最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
185話 戦いにルールなど無い
「な、なんだ!?」
「なにか降ってきたぞ!」
一角獣騎士団の目の前に何かが通過して地面に落ちた。
砂煙が舞い、それをはっきりと確認する事は出来ない。だが、団長のハルバーと副団長のレイティスは落ちてくる寸前、太陽の光を背にし姿が見えなかったそれを人間だと認識していた。
「ハルバー団長……」
「ああ、わかっている」
戦闘で馬に乗り、騎士団を先導していた二人が馬を降り、槍を構える。団員達は戸惑っていたが二人の姿を見て、それぞれ馬や馬車から降り、戦闘体制を取る。
「よぉ、久しぶりだな」
砂煙の中からレオが姿を表す。銀月を鞘にしまったまま肩にポンポンと担ぎ、嬉しそうに笑みを浮かべている。
「貴方は?」
一角獣騎士団はレオから距離を取ったまま囲むように半円に広がり、全員一様に槍を構えている。
「会いたかったぜ……約半年前、おれを奴隷にして売ったのはお前らだろ」
◇
「街で戦闘が行われている様子は無いな」
「うん、わりかし静かだよ」
となるともうすでに街の外か、それともまだ接触していないか……
どちらにせよ早く見つけないと龍騎士団にハンターが倒されてしまったら面倒だ。あの刀の事もあるし……それにその逆も困る。
「よし、街の外に……」
「なぁさっきの見たか?」
不意に男の声が耳に入る。
見ると若い男女が反対方向へ向けて歩いていた。
「騎士団?」
「そうそう、慌てて街の外に出ていったけどなんかあったのかな?」
「でも街の外に行ったんでしょ?なら街の中は大丈夫よ」
「いやいや、もしかしたら例の魔族かも……」
「ちょっと、やめてよ」
次第に二人は遠くなり、話も聞こえなくなっていく。
だが十分話は聞こえた。
「エヴァ!」
「うん! 街の外だね」
◇
「奴隷? ……なんの事でしょう」
先頭に立つハルバーに向かってレオは銀月の切っ先を向ける。
「忘れたのなら思い出させてやるよ。至天破邪剣征流……」
「遅い!」
レオが構えに入った時、副団長のレイティスはレオの頭上を取っていた。両手で槍を振り上げ、レオめがけて一切の躊躇なく叩き落とす。
予想外の速度に若干目を見開きながらもばやく後ろに飛び退き、それを避ける。穂は地面に深く突き刺さっており、それをまともに食らっていれば致命傷だったと物語っていた。
「この風の一番槍と称された俺の実力、見せてくれる。ハルバー団長! 先に行ってください。ここで足止めを食らうわけには行きません」
「わかった、行くぞ!」
ハルバーとそれに続く団員達が馬車に戻り、再発の準備を始める。
「行かせるわけねぇだろ 突破の型 『突き立てる牙』!!」
レイティスに向けて突きを放つも、相手は普段から槍を持った者同士で訓練している。その程度の突きは容易に躱され、逆に槍が薙ぎ払われる。
「チッ……」
なんとか防御体制を取り、その薙ぎ払いを受けるがレイティスはそこから畳み掛けるように攻撃を繰り出す。槍を自由自在に操り、右から薙ぎ払ったかと思えば左から攻撃が飛び、無差別な連続の素早い突き、薙ぎ払いがレオを襲う。
「この程度ですか」
「至天破邪剣征流……」
「だから遅いと言っている!」
技を出そうとしたレオに再びレイティスの猛攻が襲う。
ほぼ全方向から飛んでくる攻撃に、浅い傷を増やしていたレオだが、しばらくすると一切の被弾がなくなる。
「動きが……変わった?」
「もうお前の動きは見切った。突破の型」
「馬鹿な!」
レオの言動と実際に当たらなくなっている攻撃に若干の焦りが生じ、一瞬の隙を作ってしまう。そこをレオは見逃さず、レイティスの腹に蹴りを入れる。
「な……剣士が蹴りだと……」
「戦いにルールなんてものはない! 『大空を舞う龍の轟爪』!」
満を持して抜いた銀月から斬撃が大砲の如く飛び、ちょうど出発しようとしていた馬の足元に直撃した。ハルバーの乗っていた馬だ。
「この……!!」
不意の蹴りでよろけたレイティスだが、すぐに槍を構え直しレオに向けて薙ぎ払う。
「至天破邪剣征流 突破の型 『虎武璃』!!」
が、それよりと早くレオの居合が炸裂し、レイティスは胴を袈裟斬りされて膝を付き、そして倒れる。鎧に守られ傷こそ無かったものの、その衝撃は意識を飛ばすには十分だった。
「お前なんぞに時間をかけてられるか。お前……さっさと俺と戦え」
「どうやら私が出るしかなさそうだな」
やれやれといった様子で馬を降り、槍をレオに向ける。
それに対抗するようにレオも闘志を放つ。馬車や馬の上にいた団員達もただならぬ緊張感に冷や汗が流れる。
「そういえば貴方の事、思い出しましたよ」
「あの時は腹減ってる時によくもやってくれ……」
「フッ……」
「…………ッ!!」
それは本当に一瞬、まばたき程の間にハルバーが動いた。ほぼ消えたに等しい速度でレオを通り過ぎる。直後レオの脇腹が裂け、血がドバっと垂れる。
あのレオが刀を抜く暇もなく斬られたのだ。
