最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
152話 竜の匂い
「クロト……とりあえずその量の木材を買ってくるとは思わなかった。ご苦労さま」
「ああ」
「いやー、流石に疲れた」
あの後、材木屋で持てる分の木材を買い、帰ってきた。
持てる分とは、俺が頑張って大きめの角材を四個両脇に抱え、リュウが両手に竜鎧装を発動させ持ち上げた三十個。つまり三十四個の角材の事である。肋骨に響く為、あまり無理はできなかったが、まぁこれだけあれば暫くはもつだろう。
一仕事終えたと俺とリュウは昨日できたばかりのテーブルへ突っ伏して休憩を取る。
「だか……まずそいつは誰だ? そしてなぜその量の木材を平然と持って帰ってきた」
「多かったか?」
「いや、ありがたいよ。ありがたいけど……」
ヴァランは呆気に取られすぎているのか開いた口が閉じていない。まぁ、リュウの説明は必要か。
「レオ!シエラ! 少し話があるから来てくれ」
◇
「なるほど、事情はわかったし木材の件も感謝はする」
事の経緯を話し終えると、一番にヴァランが口を開いた。今はもう不信感もなさそうだ。
「お前、強いなら俺と戦え」
レオはいつも通りだ。
「この人馬鹿なの? 俺弱いって言ったじゃん」
「誰が馬鹿だ!」
「どっちもどっちだろ」
「「ああ?」」
めんどくさい奴ら……レオは普段通りとして、シエラとリンリは大丈夫だろうか。寝ているとは言ってもエヴァに何も聞いてないのも悪い。とりあえずここは……
「クロトさん」
「どうした? リンリ」
「しばらく考えていましたが、私もクロトさん達の旅に同行します」
「……本当か?」
「はい、アリス様……いや、アリスに今一度問いただします。そして、フロリエルは殺されましたが必ず……必ずエンリの仇を取ります」
「わかった。よろしく頼むよ」
俺とリンリが真剣に話している隣で既に戦いが勃発しようとしている。
「至天破邪剣征流……」
「ちょ、ちょっと待ってよ え?やるの?本気? クロト、この人目がやばい!ガチだ!」
「レオはいつでもガチでありんす」
「助け……あ!」
「薙は……」
「竜の匂い!」
何かに気づいたようにリュウが立ち上がる。そういえば、ロックドラゴンを倒したのはレオだよな。
「刀のお前と悪人面のお前、ロックドラゴンとグラキエースドラゴンの匂いがするぞ」
「ハッハッハッ。悪人面だってよ、誰だ?」
「お前だよマルス」
「え?」
グラキエースドラゴンは気絶させただけだが、倒したことになるんだろうか。まぁ実際竜の匂いがしてるならそうなんだろうけど。
「すごい……七色の竜が既に五頭も倒されてるのか……」
「五頭? オレ達が倒したのは炎、氷、岩の三頭だけだぞ」
「俺のお父さんが先代竜鎧装の使い手なんだけど、その時に飛竜ワイバーンは倒してるんだ」
「へぇ、じゃあそこに純竜のドラゴンも合わせて五頭か」
「しかし、俺からグラキエースドラゴンやレオからロックドラゴンの匂いがするのはいいが、いいのか? お前の話じゃ倒して鎧に戻すのが使命なんだろ?」
「本当は倒したドラゴンの肉体の一部を体内に取り入れればいいんだけど……もしかしたら倒したやつでもいいのかな? ちょっとお前ら三人腕一本食わせてくれない?」
「「「アホか!!」」」
「……俺も人なんか食いたくない」
肉体の一部を体内に、か……
大小問わないならほんの欠片ぐらい……いや、人を食べるのを見たくない。
「血はどうでありんす? 血なら抵抗も少しは……」
「血でも行けるのかな、試したことないからわからないけど」
「とりあえずやってみろよ。血なら取り入れやすいだろう」
「そうだね、ありがとう!シエラちゃん」
シエラにニコニコとお礼を言ったあと突然の真顔で俺達を見てくる。恐らくはさっさと血を寄越せって事なんだろうけど……
「血がほしいならおれと勝負だ」
「なんでそうなるの!……でも仕方ない。わかったよ!!」
ギャーギャー喚くし、何かと頼りないのかと思ったが、やる時はやるのか。使命とか言ってるだけの事はある。
俺はシュデュンヤーを少しだけ抜いて親指を押し付け、薄く斬る。血が流れたらリュウへ向けて手を振り、血を飛ばす。
「リュウ!」
「な……んぅ!」
喉の奥に血が入り一瞬むせそうになるが血は体内に入っただろう。マルスも同じようにしてリュウへ血を分ける。
「終わったか? なら行くぞ」
「すげぇ……力が溢れてくるみたいだ」
「至天破邪剣征流 薙払の型」
「来い! 竜鎧装!! 全身!」
レオは抜刀の構えを取り、リュウは右手を掲げる。
すると半透明のドラゴンがリュウの背後に現れ、そのドラゴンがリュウへ纏わりつき、実体化。鎧へと変化した。
「あれが竜鎧装か……」
「強そうでありんすね」
見た目は全身をみっちりと覆う灰色の鎧。要所要所が尖っており、“竜鎧装”と名乗るに相応しい見た目だ。特に頭部はドラゴンによく似ており、中々かっこいい。
「すごい……これがサラマンダーとグラキエースドラゴンの力……来い、竜牙閃!」
リュウが右手を伸ばして呼ぶと細長い棒状の光が現れる。光を掴むと、掴んだ部分から実体化していき、一本の槍となる。
「『麒麟駆け』!!」
「よーし……って、え、想像の三倍怖いんだけどっ!!」
「ああ」
