最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
239話 暗中の打開策
その後は結局エレルリーナさんやスーサから何か聞き出すことは出来ず、泊めてくれるテントに案内された。スーサの異常な態度もそうだが、エレルリーナさんにも気になる点もある。
「なぁクロト」
「何だ? リュウ」
「俺の血って少し特殊なんだよ」
「そりゃ、聞いたことがあるような無いような……」
「俺の爺ちゃんから聞いた話だけど、竜鎧装所有者の血はあらゆるまじないの効果を持っているんだって。例えば長寿とか、病を払うとか……」
「ああ、それが何か……まさか」
「そう、この血をエレルリーナさんに飲んでもらえば治るんじゃない? その病」
確かに。エレルリーナさんが病のために船長を降りているのであれば、病が回復する事でこの海賊団にはメリットしかない。
さらにこの暗い雰囲気を払拭出来るのであれば願ったり叶ったりだろう。
「そりゃいい。じゃあさり気無く……」
「嫌よ!」
卑怯だとは思いつつ秘密裏の作戦を練ろうと思った矢先にサエが口を挟んだ。
「い、嫌とは……?」
「リュウの血をそう安安とは渡せないわ!」
「でもサエちゃんの物では……」
「リュウ、少し黙って」
何故かエヴァまでサエの味方をしており、リュウは完全に縮こまってしまった。一体今度は何を言い始めたんだ……
「でもそれでエレルリーナさんの病が治るならいいじゃ……」
「じゃあクロト。もし私の血をどこの骨とも知れない吸血鬼にガブガブ飲まれたらどうする?」
また突拍子もない事を。そうだな、もしそうなると……
「まずは八大地獄のフルコースを振る舞う。その後話し合いだ」
「そう言う事!」
なるほど、わからんでもない。
「いやどういうこと!」
リュウにはまだ上手く飲み込めていないようだが、サエの気持ちがわかないわけでもない。この作戦はナシか。
しかし今そこまでの私情を持ち出していいものか不安でもある。もしリュウの血が特効薬になっているのであればそれは利用しない手はない。が、効果が無いならサエの我慢損になってしまう。少なくともどんな病か、聞いてからじゃないと対策は練れない、か。
「とにかくリュウの血はあげないわ!」
「わかったわかった。他の手を考えよう」
一先ず俺達だけで出来ることをしておかないと……
「先に戦いの事を考えよう。海中を得意とするレヴィアタン相手にどう戦うか」
「私は問題ないわよ。一回海に落ちればそこからは私のフィールドでもあるもの」
確かに、今回の戦いにおいて唯一海というデメリットをメリットに出来るのがサエだ。あらゆる場面において大きな役割を果たしてくれるに違いない。
「私は氷纏・姫装束を使えば海上ではそれなりに戦えると思う……けど、水中となると氷が四方に散っちゃうかもしれないから、海上に姿を現した時じゃないと攻撃を当てるのは厳しいかも」
確かに水温次第では地上と大きく勝手が変わる。俺とリュウは空を飛べるとは言え海中で同じように動けるかと言われればそうじゃない。
やはり海中で戦うより海上に引きずり出す必要が……
「何の音だ?」
外が若干騒がしい。大勢が走る音や時折怒鳴り声も聞こえてくる。しかも男の声だ。この海賊団は女しかいないそうだから男の声が聞こえることがまずありえない。
「何かあったんだ。俺達も行こう」
声につられて外に出てみると街の方向、丁度俺とスーサが戦った場所に二つの人だかりが出来ている。
片方は海賊団員。もう片方は特に統一性もない男の多い集団だ。女性もちらほらいるが大多数は男。その双方の中心で例の斧を握りしめたスーサが立っている。
「あれは……」
「おいおいおい、俺達を散々蔑ろにした挙句別の奴が討伐に向かうらしいじゃねぇか」
