最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
180話 第三のオリハルコン
クロト達が地獄へ行っている頃、レオ達は……
「いくらなんでもおかしいわ」
やっとの思いで森を抜けた。とは言え約一日近く森の中を彷徨っており、もう既に日は沈んでかなりの時間が経っている。
森を出たのはいいが、辺りは真っ暗でいくらリュウが上から見てもどこにいるかわからないだろう。三人とも森を背後に途方に暮れている。
「俺が上から見てたのになんで迷ったんだろ……?」
「嫌な気配ならずっとしてたぞ」
「え?なんでそれをもっと早く言わないのよ!」
「気配の正体が掴めなかった」
「それでも言いなさいよ!」
「そ、そんな事より早く離れない……?この森」
冷静……に見えるレオとサエに比べてリュウは謎の気配から逃げたそうに訴える。だがリュウの期待に反してレオは首を横に振る。
「ここで一晩明かす」
「なんでよ!? 早く離れようよ!! この森、変だって!嫌な気配するって言ってたじゃん!」
「夜移動する為の装備は、全部馬車の中だ」
すごく残念そうにレオが首を振る。
明かりすら持っていない為、真っ直ぐ歩く事すら夜では厳しい。下手に進んで迷うよりはここで朝が来るのを待つのが得策だろう。
「馬鹿なの!? なんで置いてくるの!? 馬鹿なの!?」
「二回も馬鹿と言うな、とにかく夜営の準備をしろ。見張りはしておいてやる」
終始文句を呟いていたリュウも疲れていたのか早々に飯を食べ終わると眠りについた。ビビっている割には大した根性である。
レオは胡座をかき、銀月を地面に立てながら座っている。周囲の警戒は怠っていない。
サエも毛布に包まりながら寝っ転がっている。そんなこんなでレオ達の一日も終わり、深夜に差し掛かろうとしている頃。
「……そういえばさ」
焚き火も消え、辺りも真っ暗闇に包まれた中でサエが独り言のように呟く。
「なんだ、起きてたのか」
「ちょっと、眠れなかったの」
「そうか……それで、なんだ?」
「仲間と合流って言ってたけど、仲間って他にもたくさんいるの?」
「俺とこいつを合わせて六人だ。変な奴と変な奴、あとは変な奴に変な奴が居るな」
「ふふっ、変な奴しか居ないじゃない」
レオは本心から言ったのだが、サエは「レオって意外に冗談とか言うんだ」とおかしくて笑っている。
「そっか、仲間か……」
「……変な奴ばっかりだが、仲間を裏切るような奴は一人も居ない。それだけは確かだ」
「……うん」
「もう寝……!? なんだ?」
レオの表情が険しくなり、銀月を握る手に力が入る。サエも感じ取り、起き上がって周囲に警戒する。単純な気配ならサエは気づけなかっただろう。
だが“それ”は目に見えて二人の前に現れた。
「これは……」
「霧? よね?」
突然発生した霧が二人を、いや、リュウも含めて三人を包み込む。霧は森から発生しているらしく、どんどん濃くなっていく。
「あの嫌な気配もするな。いつでも戦えるように……おい、大丈夫か?」
「う、うん……」
霧に警戒して立ち上がった二人だが、徐々に力が抜けていき、サエは木に寄りかかっている。レオも確実に力は抜けているはずだが、特に効いていない様子で刀を構えている。
『俺の霧の中デ……マダソんナに動ケるのカ』
霧の中から声が響く。所々が歪で低い声だ。木々の間からぼやけた輪郭の人が現れる。はっきりとした姿は見えない。だが、そこには確実にいる。
「至天破邪剣征流 相殺の型」
『睡眠霧』
霧が一際濃くなり、二人を急激な睡魔が襲う。
謎の男による霧の攻撃。意識をしっかりと保っていたレオですら瞼が重くなっていく。
「く、そ……」
そのまま二人は眠りに落ち、次第に霧も晴れていった。
◇
「…………い ……おい! おーーーい!!!」
耳元で大声で叫ばれ、レオとサエは目を覚ます。太陽が既に空を照らしており、既に昼間近くになっている。
「あ、ああ……リュウか」
「『リュウか……』じゃないよ!! なんで寝てんの!? えぇ!? 見張りするって言ったじゃん! なんで寝て……ふぎゅ」
鬱陶しく感じたのかレオはリュウの顔を押さえつけ、サエの方を見る。
「あいつ、何だったんだ……?」
「……推測でしかないけど、私が思いつくのは〈正体不明の霧〉」
「え?何それ? なんの話?」
「オリハルコン級……」
「流石に知ってるのね」
サエは冒険者で名を上げると決めた時に大陸にいるオリハルコンについては調べていた。レオもナイアリスからある程度の情報は聞いている。
「自在に霧を操る……と言われているミストなら説明が付くじゃない?」
「ねぇ! なんの話なわけ!?!?」
「後で話してやる、とりあえず出発しよう。ずいぶんと遅れた」
