最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
207話 プリンセス降臨
クロトが毒に飲み込まれ、思わず足を止める。
獄化・地装衣を発動していたとしてもあれだけの毒を受けて無事な可能性は低い。
「ぁ……ぁぁ……」
「まずは一人ィ……」
首の関節をポキポキ鳴らしながら振り返り、ゼノンは私に狙いをつける。
クロトが敗れたというデルダインの超技、武雷針を持ってしても貫けない毒。そしてクロト自身も今は毒にまみれて地面に倒れている。私が戦わなきゃ……ここで動かないと、みんな殺される……
「まァそう泣くなや。すぐに同じところに行けんだからよォ」
若干困ったようにも取れる表情でゼノンは言う。自分でも気づかないうちに涙が頬を伝っていた。クロトの助かる可能性はゼロに近い……けどゼロじゃない。いくら毒に侵されていてもクロトはいつだって普通の人とは違った。
あのガイナ達でさえも最初は私に関わろうとはしなかった。でもクロトは違った。普通雷属性って言われたら魔術の道はみんな諦める。でもクロトは違った。今ここで戦って勝つ。クロトも助ける……!
「雹絶世界!!」
両手を地面に付き、周囲の地面を凍てつかせる。地面から尖った氷塊が突き出る攻撃特化の雹絶世界。
「うお、やる気かァ」
「氷結下界!」
指を鳴らすと地面から突き出た氷塊が上空に舞い、散弾。一定範囲に霰を降らせる。それにより視界は悪くなり、ゼノンと言えど私の姿を完璧には捉えられなくなるはず。
「チィ……遅延行為に意味があるのかァ?」
私に向かって叫んでいるんだろうけど返事はしない。苛立ったゼノンは向けて右手を突き出して毒を噴射する。あれを食らったら私も終わりだ。
「毒蛇!!」
さっきよりも太い管のように伸びた毒蛇は霰で影しか見えないであろう私を捉え、肩から毒の蛇に噛みつかれる。
「氷術 生贄」
噛み砕いたはずの私の体は氷になって砕け散る。
以前私が使っていたただの人形を作り出す氷の身代わりと違い、攻撃を食らってから自身と氷の位置を入れ替える術。魔力の消費もかなり多い上に失敗する可能性もある賭けの術だけど、確実に相手に隙を作れる。
「なに……?」
「そこ……武器具現 『トマホーク』 氷斧両断二投撃!!」
背後に回り、それぞれの手から氷の斧を作り出して、ゼノンへ向けて回転しながら発射する。
「うお……」
両サイドから迫ってくる斧を両手を広げ、毒でコーティングして受け止める。
回転した斧は毒を弾き飛ばして迫るが、溢れ出る毒を完全に弾き飛ばすことは出来ず、停滞している。
「もう一度、武器具現! 『トライデント』 氷槍猪突猛進撃!」
そこへ続けざまに氷槍を生成し、ゼノンの心臓めがけて飛ばす。
斧を弾き、両腕を氷斧で防いだところへ決定打を打ち込む。氷結下界や生贄で隙を作り、大技二連続で確実にトドメを刺す私が即興で考えた戦法。
「こりゃ……やべぇなァ!」
ゼノンに氷槍が突き刺さる直前、ゼノンの全身から今までの比にならない量の毒が溢れ出し、氷槍はおろか氷斧をも飲み込んだ。氷結下界の効果時間も終わり、視界も通るようになる。
そして現れる、まさに怪物。
紫の毒は足の無いの化け物を象る。上半身は大きく、尻尾は長い。顔は蛇の骸骨に似ており、蛇で言えば胸にあたる所から太い腕が生えている。中心にいるゼノンは嬉しそうな笑みを浮かべながら叫ぶ。
「まさかこれを使わされることになるとは思わなかったぜぇ……奥義、毒大蛇。これで沈めた街はいくつになるっけなァ」
両腕が地面を掴み、威嚇するように吠える。
毒が象っているだけのはずなのに、命を持った生物と変わらない程の迫力。むしろこっちの方が怖い。
「こいつはオレの体を完璧に守り、触れるもの全てを毒に侵す。まさに攻防をいっぺんに行える最強の毒さ」
ゼノンの言っていることは多分真実。
それに私の氷ではきっとあの毒は貫けない。黒氷なら、まだ可能性はある。雹術でも行けるかもしれない。まだまだ練習段階……でもいまここを破るならこれしかない。
「はぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
胸の魔石に触れ、全身から魔力を解放させる。私の魔力量と魔力の器じゃこの術は使えなかった。でも、闇の魔石を器として活用すればそれも可能になる。
「氷術奥義……!」
「な、何だこの魔力……」
黒氷術を戦闘で使うには魔力がまるで足りない。だから強力な魔力増幅の術を編みだす必要があった。ネグラが表に出ている時は魔石に蓄積された膨大な魔力を使うから問題なかったけど、私が自分の意思で使うなら話は別。だからネグラと同じように魔石の魔力を引っ張り出す!