どうやらスーサに負けた冒険者達らしい。数はおよそ三十。そういえばエレルリーナさんも冒険者達の我慢が限界まで来てるとか言ってたな。
「あんまりじゃねぇのか? 俺達は遠路はるばるお前らのために来てやったのによぉ!」
冒険者側のリーダーらしき男がものすごい剣幕でスーサを睨みつける。今にも飛び掛からんとする勢いだ。
「それはお前達に力が無かっただけだろ。丸腰の私すら倒せないやつがレヴィアタンを倒す? 寝言は寝て言え!」
「んだとこら……てめぇらが船を出さねぇってんならお前等から船を奪ってレヴィアタンでも何でも討伐してやらぁ!」
スーサが至極正論を言っているが冒険者側は頭に血が上っているのか全く話を聞いていない。恐らくは皆レヴィアタンを倒したという称号に目がくらみここにやって来たのだろう。
「それが出来るとでも?」
「こっちは何人いると思ってんだァ! 行くぞお前ら!」
冒険者達が一斉に武器を取り、憎しみの籠った目でギラギラと睨みつけている。
「どうするの? クロト」
「どうするったって、いくら数が居てもあいつらじゃスーサには勝てないだろ。それに海賊団の問題を俺達が解決していいものか……」
「でも私達が引き金になったんだよ?」
「あの……皆様」
エヴァの言葉に心が揺れ動いていたところへ何やら弱弱しい声が聞こえてくる。何かと思うとエレルリーナさんが木にしがみつきながらこちらへ歩いてきていた。
「だ、大丈夫ですか?」
息もかなり上がっているし、顔色が悪い。
「私の事よりもスーサを助けてあげてください!」
再び視線を戻すとまさに冒険者達が海賊側に詰め寄り、武器を振り上げ戦闘が始まろうとしている。こうなったら仕方な……
「おらァ!」
「えい!」
聞き馴染みのある声にしては気迫の強い声と聞き馴染みのある声にしては可愛らしい声が聞こえ、冒険者達が吹き飛ばされて宙を飛んでいる。
あいつら、少しは待つという事を……いや、今回に関してはよくやった、か。
「なぁクロト」
「何だ? リュウ」
「俺の血って少し特殊なんだよ」
「そりゃ、聞いたことがあるような無いような……」
「俺の爺ちゃんから聞いた話だけど、竜鎧装所有者の血はあらゆるまじないの効果を持っているんだって。例えば長寿とか、病を払うとか……」
「ああ、それが何か……まさか」
「そう、この血をエレルリーナさんに飲んでもらえば治るんじゃない? その病」
確かに。エレルリーナさんが病のために船長を降りているのであれば、病が回復する事でこの海賊団にはメリットしかない。
さらにこの暗い雰囲気を払拭出来るのであれば願ったり叶ったりだろう。
「そりゃいい。じゃあさり気無く……」
「嫌よ!」
卑怯だとは思いつつ秘密裏の作戦を練ろうと思った矢先にサエが口を挟んだ。
「い、嫌とは……?」
「リュウの血をそう安安とは渡せないわ!」
「でもサエちゃんの物では……」
「リュウ、少し黙って」
何故かエヴァまでサエの味方をしており、リュウは完全に縮こまってしまった。一体今度は何を言い始めたんだ……
「でもそれでエレルリーナさんの病が治るならいいじゃ……」
「じゃあクロト。もし私の血をどこの骨とも知れない吸血鬼にガブガブ飲まれたらどうする?」
また突拍子もない事を。そうだな、もしそうなると……
「まずは八大地獄のフルコースを振る舞う。その後話し合いだ」
「そう言う事!」
なるほど、わからんでもない。
「いやどういうこと!」
リュウにはまだ上手く飲み込めていないようだが、サエの気持ちがわかないわけでもない。この作戦はナシか。
しかし今そこまでの私情を持ち出していいものか不安でもある。もしリュウの血が特効薬になっているのであればそれは利用しない手はない。が、効果が無いならサエの我慢損になってしまう。少なくともどんな病か、聞いてからじゃないと対策は練れない、か。
