最弱属性魔剣士の雷鳴轟く

相鶴ソウ

149話 夢

「……ッ!! なんだ……今の……」


 デルダインとの戦いから三日目の夜。ようやく傷の痛みもましになってきた頃、俺は突然目を覚ました。
 長い夢を見ていた気がずる。ローガン師匠がいたような……頭が痛い。何だったんだろう。今のは……


「……スゥ……スゥ……」


 隣で眠るエヴァは未だ目を覚まさない。考えても仕方ない、か。明日も早いし寝よう。





「やめろっ!」


 リックが机を拳で叩き、リヴァの話が止まる。


「そんな話はどうでもいい」

「ここからだと言うのに……」

「ここへ来て何度も聞かされた。もういい。それより、今まで聞いてこなかったが、なぜお前らはジガルゼルド様の下についているんだ?」

「ふむ……そうじゃな。わしは元々老後をのんびりと暮らしておった。だが、四十年前の戦いで娘、息子、そしてその家族……更には孫までもを人間に殺された。その復讐故じゃ」

「私は元々ジガルゼルド様に使えていたから、そのまま成り行きでって感じね。フロリエル君は四十年前の戦いで捕虜として人間に捕まって。何をしても再生する体を人間が面白がって尋問と称して散々いたぶったそうよ。それで人間への憎悪が爆発し、そこをジガルゼルド様に拾われたのよね」

「……そうか」

「なんじゃ?」

「いや、元人間の俺から言う事は無いだろう」

「ふぉっふぉっふぉっ……リックもそろそろ完全な魔族になる頃かもしれんぞ」

「なに?」

「いつまでもハーフの期間は続かないわ。いずれ魔族の部分が人族の部分を食い潰し、完全な魔族となるわ」

「……そうか。異能が使えるようになるならそれはそれでいい」

「集まっているな」


 丁度そこへ、フランケンポールの根城へ行っていたジガルゼルドが帰還した。


「これからの方針について伝える。人を集めろ」





 奇妙な夢を見てから更に四日、デルダインと戦ってから一週間が経った頃、重症組も全員が目を覚まし、動ける程度には回復していた。
 そして現在はブルーバードの再建工事をしている。俺も含めて戦った六人はヴァランとレッグに平謝りだったが、ヴァランも事情を知っているので許してくれた。レッグも地下の酒が無事だったらしく、特に怒っている様子はない。


 再建工事と言っても、ヴァランが街の大工に頼むのを頑なに嫌がった為、俺達素人集団が酒場一軒を建てる事になった。
 費用はマスターボウの好意で〈シルク・ド・リベルター〉が持ってくれ、何気に稼いでいたレオもいくらか出したそうだ。


「さて、今日もやるか」

「おう、クロト! さっさと手伝いやがれ」

「わかってるよ」


 昼間は〈シルク・ド・リベルター〉が仕事の為参加できない。エリックやビリー達飲んだくれ集団も夜には来てくれるが、昼間は来れない。
 だから俺達一行四人とナイアリス、ヴァラン、レッグ。アジェンダとふらりと帰ってきたマルスの計九人で建て直しをしている。夜は人が結構集まるので、壁や屋根を直しているが、昼間は地味なところだ。
 昨日は床の張り替えがやっと終わったところ。今日はカウンターや棚、机に椅子を作る。


「おいマルス、木材どこだ?」

「その辺にあるだろ」

「その辺ってどこだよ」


 修行もしたいが、今はこっちが優先。


 俺は木材が積んである場所から適当なのを引っ張り出し、自分の前に並べる。木材に釘を打ち込んで形を作るのはヴァラン、レッグ、マルスの仕事。細かく削ったりや装飾を付けたりするのはシエラが得意らしいのでシエラの仕事だ。リンリもそっちを手伝っている。
 俺、レオ、ナイアリス、アジェンダはひたすら木材を斬る。それぞれ使うものによってサイズもバラバラ。今ではある程度感覚で斬れるものの、何日かは苦労した。


「フッ……っと、ほんでハッ……っと……」


 椅子の足になる部分を四等分に斬る。これをマルスに渡して、次は椅子の座る部分を斬る。これの繰り返しな為、単調ではある。力仕事なので基礎体力を付けるにはいい機会かもしれないが、根っからの戦闘狂であるレオは不満げだ。
 アジェンダは豪快なもので、巨斧で積んである木材をまとめて両断している。
これでサイズが正確だからまたすごい。


「レオ! どこ行こうとしてるんだ」


 さりげなーくこの場を離れようとしていたレオを呼び止める。


「……わかってる」


 相当退屈らしい。
 レオには悪いがこれも原因を辿れば俺達のせい。早く仕事すれば早く再建が完了する。今は黙ってやる事をやる。

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