最弱属性魔剣士の雷鳴轟く

相鶴ソウ

181話 一角獣騎士団

「意気揚々と引き受けたのはいいが……」

「どうやってハンター探すの??」


 地獄に行っている間に地上は夜になっており、行動するにも動きにくい時間になってしまっていた。


「とりあえず、宿を探すか。シエラ達も明日には到着するはずだ それから事情を説明して探しても遅くはないだろう」

「うん、そうだね!」


 結局、表通りから離れた安い宿に泊まり、その日を終えた。先に着いているはずのレオ達と会えていないのは気になるが、ハンターの件もある。レオ達なら自分でもある程度なんとかできるはずだし、何よりハンターと騎士団を会わせるのはまずい。
 顔を出しても俺達だと気づかれ、フードを被って雷や氷を使えば指名手配犯と気づかれる。数年前の手配書でフードも被っているんだからバレないと高を括ってたが、よくよく考えれば帝国はこの手配書だけを頼りにしている。甘く見てはいけない。


「どうしたの?クロト」


 窓の外をじっと睨んで考え事をしていたのが不審に見えたのか、寝かけていたエヴァが起き上がる。


「いや、なんでもない。明日から忙しくなりそうだからもう寝よう」





 クロト達が滞在しているカサドルから数日かけて北西に進んだ所にあるアルバレス公爵領最大の都市、ケルターメン。
 今から四年近く前に四魔王リックとアリスによって襲撃され、街の一角が壊滅していたが、今では復興も終わっている。そして今、その街には一角獣ユニコーン騎士団が滞在している。
 一角獣ユニコーン騎士団。殆ど帝国におらず、デルタアール国王の命令のもと、大陸のあちこちに飛び回っていたのだが、今は新たな標的としてハンターの討伐を課せられ、このケルターメンまで帰ってきている。


「ハルバー団長! 準備終わりました!」


 黒い髪を長く伸ばし、前髪で片目が隠れている細身の男に、団員の一人が敬礼をしながら報告をする。両者ともに緑の鎧を身に着けており、肩の装飾には一角獣ユニコーンが描かれている。


「そうか、下がっていろ」

「はっ!」


 ケルターメンの街は街の中心に巨大なコロシアムがあり、それを中心に一番通りから八番通りまでの大きな通りで構成されている。その中の四番通り。そこに行列を作っているのは一角獣ユニコーン騎士団の馬車。総勢十台以上が一列に並んでいる。
 四番通りは住宅街が広がっている通りで、四番通りから外に出るのが一番カサドルに近い為、一角獣ユニコーン騎士団もここに集結している。


「ハルバー団長」

「レイティスか。どうした?」


 先頭の馬車で、馬の様子を見ていたハルバーに緑の髪を刈り込んだ少し若い男が声をかける。この男は副団長のレイティス。一角獣ユニコーン騎士団は他の二騎士団と違い、団員の使う武器が槍のみで構成されているのだが、その中でも風の一番槍と呼ばれる実力者である。


「今回の任務はあのハンターですか?」

「ああ、そうだ。ドラゴン騎士団と協力して奴を討伐する」

ドラゴン騎士団ですか。我々の出番はないかもしれませんね」

「その逆もあり得るがな。夜明けには出発する。今のうちに休んでおけ」

「はっ!」





「おい、本当に街あるんだろうな?」


 時間は進み、昼間。リュウが遠くに見たという証言をもとにリュウ達は進み既に数時間が経っているが、全くそんな気配はない。


「おかしいな……でもあるのは確かだよ」

「足が棒になりそうだわ」

「足は棒にならないよ?」


 リュウが大真面目に答えるが、サエもレオも無視してひたすら歩く。


「そもそもその街がカサドルかどうかはわからない」

「この際街なら何でもいいわよ」

「良くないよ!クロト達に会えなかったら……」

「クロト?」

「仲間の一人!」

「ああ、そうなの。でもケルターメンに着けばカサドルも近いわよ」

「リュウ、もう一回見てこい」

「わ、わかったよ……」


 竜鎧装りゅうがいそうを発動させ、リュウは飛翔する。こうやって位置を確認しながら進んでいるが、そもそもアジトから進む方向が間違っていたらしく、大きく遠回りしていた。


「ところで何を目的に旅してるの? 貴方達」

「おれは強い奴と戦う為。クロトは村を襲った奴を倒す為とか言ってたかな」

「へぇ……」

「おーーーい!!」


 話しているうちにリュウが地上へ戻ってくる。


「街はこの進行方向で間違いないんだけど……」

「だけど?」

「大量の馬車が走ってるんだ」

「馬車?」

「うん、乗ってる人はみんな緑の鎧を着けてて……」

「緑の鎧?」


 レオが「緑の鎧」という言葉に敏感に反応する。


「リュウ、おれをそこまで連れて行け」

「えぇ!?」

「お前はそこで待ってろ。行けっ!」


 レオはリュウの背中に飛び乗ると、リュウはわけもわからずとりあえず従って飛び上がった。一人残されたサエはあまりにも一瞬の出来事に空を見上げたまま固まる。





 カサドル到着から二日目。今日はシエラ達が到着するはずだ。


「とりあえず宿を出てきたが、どこを探したものか……」

「全く情報ないもんね」

ドラゴン騎士団に聞けば何かわかるだろうけど……」

「それもできないよね」


 やる気とは裏腹に手がかりが無い。一通りあれでもないこうでもないと議論したあと、一先ず情報の集まる冒険者ギルドに向かうことにした。


「ついでにレオやシエラ達が来てないか見に……」

「お願いです! あの人を、うちの主人を助けてください!」


 冒険者ギルドの入り口で声が聞こえ、足を止めた。

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