「……氷纏・姫装束!!」
服が氷で作られた真っ白なドレスに変わり、髪の毛が金から黒へ変化する。魔力がとめどなく溢れ、失った体力も戻ってきている。
クロトの様に体質ごと属性に変換は出来なかったけど、天装衣の魔力増幅だけを行い、その氷を着ることにした。それが氷纏・姫装束。
「これが私の新しい力!」
頭に何か乗った感触がしたので、触れてみると氷のティアラが乗っていた。お姫様みたいでちょっと恥ずかしいけど、この姿なら負けない。
クロトは私が助ける。
獄化・地装衣を発動していたとしてもあれだけの毒を受けて無事な可能性は低い。
「ぁ……ぁぁ……」
「まずは一人ィ……」
首の関節をポキポキ鳴らしながら振り返り、ゼノンは私に狙いをつける。
クロトが敗れたというデルダインの超技、武雷針を持ってしても貫けない毒。そしてクロト自身も今は毒にまみれて地面に倒れている。私が戦わなきゃ……ここで動かないと、みんな殺される……
「まァそう泣くなや。すぐに同じところに行けんだからよォ」
若干困ったようにも取れる表情でゼノンは言う。自分でも気づかないうちに涙が頬を伝っていた。クロトの助かる可能性はゼロに近い……けどゼロじゃない。いくら毒に侵されていてもクロトはいつだって普通の人とは違った。
あのガイナ達でさえも最初は私に関わろうとはしなかった。でもクロトは違った。普通雷属性って言われたら魔術の道はみんな諦める。でもクロトは違った。今ここで戦って勝つ。クロトも助ける……!
「雹絶世界!!」
両手を地面に付き、周囲の地面を凍てつかせる。地面から尖った氷塊が突き出る攻撃特化の雹絶世界。
「うお、やる気かァ」
「氷結下界!」
指を鳴らすと地面から突き出た氷塊が上空に舞い、散弾。一定範囲に霰を降らせる。それにより視界は悪くなり、ゼノンと言えど私の姿を完璧には捉えられなくなるはず。
「チィ……遅延行為に意味があるのかァ?」
私に向かって叫んでいるんだろうけど返事はしない。苛立ったゼノンは向けて右手を突き出して毒を噴射する。あれを食らったら私も終わりだ。
「毒蛇!!」
さっきよりも太い管のように伸びた毒蛇は霰で影しか見えないであろう私を捉え、肩から毒の蛇に噛みつかれる。
「氷術 生贄」
噛み砕いたはずの私の体は氷になって砕け散る。
以前私が使っていたただの人形を作り出す氷の身代わりと違い、攻撃を食らってから自身と氷の位置を入れ替える術。魔力の消費もかなり多い上に失敗する可能性もある賭けの術だけど、確実に相手に隙を作れる。
「なに……?」
「そこ……武器具現 『トマホーク』 氷斧両断二投撃!!」
背後に回り、それぞれの手から氷の斧を作り出して、ゼノンへ向けて回転しながら発射する。
「うお……」
両サイドから迫ってくる斧を両手を広げ、毒でコーティングして受け止める。
回転した斧は毒を弾き飛ばして迫るが、溢れ出る毒を完全に弾き飛ばすことは出来ず、停滞している。
「もう一度、武器具現! 『トライデント』 氷槍猪突猛進撃!」
そこへ続けざまに氷槍を生成し、ゼノンの心臓めがけて飛ばす。
斧を弾き、両腕を氷斧で防いだところへ決定打を打ち込む。氷結下界や生贄で隙を作り、大技二連続で確実にトドメを刺す私が即興で考えた戦法。
「こりゃ……やべぇなァ!」
ゼノンに氷槍が突き刺さる直前、ゼノンの全身から今までの比にならない量の毒が溢れ出し、氷槍はおろか氷斧をも飲み込んだ。氷結下界の効果時間も終わり、視界も通るようになる。
そして現れる、まさに怪物。
紫の毒は足の無いの化け物を象る。上半身は大きく、尻尾は長い。顔は蛇の骸骨に似ており、蛇で言えば胸にあたる所から太い腕が生えている。中心にいるゼノンは嬉しそうな笑みを浮かべながら叫ぶ。
「まさかこれを使わされることになるとは思わなかったぜぇ……奥義、毒大蛇。これで沈めた街はいくつになるっけなァ」
両腕が地面を掴み、威嚇するように吠える。
毒が象っているだけのはずなのに、命を持った生物と変わらない程の迫力。むしろこっちの方が怖い。
「こいつはオレの体を完璧に守り、触れるもの全てを毒に侵す。まさに攻防をいっぺんに行える最強の毒さ」
ゼノンの言っていることは多分真実。
それに私の氷ではきっとあの毒は貫けない。黒氷なら、まだ可能性はある。雹術でも行けるかもしれない。まだまだ練習段階……でもいまここを破るならこれしかない。
「はぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
胸の魔石に触れ、全身から魔力を解放させる。私の魔力量と魔力の器じゃこの術は使えなかった。でも、闇の魔石を器として活用すればそれも可能になる。
「氷術奥義……!」
「な、何だこの魔力……」
黒氷術を戦闘で使うには魔力がまるで足りない。だから強力な魔力増幅の術を編みだす必要があった。ネグラが表に出ている時は魔石に蓄積された膨大な魔力を使うから問題なかったけど、私が自分の意思で使うなら話は別。だからネグラと同じように魔石の魔力を引っ張り出す!
「……氷纏・姫装束!!」
服が氷で作られた真っ白なドレスに変わり、髪の毛が金から黒へ変化する。魔力がとめどなく溢れ、失った体力も戻ってきている。
クロトの様に体質ごと属性に変換は出来なかったけど、天装衣の魔力増幅だけを行い、その氷を着ることにした。それが氷纏・姫装束。
「これが私の新しい力!」
頭に何か乗った感触がしたので、触れてみると氷のティアラが乗っていた。お姫様みたいでちょっと恥ずかしいけど、この姿なら負けない。
クロトは私が助ける。
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