最弱属性魔剣士の雷鳴轟く

相鶴ソウ

243話 必殺を破りし必殺

「水天一碧・威風!」


 素早い斬撃がレオ目掛けて地面を走るも、即座に見切ったレオは、その脇を通り抜けてベンケイに迫る。
 が、ベンケイもその程度は予想の範疇。自身の身長以上もある『水天一碧』の切っ先を夜空に向け、レオを迎え撃つ。


至天破邪剣征流してんはじゃけんせいりゅう 突破の型……」

「水天一碧……」


 地面を強く蹴り、抜刀の構えをとったままベンケイに接近するレオ。そしてそれを待ち構えるベンケイ。掲げられた『水天一碧』を握る腕がこれでもかと言わんばかりに力み、独特の気配が刀身に宿る。


「……堂ォ堂ォォ!!」

「至天失斬烈風……チッ」


 異様な威圧感を放ちながら一直線に振り下ろされる『水天一碧』に真っ向から攻撃を仕掛けようとするも、寸前で思い留まり、後方へ回避。
 振り下ろされた『水天一碧』は地面を轟かす程の振動で地面を抉る。


「ザシャシャ、意外に頭が回るじゃねぇの。この技は生半可な攻撃なら諸共斬り裂く豪傑の一振り……避けて正解だ」

「『至天失斬烈風斬り』じゃ勝てない。だが、だからと言っておれの全ての技が負けたわけじゃない」


 再び一瞬の睨み合いがあり、すぐさま激しい斬り合いが始まる。二人の姿が消え、すれ違いざまに斬り合う。飛ばした斬撃は相手を掠めて街に被弾する。


至天破邪剣征流してんはじゃけんせいりゅう 薙払の型……」

「水天一碧 威風!」

「狂乱の太刀!!」


 無差別に放たれた斬撃がベンケイに迫り、ベンケイの進む足を止めさせる。が、すでに放たれていた威風が斬撃と衝突して相殺し、ベンケイは足こそ止めたが未だ大きなダメージは無い。
 斬撃同士がぶつかり合った影響で両者の間に生まれた白煙を、レオが突き破って進撃する。


至天破邪剣征流してんはじゃけんせいりゅう 突破の型 『虎武璃』!!」


 素早い居合でベンケイに斬りかかるもガードされ、攻撃は通らない。が、レオは次なる攻撃に移る。


至天破邪剣征流してんはじゃけんせいりゅう 薙払の型 『剣征之斬・大輪』!」

「ザシャシャ、遅い!!」


 背後を取ったレオの一撃をベンケイは笑いながら受け止める。が、『剣征之斬』はこれだけでは終わらない。


「『花火』!!」

「水天一碧 威風!!」


 レオが放つ下から上に斬り上げた斬撃を、ベンケイは余裕の表情で回避し、返す刀で斬撃を繰り出す。咄嗟に身をよじるが、ベンケイの一撃を回避しきれず肩に直撃し、血を噴き上げる。


「『天降』!!」


 だが、痛みなど感じないかの如くそのまま詰め寄り、上から下に叩きつけるように斬撃を叩き込む。今度はベンケイも回避できず、水天一碧で受ける。だが有効なダメージにはならない。


「『大風車』!!」


 身体を丸め、縦に回転して斬撃を繰り出す。今度もガードし、攻撃を受けるベンケイだが、今度も反撃の隙無く続けてレオが動く。


「『燕返し』!!」


 一度目の素早い斬撃で水天一碧を叩き、力の抜けたところで二度目の斬撃。水天一碧を打ち上げることで一瞬ではあるがベンケイに隙が出来る。


「ザシャシャ、小賢しい!! この技で終わらしてやらァ! 水天一碧 堂ォ堂ォォ!!」

「こっちも準備は整った・・・・・・至天破邪剣征流してんはじゃけんせいりゅう 薙払の型 『剣征之斬……」


 再び水天一碧を強く握り、独特のオーラを纏わせながら切っ先が天を向く。対するレオは抜刀の構えではなく両手で『銀光月華』を握り、集中している。


「ザシャシャ、消し飛べェ!!」

「……画竜点睛』!!」


 振り下ろされる水天一碧に真っ向から迎え撃つレオ。
 重力すら捻じ曲げられているかの如き圧力の中で、一切怯まずに『画竜点睛』を叩き込む。両者の大技中の大技が真正面からぶつかり合う。衝撃だけで周りの家々の窓ガラスは砕け、地面にはヒビが入る。
 お互い一歩も譲らない攻防だったが、気迫の差でレオが押し切り、『水天一碧 堂堂』を打ち破った。


「な、なに……」

「おれの勝ちだ」


 ベンケイは衝撃でヨロヨロと後退る。『水天一碧 堂堂』は負けなしの技。ベンケイが〈鬼斬り〉と呼ばれる所以ともなった技だ。それ故に単純な力比べで負けたことに動揺を隠しきれていない。


「ザシャシャ……まさか……」


 乾いた笑うがベンケイの口から漏れる。肩もうなだれる様に落ち、水天一碧を握る腕も無気力に垂れている。身体的ダメージは無い。しかし戦意は喪失しているようにも見える。


「しょうがねェよなァ……禁じ手ではあるが、堂堂を破られちゃァ……そのまま引き下がれねェだろ」

「何をブツブツ言ってやがる」

「行くぜ……?」


 ベンケイはニヤリと笑い、レオは警戒するように『銀光月華』を握る腕に力を込める。

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