「とにかくリュウの血はあげないわ!」
「わかったわかった。他の手を考えよう」
一先ず俺達だけで出来ることをしておかないと……
「先に戦いの事を考えよう。海中を得意とするレヴィアタン相手にどう戦うか」
「私は問題ないわよ。一回海に落ちればそこからは私のフィールドでもあるもの」
確かに、今回の戦いにおいて唯一海というデメリットをメリットに出来るのがサエだ。あらゆる場面において大きな役割を果たしてくれるに違いない。
「私は氷纏・姫装束を使えば海上ではそれなりに戦えると思う……けど、水中となると氷が四方に散っちゃうかもしれないから、海上に姿を現した時じゃないと攻撃を当てるのは厳しいかも」
確かに水温次第では地上と大きく勝手が変わる。俺とリュウは空を飛べるとは言え海中で同じように動けるかと言われればそうじゃない。
やはり海中で戦うより海上に引きずり出す必要が……
「何の音だ?」
外が若干騒がしい。大勢が走る音や時折怒鳴り声も聞こえてくる。しかも男の声だ。この海賊団は女しかいないそうだから男の声が聞こえることがまずありえない。
「何かあったんだ。俺達も行こう」
声につられて外に出てみると街の方向、丁度俺とスーサが戦った場所に二つの人だかりが出来ている。
片方は海賊団員。もう片方は特に統一性もない男の多い集団だ。女性もちらほらいるが大多数は男。その双方の中心で例の斧を握りしめたスーサが立っている。
「あれは……」
「おいおいおい、俺達を散々蔑ろにした挙句別の奴が討伐に向かうらしいじゃねぇか」
どうやらスーサに負けた冒険者達らしい。数はおよそ三十。そういえばエレルリーナさんも冒険者達の我慢が限界まで来てるとか言ってたな。
「あんまりじゃねぇのか? 俺達は遠路はるばるお前らのために来てやったのによぉ!」
冒険者側のリーダーらしき男がものすごい剣幕でスーサを睨みつける。今にも飛び掛からんとする勢いだ。
「それはお前達に力が無かっただけだろ。丸腰の私すら倒せないやつがレヴィアタンを倒す? 寝言は寝て言え!」
「んだとこら……てめぇらが船を出さねぇってんならお前等から船を奪ってレヴィアタンでも何でも討伐してやらぁ!」
スーサが至極正論を言っているが冒険者側は頭に血が上っているのか全く話を聞いていない。恐らくは皆レヴィアタンを倒したという称号に目がくらみここにやって来たのだろう。
「それが出来るとでも?」
「こっちは何人いると思ってんだァ! 行くぞお前ら!」
冒険者達が一斉に武器を取り、憎しみの籠った目でギラギラと睨みつけている。
「どうするの? クロト」
「どうするったって、いくら数が居てもあいつらじゃスーサには勝てないだろ。それに海賊団の問題を俺達が解決していいものか……」
「でも私達が引き金になったんだよ?」
「あの……皆様」
エヴァの言葉に心が揺れ動いていたところへ何やら弱弱しい声が聞こえてくる。何かと思うとエレルリーナさんが木にしがみつきながらこちらへ歩いてきていた。
「だ、大丈夫ですか?」
息もかなり上がっているし、顔色が悪い。
「私の事よりもスーサを助けてあげてください!」
再び視線を戻すとまさに冒険者達が海賊側に詰め寄り、武器を振り上げ戦闘が始まろうとしている。こうなったら仕方な……
「おらァ!」
「えい!」
聞き馴染みのある声にしては気迫の強い声と聞き馴染みのある声にしては可愛らしい声が聞こえ、冒険者達が吹き飛ばされて宙を飛んでいる。
あいつら、少しは待つという事を……いや、今回に関してはよくやった、か。
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