「いやー、流石に疲れた」
あの後、材木屋で持てる分の木材を買い、帰ってきた。
持てる分とは、俺が頑張って大きめの角材を四個両脇に抱え、リュウが両手に竜鎧装を発動させ持ち上げた三十個。つまり三十四個の角材の事である。肋骨に響く為、あまり無理はできなかったが、まぁこれだけあれば暫くはもつだろう。
一仕事終えたと俺とリュウは昨日できたばかりのテーブルへ突っ伏して休憩を取る。
「だか……まずそいつは誰だ? そしてなぜその量の木材を平然と持って帰ってきた」
「多かったか?」
「いや、ありがたいよ。ありがたいけど……」
ヴァランは呆気に取られすぎているのか開いた口が閉じていない。まぁ、リュウの説明は必要か。
「レオ!シエラ! 少し話があるから来てくれ」
◇
「なるほど、事情はわかったし木材の件も感謝はする」
事の経緯を話し終えると、一番にヴァランが口を開いた。今はもう不信感もなさそうだ。
「お前、強いなら俺と戦え」
レオはいつも通りだ。
「この人馬鹿なの? 俺弱いって言ったじゃん」
「誰が馬鹿だ!」
「どっちもどっちだろ」
「「ああ?」」
めんどくさい奴ら……レオは普段通りとして、シエラとリンリは大丈夫だろうか。寝ているとは言ってもエヴァに何も聞いてないのも悪い。とりあえずここは……
「クロトさん」
「どうした? リンリ」
「しばらく考えていましたが、私もクロトさん達の旅に同行します」
「……本当か?」
「はい、アリス様……いや、アリスに今一度問いただします。そして、フロリエルは殺されましたが必ず……必ずエンリの仇を取ります」
「わかった。よろしく頼むよ」
俺とリンリが真剣に話している隣で既に戦いが勃発しようとしている。
「至天破邪剣征流……」
「ちょ、ちょっと待ってよ え?やるの?本気? クロト、この人目がやばい!ガチだ!」
「レオはいつでもガチでありんす」
「助け……あ!」
「薙は……」
「竜の匂い!」
何かに気づいたようにリュウが立ち上がる。そういえば、ロックドラゴンを倒したのはレオだよな。
「刀のお前と悪人面のお前、ロックドラゴンとグラキエースドラゴンの匂いがするぞ」
「ハッハッハッ。悪人面だってよ、誰だ?」
「お前だよマルス」
「え?」
グラキエースドラゴンは気絶させただけだが、倒したことになるんだろうか。まぁ実際竜の匂いがしてるならそうなんだろうけど。
「すごい……七色の竜が既に五頭も倒されてるのか……」
「五頭? オレ達が倒したのは炎、氷、岩の三頭だけだぞ」
「俺のお父さんが先代竜鎧装の使い手なんだけど、その時に飛竜ワイバーンは倒してるんだ」
「へぇ、じゃあそこに純竜のドラゴンも合わせて五頭か」
「しかし、俺からグラキエースドラゴンやレオからロックドラゴンの匂いがするのはいいが、いいのか? お前の話じゃ倒して鎧に戻すのが使命なんだろ?」
「本当は倒したドラゴンの肉体の一部を体内に取り入れればいいんだけど……もしかしたら倒したやつでもいいのかな? ちょっとお前ら三人腕一本食わせてくれない?」
「「「アホか!!」」」
「……俺も人なんか食いたくない」
肉体の一部を体内に、か……
大小問わないならほんの欠片ぐらい……いや、人を食べるのを見たくない。
「血はどうでありんす? 血なら抵抗も少しは……」
「血でも行けるのかな、試したことないからわからないけど」
「とりあえずやってみろよ。血なら取り入れやすいだろう」
「そうだね、ありがとう!シエラちゃん」
シエラにニコニコとお礼を言ったあと突然の真顔で俺達を見てくる。恐らくはさっさと血を寄越せって事なんだろうけど……
「血がほしいならおれと勝負だ」
「なんでそうなるの!……でも仕方ない。わかったよ!!」
ギャーギャー喚くし、何かと頼りないのかと思ったが、やる時はやるのか。使命とか言ってるだけの事はある。
俺はシュデュンヤーを少しだけ抜いて親指を押し付け、薄く斬る。血が流れたらリュウへ向けて手を振り、血を飛ばす。
「リュウ!」
「な……んぅ!」
喉の奥に血が入り一瞬むせそうになるが血は体内に入っただろう。マルスも同じようにしてリュウへ血を分ける。
「終わったか? なら行くぞ」
「すげぇ……力が溢れてくるみたいだ」
「至天破邪剣征流 薙払の型」
「来い! 竜鎧装!! 全身!」
レオは抜刀の構えを取り、リュウは右手を掲げる。
すると半透明のドラゴンがリュウの背後に現れ、そのドラゴンがリュウへ纏わりつき、実体化。鎧へと変化した。
「あれが竜鎧装か……」
「強そうでありんすね」
見た目は全身をみっちりと覆う灰色の鎧。要所要所が尖っており、“竜鎧装”と名乗るに相応しい見た目だ。特に頭部はドラゴンによく似ており、中々かっこいい。
「すごい……これがサラマンダーとグラキエースドラゴンの力……来い、竜牙閃!」
リュウが右手を伸ばして呼ぶと細長い棒状の光が現れる。光を掴むと、掴んだ部分から実体化していき、一本の槍となる。
「『麒麟駆け』!!」
「よーし……って、え、想像の三倍怖いんだけどっ!!」
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
20
-
-
755
-
-
125
-
-
2
-
-
26950
-
-
37
-
-
147
-
-
1
-
-
353
コメント