「レイティスと同じだと思わない事だ」
「なにか降ってきたぞ!」
一角獣騎士団の目の前に何かが通過して地面に落ちた。
砂煙が舞い、それをはっきりと確認する事は出来ない。だが、団長のハルバーと副団長のレイティスは落ちてくる寸前、太陽の光を背にし姿が見えなかったそれを人間だと認識していた。
「ハルバー団長……」
「ああ、わかっている」
戦闘で馬に乗り、騎士団を先導していた二人が馬を降り、槍を構える。団員達は戸惑っていたが二人の姿を見て、それぞれ馬や馬車から降り、戦闘体制を取る。
「よぉ、久しぶりだな」
砂煙の中からレオが姿を表す。銀月を鞘にしまったまま肩にポンポンと担ぎ、嬉しそうに笑みを浮かべている。
「貴方は?」
一角獣騎士団はレオから距離を取ったまま囲むように半円に広がり、全員一様に槍を構えている。
「会いたかったぜ……約半年前、おれを奴隷にして売ったのはお前らだろ」
◇
「街で戦闘が行われている様子は無いな」
「うん、わりかし静かだよ」
となるともうすでに街の外か、それともまだ接触していないか……
どちらにせよ早く見つけないと龍騎士団にハンターが倒されてしまったら面倒だ。あの刀の事もあるし……それにその逆も困る。
「よし、街の外に……」
「なぁさっきの見たか?」
不意に男の声が耳に入る。
見ると若い男女が反対方向へ向けて歩いていた。
「騎士団?」
「そうそう、慌てて街の外に出ていったけどなんかあったのかな?」
「でも街の外に行ったんでしょ?なら街の中は大丈夫よ」
「いやいや、もしかしたら例の魔族かも……」
「ちょっと、やめてよ」
次第に二人は遠くなり、話も聞こえなくなっていく。
だが十分話は聞こえた。
「エヴァ!」
「うん! 街の外だね」
◇
「奴隷? ……なんの事でしょう」
先頭に立つハルバーに向かってレオは銀月の切っ先を向ける。
「忘れたのなら思い出させてやるよ。至天破邪剣征流……」
「遅い!」
レオが構えに入った時、副団長のレイティスはレオの頭上を取っていた。両手で槍を振り上げ、レオめがけて一切の躊躇なく叩き落とす。
予想外の速度に若干目を見開きながらもばやく後ろに飛び退き、それを避ける。穂は地面に深く突き刺さっており、それをまともに食らっていれば致命傷だったと物語っていた。
「この風の一番槍と称された俺の実力、見せてくれる。ハルバー団長! 先に行ってください。ここで足止めを食らうわけには行きません」
「わかった、行くぞ!」
ハルバーとそれに続く団員達が馬車に戻り、再発の準備を始める。
「行かせるわけねぇだろ 突破の型 『突き立てる牙』!!」
レイティスに向けて突きを放つも、相手は普段から槍を持った者同士で訓練している。その程度の突きは容易に躱され、逆に槍が薙ぎ払われる。
「チッ……」
なんとか防御体制を取り、その薙ぎ払いを受けるがレイティスはそこから畳み掛けるように攻撃を繰り出す。槍を自由自在に操り、右から薙ぎ払ったかと思えば左から攻撃が飛び、無差別な連続の素早い突き、薙ぎ払いがレオを襲う。
「この程度ですか」
「至天破邪剣征流……」
「だから遅いと言っている!」
技を出そうとしたレオに再びレイティスの猛攻が襲う。
ほぼ全方向から飛んでくる攻撃に、浅い傷を増やしていたレオだが、しばらくすると一切の被弾がなくなる。
「動きが……変わった?」
「もうお前の動きは見切った。突破の型」
「馬鹿な!」
レオの言動と実際に当たらなくなっている攻撃に若干の焦りが生じ、一瞬の隙を作ってしまう。そこをレオは見逃さず、レイティスの腹に蹴りを入れる。
「な……剣士が蹴りだと……」
「戦いにルールなんてものはない! 『大空を舞う龍の轟爪』!」
満を持して抜いた銀月から斬撃が大砲の如く飛び、ちょうど出発しようとしていた馬の足元に直撃した。ハルバーの乗っていた馬だ。
「この……!!」
不意の蹴りでよろけたレイティスだが、すぐに槍を構え直しレオに向けて薙ぎ払う。
「至天破邪剣征流 突破の型 『虎武璃』!!」
が、それよりと早くレオの居合が炸裂し、レイティスは胴を袈裟斬りされて膝を付き、そして倒れる。鎧に守られ傷こそ無かったものの、その衝撃は意識を飛ばすには十分だった。
「お前なんぞに時間をかけてられるか。お前……さっさと俺と戦え」
「どうやら私が出るしかなさそうだな」
やれやれといった様子で馬を降り、槍をレオに向ける。
それに対抗するようにレオも闘志を放つ。馬車や馬の上にいた団員達もただならぬ緊張感に冷や汗が流れる。
「そういえば貴方の事、思い出しましたよ」
「あの時は腹減ってる時によくもやってくれ……」
「フッ……」
「…………ッ!!」
それは本当に一瞬、まばたき程の間にハルバーが動いた。ほぼ消えたに等しい速度でレオを通り過ぎる。直後レオの脇腹が裂け、血がドバっと垂れる。
あのレオが刀を抜く暇もなく斬られたのだ。
「レイティスと同じだと思わない事だ」
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