最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
228話 新生パーティ
「こいつ、貰って良いんだよな?」
黒い宮殿に戻って来た後、重々しい空気を打ち破ってレオが口を開いた。
ハデス深く何かを考えている様子だったが、レオの言葉に頷く。右手の『狂鬼零刀』……改め『銀光月華』は先程までの禍々しい雰囲気が消え、代わりに凄まじい闘志を感じる。刀から出る圧も凄いが、レオが持つ本来の圧も相まっている気がする。
結局その後は大した話もしないまま俺達は地上に戻った。
地獄では空気と化していたエヴァも地上に戻ってくるとぐったりと疲れた様子だったので、とりあえずは宿に帰った。あれだけの獄気に当てられたのだから仕方がないといえば仕方ない。俺は地獄の鍵で相殺、レオは持ち前の精神力で相殺していたからな。
気づけば空も黄金色に染まり、一日の終わりを告げている。
「とりあえずはこの街でやることも済ませたし、出発するか」
「そうだね」
レオと別れ、部屋に戻ってきた俺とエヴァは自分達の荷物を確認しながら今後について話し合う。
「あ、でもクロト」
「ん?」
「その、ケルターメンに行くならその前に色々と買い出ししないと」
「ああ、そうだな……何か問題でもあるのか?」
何か気まずそうにもじもじしているので何かと問うと恐る恐るといった様子で口を開いた。
「……お金が無い」
盲点だった。
皇帝鬼を討伐した時の報酬は莫大で、金に困ることなんてしばらくは無いと思っていたがここで尽きたか。思えばあれからかなり使い込んできたし、ブルーバードでの給料やレオの稼ぎは再建に殆どつぎ込んできてしまった。
「てことは……しばらく冒険者業だな」
「だね」
◇
そんなこんなで翌日。
急遽予定を変更し、俺達はケルターメンを目指す前に冒険者業を行う為、冒険者ギルドに来ていた。
この街、カサドルは大魔森に近い為に討伐の依頼が多い。俺達七人は幸運にもそれぞれが一人で依頼を受けられる程の実力は持っていたので、特に問題も起こらないはずだ。
「そういえば今まではあまり目立たないように無名で活動してきたが、パーティとしてちゃんと名前をつけてやってもいいかもな」
「確かに! 私達の所に何度か『STRONGER』の取材きてるけどほとんど断ってるもんね」
「アラン団長達には会っちゃったわけだからもう隠す必要もないしな」
「おれは興味無いから依頼行くぞ?」
「まぁまぁ、レオ。待ちなんし。これからわっちらが名乗る名前でありんす」
「みんなで決めたほうが……いいのでは……」
早く『銀光月華』の試し斬りでもしたいのか、既に数歩あるきだしていたレオだが、二人にたしなめられ渋々戻ってきた。リュウとサエも特に異論は無さそうに頷く。
二人にも諸々の事情は説明済みだ。魔族を相手にする事も了承し、協力すると言ってくれたので隠し事はナシだ。
「しかし、名前どうするか」
「今まで出会ってきたパーティ名で言うと〈シルク・ド・リベルター〉とか〈女闘士軍 アマゾネス〉とか……」
「おれは〈地獄の炎帝〉って奴にあった事がある」
「私が知ってるのは……思い出したくもないけど〈猿狩り〉……」
〈猿狩り〉……確かサエを騙してウェヌス盗賊団に引き渡した冒険者パーティだったか。サエにとっては苦い思い出だろうな。その事もあって仲間に苦手意識があるだろうと思っていたが、それを払拭してくれるほどの何かが俺達……いや、リュウにあったという事だろうか。
話を戻して。改めて振り返ってみればパーティの名前と特徴は殆ど一致するものばかりだよな。となると俺達は……
「黒の雷鳴は?」
「いや、獅子の憤怒だ」
「ここはわっちの月の女神というのを入れて……」
「いいえ、いずれこのパーティの一番人気となる私の事を入れた名前がいいわ!」
エヴァ、レオ、シエラ、サエの口論をリュウとリンリは引き気味に見ている。このバラバラの七人の一致する特徴なんてあるのか……
「雷鳴!」
「獅子!」
「月の女神!」
「私!!」
無理だ……このメンツに相応しい名前なんて……
目の前で繰り広げられる四つ巴の戦いを頭を抱えて眺めていると服の端をちょいちょいとリンリに引っ張られ顔を向ける。
「だったら……」
◇
冒険者業開始から二週間。今日はどの依頼にしようかと依頼の張ってあるボードを眺めていた時、ニルダさんがやって来た。
「よぉ! 今日も依頼か?」
「ああ、いざ必要なものを出してみると結構な数でな。その分稼がないと……と言ってもあともう少しで目標金額に到達するんだが」
「おお、そりゃよかったな」
「ああ、そういえば今日は随分人が少ないがどうしたんだ?」
いつもこの時間帯は冒険者でごった返しているのだが、今日はその半数、いや三分の一程度しかいない。
「なんだ知らないのか? アルバレス領の西に港町があってだな。リーゼロッタって言ったか、その街でなんとレヴィアタンが出たんだとよ」
「レヴィアタンって……」
「七色の竜!」
リュウが反応するってことはそういう事か。
「ありがとうニルダさん。折角だから俺達もその話に一枚噛んで来ようと思う」
「おう、そうかい。まぁ冒険こそが俺らの本分だしな! 気をつけろよ」