「えぇ!? 話せよ!今! 俺まだ見張りサボったの許してないからな!?」
「いくらなんでもおかしいわ」
やっとの思いで森を抜けた。とは言え約一日近く森の中を彷徨っており、もう既に日は沈んでかなりの時間が経っている。
森を出たのはいいが、辺りは真っ暗でいくらリュウが上から見てもどこにいるかわからないだろう。三人とも森を背後に途方に暮れている。
「俺が上から見てたのになんで迷ったんだろ……?」
「嫌な気配ならずっとしてたぞ」
「え?なんでそれをもっと早く言わないのよ!」
「気配の正体が掴めなかった」
「それでも言いなさいよ!」
「そ、そんな事より早く離れない……?この森」
冷静……に見えるレオとサエに比べてリュウは謎の気配から逃げたそうに訴える。だがリュウの期待に反してレオは首を横に振る。
「ここで一晩明かす」
「なんでよ!? 早く離れようよ!! この森、変だって!嫌な気配するって言ってたじゃん!」
「夜移動する為の装備は、全部馬車の中だ」
すごく残念そうにレオが首を振る。
明かりすら持っていない為、真っ直ぐ歩く事すら夜では厳しい。下手に進んで迷うよりはここで朝が来るのを待つのが得策だろう。
「馬鹿なの!? なんで置いてくるの!? 馬鹿なの!?」
「二回も馬鹿と言うな、とにかく夜営の準備をしろ。見張りはしておいてやる」
終始文句を呟いていたリュウも疲れていたのか早々に飯を食べ終わると眠りについた。ビビっている割には大した根性である。
レオは胡座をかき、銀月を地面に立てながら座っている。周囲の警戒は怠っていない。
サエも毛布に包まりながら寝っ転がっている。そんなこんなでレオ達の一日も終わり、深夜に差し掛かろうとしている頃。
「……そういえばさ」
焚き火も消え、辺りも真っ暗闇に包まれた中でサエが独り言のように呟く。
「なんだ、起きてたのか」
「ちょっと、眠れなかったの」
「そうか……それで、なんだ?」
「仲間と合流って言ってたけど、仲間って他にもたくさんいるの?」
「俺とこいつを合わせて六人だ。変な奴と変な奴、あとは変な奴に変な奴が居るな」
「ふふっ、変な奴しか居ないじゃない」
レオは本心から言ったのだが、サエは「レオって意外に冗談とか言うんだ」とおかしくて笑っている。
「そっか、仲間か……」
「……変な奴ばっかりだが、仲間を裏切るような奴は一人も居ない。それだけは確かだ」
「……うん」
「もう寝……!? なんだ?」
レオの表情が険しくなり、銀月を握る手に力が入る。サエも感じ取り、起き上がって周囲に警戒する。単純な気配ならサエは気づけなかっただろう。
だが“それ”は目に見えて二人の前に現れた。
「これは……」
「霧? よね?」
突然発生した霧が二人を、いや、リュウも含めて三人を包み込む。霧は森から発生しているらしく、どんどん濃くなっていく。
「あの嫌な気配もするな。いつでも戦えるように……おい、大丈夫か?」
「う、うん……」
霧に警戒して立ち上がった二人だが、徐々に力が抜けていき、サエは木に寄りかかっている。レオも確実に力は抜けているはずだが、特に効いていない様子で刀を構えている。
『俺の霧の中デ……マダソんナに動ケるのカ』
霧の中から声が響く。所々が歪で低い声だ。木々の間からぼやけた輪郭の人が現れる。はっきりとした姿は見えない。だが、そこには確実にいる。
「至天破邪剣征流 相殺の型」
『睡眠霧』
霧が一際濃くなり、二人を急激な睡魔が襲う。
謎の男による霧の攻撃。意識をしっかりと保っていたレオですら瞼が重くなっていく。
「く、そ……」
そのまま二人は眠りに落ち、次第に霧も晴れていった。
◇
「…………い ……おい! おーーーい!!!」
耳元で大声で叫ばれ、レオとサエは目を覚ます。太陽が既に空を照らしており、既に昼間近くになっている。
「あ、ああ……リュウか」
「『リュウか……』じゃないよ!! なんで寝てんの!? えぇ!? 見張りするって言ったじゃん! なんで寝て……ふぎゅ」
鬱陶しく感じたのかレオはリュウの顔を押さえつけ、サエの方を見る。
「あいつ、何だったんだ……?」
「……推測でしかないけど、私が思いつくのは〈正体不明の霧〉」
「え?何それ? なんの話?」
「オリハルコン級……」
「流石に知ってるのね」
サエは冒険者で名を上げると決めた時に大陸にいるオリハルコンについては調べていた。レオもナイアリスからある程度の情報は聞いている。
「自在に霧を操る……と言われているミストなら説明が付くじゃない?」
「ねぇ! なんの話なわけ!?!?」
「後で話してやる、とりあえず出発しよう。ずいぶんと遅れた」
「えぇ!? 話せよ!今! 俺まだ見張りサボったの許してないからな!?」
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