最弱属性魔剣士の雷鳴轟く

相鶴ソウ

245話 穿つオリハルコン

『大丈夫カ!?』

「な、何とか」


 吹き飛ばされたリンリもどうにか体勢を立て直し、反撃の姿勢を取る。サーキンは全身に影を纏い、構えるわけでもなく二人を見る。


「闘影武技 滅拳・夕影!」

『素早い技デ防御!』

「え、あ……亀ノ太刀!」


 サーキンが身に纏った影を一点に集中させ、神速の動きで接近。軽く速い拳をねじ込む。対するリンリは頭上から地面に向けて真っ直ぐテンペスターを振り下ろし、炎の残撃が甲羅の様に展開される。
 決して堅い防御では無いが、サーキンも軽い攻撃だったため相殺で終わる。


霧装甲ミストドレス

「このまま行きます。虎ノ太刀!」

「滅拳・夕影!」


 ミストの体から漏れだした霧がリンリに纏わりつく。
 直後踏み込む足に力が入り、テンペスターに纏われた炎の火力が一段と上がる。横一閃に薙ぎ払った太刀がサーキンの拳とぶつかり、お互いに後ろへ飛んで距離を取る。


「また妙な術を……」

「これは……?」

霧世界ミストフィールドを身体に纏わセテ効果を高メタ術ダ。サっきの様に吹き飛バすことハ出来ん』

「すごい力がみなぎってくる。この術、すごい」


 確かにリンリの力は二倍にも三倍にも膨れ上がり、スピードも以前とは比にならない程上がっている。


『ダガ疲労も倍にナる。勝負はすぐに決メろ。あと一つ、どうしテもの時ハその霧を思い切り吸い込メ。更に何倍も強化しテくレる……ガ、おすすメハしナい。暫く指一本動カセナくナるカラナ』

「わ、わかりました!」


 リンリは両手でテンペスターを握り、まっすぐサーキンを見据える。これまで渡り合えて来た実績と、体の内から溢れ出す力にリンリも少しずつ自信をつけていく。


「行きます! 我流……」

「少々そちらが優勢になった、とでも考えてるのでしょうか。彼我の実力差を推し量れない程愚かなことは無い。……お嬢さんは確かに強いですが、目の前に居るのは〈暗殺王〉ですよ? 殺してきた数が違うッ!」

「ハァァ!!」


 リンリは全力で地面を蹴り、サーキンに狙いをつけ、テンペスターを構える。神速の中、はっきりとサーキンを見る。


「……奥義!!」

「闘影武技 最終滅法・影魔人」


 先程と同じように影を全身に纏わせる。が今回は様子が違う。手、足、胴、頭に鎧の様に張り付き、シルエットだけ見れば魔人の様に見える。


『不味い、本気デ殺す気ダ』


 だが、ミストの声はリンリには届かない。届いたとしても最早止まれない。


「白虎ノ太刀!!」


 白炎を纏ったテンペスターを掲げ、まっすぐ振り下ろす。
 白虎ノ太刀はサーキンを纏っている影ごと切り裂いて胴体に袈裟斬りを決める。血が噴き出し、初めてまともと言えるダメージを与えた。


「避けない!?」

「もはや避ける必要などないのですよ。闘影武技 滅拳・絶影!!」

「うがッ」


 未だ空中で身動きの取れないリンリに、容赦なく打ち込まれた拳は溝内にヒット。
 アッパーの様に振り上げられた絶影の威力は凄まじく、リンリの体は容易く空中に投げ出される。テンペスターこそ落とさずに握っていたものの、あまりの衝撃にそのまま意識が飛んでしまう。


『嬢ちャん!』

「まずは一人、ですね」





「オラオラオラ!! さっきまでの威勢はどうしたよ!?」


 連続で繰り出される荒々しい斬撃に、レオは受ける一方で攻撃に転じられていない。堂堂を破った直後、ベンケイの攻撃が激化したのだ。


「これだけでくたばってくれるなよォ? こっからが本番なんだからよォ!!」

至天破邪剣征流してんはじゃけんせいりゅう 相殺の型……」

「させねェよ……水天一碧 制覇ァ!!」


 ベンケイの目の色が変わり、その直後、今まで見えていたベンケイの動きがレオの目に追えなくなる。得意の戦闘勘で防御しているが、まさに嵐の如く斬撃がレオに浴びせられている。
 十人の剣士に同時に斬られてもこうはならない。一本の刀で受けるには攻撃の量が多すぎる。


「クッ、薙払の型 『麒麟駆け』!!」


 嵐に対し嵐で対抗しようとするが、攻撃の数が圧倒的に足りない。レオの攻撃速度もさることながらベンケイはその上を行っている。
 制覇とは文字通り刀一本でこの戦場を制覇するだけの力を持った技なのだ。


「ぐはッ!」


 ベンケイの制覇がレオの麒麟駆けを破り、レオの全身に斬撃が浴びせられる。急所にこそ当たっていないものの、それでもダメージは凄まじい。最後の一太刀がレオの脇腹を斬り裂いてようやくベンケイの動きが止まる。
 レオはガックリと膝を付き、目は閉じてしまっている。純粋なダメージに加え、血を流しすぎている。人体の限界がきているのだ。


「俺の、勝ちだな。ザシャシャシャシャ!」

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