔面を殴りつける。シーサーペントはそのまま海の中に倒れ、俺も甲板の上に着陸する。


「エヴァ! 大丈夫か!」

「う、うん……クロトこそ無事で……」

「ああ、助かった。ありがとう」


 船内に続くドアのそばで倒れているエヴァに駆け寄る。プリンセスコートを使っているわけじゃないから黒氷術の魔力消費も軽視は出来ない。酔いも相まって今の一撃が限界だろう。
 改めて甲板の様子を見るが全方位を囲まれ、その数も俺とリュウだけでは対処出来ない。


「リュウ! 降りてこい!」

「あ、ああ!」


 リュウが甲板に降り、俺もエヴァをその場に寝かせて甲板に転がり込む。大技を使えば突破は可能だが、それでは船が耐えられない。


「リュウ、俺と合わせられるか? この船にダメージが出ない程度の技をぶつけて切り抜け……うおっ」


 突然船が大きく揺れ、俺もリュウも大きくバランスを崩す。この船は帆とかいうのに風を受けて進むらしい。このタイミングでの突風だとしたら運が悪い。
 船はクルクルとその場を回り続ける。エヴァじゃなくても酔いそうだ。


「こんな時に風か!」

「いや、違う! 帆は畳まれてる。多分サエちゃんの力だ!」


 リュウの言葉の通り、直後海から吹き上げられた水柱がシーサーペントを捉え、船を囲んでいた数十匹を海に引きずり込む。
 それと同時に船が回転を止め、すごいスピードで動き出す。シーサーペント達は大渦に揉まれ、お互いに体を打ち付けながら海の底に沈んでいく。


「す、すげぇ」


 これがサエの本領発揮。水の豊富な場所での本当の力か。シーサーペントが海流に流され、海に引きづりこまれている様子が殆ど見えなくなった頃、船は徐々に速度を落とし、水柱に乗ったサエが海から帰ってくる。


「ま、こんなもんよ!」


 自慢げな顔をしているが、息は切れて肩が上下している。あれだけの水を操るのはとてつもない疲れを生じるのだろう。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品