「ああ、皆。すぐに出発するぞ!」
黒い宮殿に戻って来た後、重々しい空気を打ち破ってレオが口を開いた。
ハデス深く何かを考えている様子だったが、レオの言葉に頷く。右手の『狂鬼零刀』……改め『銀光月華』は先程までの禍々しい雰囲気が消え、代わりに凄まじい闘志を感じる。刀から出る圧も凄いが、レオが持つ本来の圧も相まっている気がする。
結局その後は大した話もしないまま俺達は地上に戻った。
地獄では空気と化していたエヴァも地上に戻ってくるとぐったりと疲れた様子だったので、とりあえずは宿に帰った。あれだけの獄気に当てられたのだから仕方がないといえば仕方ない。俺は地獄の鍵で相殺、レオは持ち前の精神力で相殺していたからな。
気づけば空も黄金色に染まり、一日の終わりを告げている。
「とりあえずはこの街でやることも済ませたし、出発するか」
「そうだね」
レオと別れ、部屋に戻ってきた俺とエヴァは自分達の荷物を確認しながら今後について話し合う。
「あ、でもクロト」
「ん?」
「その、ケルターメンに行くならその前に色々と買い出ししないと」
「ああ、そうだな……何か問題でもあるのか?」
何か気まずそうにもじもじしているので何かと問うと恐る恐るといった様子で口を開いた。
「……お金が無い」
盲点だった。
皇帝鬼を討伐した時の報酬は莫大で、金に困ることなんてしばらくは無いと思っていたがここで尽きたか。思えばあれからかなり使い込んできたし、ブルーバードでの給料やレオの稼ぎは再建に殆どつぎ込んできてしまった。
「てことは……しばらく冒険者業だな」
「だね」
◇
そんなこんなで翌日。
急遽予定を変更し、俺達はケルターメンを目指す前に冒険者業を行う為、冒険者ギルドに来ていた。
この街、カサドルは大魔森に近い為に討伐の依頼が多い。俺達七人は幸運にもそれぞれが一人で依頼を受けられる程の実力は持っていたので、特に問題も起こらないはずだ。
「そういえば今まではあまり目立たないように無名で活動してきたが、パーティとしてちゃんと名前をつけてやってもいいかもな」
「確かに! 私達の所に何度か『STRONGER』の取材きてるけどほとんど断ってるもんね」
「アラン団長達には会っちゃったわけだからもう隠す必要もないしな」
「おれは興味無いから依頼行くぞ?」
「まぁまぁ、レオ。待ちなんし。これからわっちらが名乗る名前でありんす」
「みんなで決めたほうが……いいのでは……」
早く『銀光月華』の試し斬りでもしたいのか、既に数歩あるきだしていたレオだが、二人にたしなめられ渋々戻ってきた。リュウとサエも特に異論は無さそうに頷く。
二人にも諸々の事情は説明済みだ。魔族を相手にする事も了承し、協力すると言ってくれたので隠し事はナシだ。
「しかし、名前どうするか」
「今まで出会ってきたパーティ名で言うと〈シルク・ド・リベルター〉とか〈女闘士軍 アマゾネス〉とか……」
「おれは〈地獄の炎帝〉って奴にあった事がある」
「私が知ってるのは……思い出したくもないけど〈猿狩り〉……」
〈猿狩り〉……確かサエを騙してウェヌス盗賊団に引き渡した冒険者パーティだったか。サエにとっては苦い思い出だろうな。その事もあって仲間に苦手意識があるだろうと思っていたが、それを払拭してくれるほどの何かが俺達……いや、リュウにあったという事だろうか。
話を戻して。改めて振り返ってみればパーティの名前と特徴は殆ど一致するものばかりだよな。となると俺達は……
「黒の雷鳴は?」
「いや、獅子の憤怒だ」
「ここはわっちの月の女神というのを入れて……」
「いいえ、いずれこのパーティの一番人気となる私の事を入れた名前がいいわ!」
エヴァ、レオ、シエラ、サエの口論をリュウとリンリは引き気味に見ている。このバラバラの七人の一致する特徴なんてあるのか……
「雷鳴!」
「獅子!」
「月の女神!」
「私!!」
無理だ……このメンツに相応しい名前なんて……
目の前で繰り広げられる四つ巴の戦いを頭を抱えて眺めていると服の端をちょいちょいとリンリに引っ張られ顔を向ける。
「だったら……」
◇
冒険者業開始から二週間。今日はどの依頼にしようかと依頼の張ってあるボードを眺めていた時、ニルダさんがやって来た。
「よぉ! 今日も依頼か?」
「ああ、いざ必要なものを出してみると結構な数でな。その分稼がないと……と言ってもあともう少しで目標金額に到達するんだが」
「おお、そりゃよかったな」
「ああ、そういえば今日は随分人が少ないがどうしたんだ?」
いつもこの時間帯は冒険者でごった返しているのだが、今日はその半数、いや三分の一程度しかいない。
「なんだ知らないのか? アルバレス領の西に港町があってだな。リーゼロッタって言ったか、その街でなんとレヴィアタンが出たんだとよ」
「レヴィアタンって……」
「七色の竜!」
リュウが反応するってことはそういう事か。
「ありがとうニルダさん。折角だから俺達もその話に一枚噛んで来ようと思う」
「おう、そうかい。まぁ冒険こそが俺らの本分だしな! 気をつけろよ」
「ああ、皆。すぐに出発するぞ!」
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