最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
148話 ローガンという男
「逃げろ! ミノタウロスだ!」
「西へ! 東はだめだ!西へ逃げろ!」
その日、リブ村が一級魔物ミノタウロスに襲撃された日。
東からジガルゼルドの放ったミノタウロスは現れた。家を薙ぎ倒し、人を踏み潰し、破壊の限りを尽くした。その一角では……
「じーさん!逃げよう!」
「リック、クロトはどうしたんじゃ?」
「わからないけどさっきお父さんの手伝いで森に行くって。だから多分まだミノタウロスには襲われてない。早く逃げようってば」
「うむ、リックや。先に逃げなさい。わしはまだやることがある」
「何言ってるんだよ!」
「この能力……ジガルゼルドじゃろう。わしは皆が逃げれるように時間を稼ぐ」
「そりゃじーさんは強いけどさ、流石にあの数は無理だよ!」
袖を引っ張るリックの両肩に手を乗せ、リックと同じ目線になるまでローガンは腰を落とす。
「リック、人には必ず“その時”が来る。流れ者のわしがここに住んでいたのはこの時を待っていたからじゃろう。だからわしはここで役目を果たす。リックは逃げろ!」
泣きじゃぐりながらもローガンの話を聞いていたリックの目に三人の影が映る。屋根の更に上を飛び、こちらへ近づいてくる影が。
「それは違うぞ。ローガン・ボルフェノ」
「来たか……ジガルゼルド」
ローガンはゆっくりと立ち上がり、後ろを振り返る。
アリスの土術によって浮かした土の上に三人が乗っていた。当時の四魔王デルドラ、そしてアリス。真ん中に立つのは大魔人ジガルゼルド。
「この村へはお前を消しに来た。お前がここに居たからこの村は襲われたんだ」
「……リック、行け!」
「……は、早く来てくれよ! “師匠”!」
リックはジリジリと数歩後ずさり、一気に駆け出した。
「師匠か……生き延びてくれ リック、クロト……」
「なんだ、孫でもいたのか?」
「いや、村の子供じゃ。わしはここにおる、この村からは手を引け!」
「それはできない相談だ。こんなに負のエネルギーが溜まってる」
ジガルゼルドは黒い魔石を取り出す。魔石は一人でに浮き、ジガルゼルドの右手の中で浮遊する。
「なんじゃ、それは」
「負の感情を貯め込む魔石さ。気にしなくていい」
「……お主達はここで殺す。四十年前果たせなかった約束、ここで果たす」
「老いたお前に全力を出すのも酷だろう、行け」
ジガルゼルドの合図で両サイドの家からミノタウロスが現れる。強引に来たせいで家が崩れている。
「ギャオオオオオオ」
「ブオオオオオオ」
素手で迫るミノタウロスだが、ローガンは動かない。そしてあと数センチで触れると言う時、ミノタウロスの首が落ちた。
「いくら老いたと言っても、この程度でわしを止めれると思っていたのか? ジガルゼルド」
「フッ……やはり強いな。デルドラ、やれるか?」
「任せてくだせぇよ。ジガルゼルド様。俺があんなじじい、五秒で潰してきまさぁ」
浮遊する土から飛び降りたのは銀髪を刈り上げている男、デルドラ。武器らしきものは持っていないが、この男に武器は必要ない。
「行くぜぇじじい」
「…………遅い」
デルドラが異能を発動しようと両腕を掲げた時、その腕が両方地面に落ちた。既に斬られていたのだ。
「……!? な、何だこいつ」
「ハァ……!」
デルドラのすぐ隣で剣を振り上げていたローガンが剣を振り下ろす。デルドラの首は驚愕の表情を浮かべながら宙を飛んだ。
「デルドラ!?」
「落ち着け、アリス。相手はローガン・ボルフェノ。もう少し腕が鈍ってるかと思ったが、まだまだ健在か?」
「おかげさまでのぉ」
ローガンは剣先をジガルゼルドに向け、左手を柄に添える。空気感がガラッと変わり、剣が少しキラキラと輝きを帯びる。
「またその技か」
「忘れてはなさそうじゃな。四十年前、お主の腹に穴を開けた技じゃ」
「忌々しい……」
「奥義、狼……」
「土術 土牢!」
アリスの詠唱で地面が盛り上がり、ローガンの下半身に食らいつく。魔力で凝縮された土が足に纏わりつき、思わずローガンは集中が切れる。
「やはり老いたか? 昔のお前なら避けれていただろう」
その場の緊張感が解け、剣の発光も止まる。
「はぁ……はぁ……技を出してもいないのに息切れとは……そう言うお主らは何も変わらんのぉ」
「魔族の寿命は妖精族を次いで生物の中で二番目。四十年程度では何も変わらないさ」
ローガンは下半身を土に掴まれたまま剣を鞘に戻す。
「諦めたのか? しかし、四魔王を一人削られた。やはりお前には散々な目に合わせられるようだ。デルドラ……お前の死は無駄ではない お前を殺したことで体力を使い、今この状態があるわけだからな」
「今更この体ではお主は殺せない……じゃが、わしの意志は必ずどこかで繋がる」
「お前にはこいつの力を見せてやる。その減らず口もきけなくなるほどの絶望をな」
ジガルゼルドの掲げた右手の上で魔石が光る。
黒い光を放ちながら、魔石からどす黒い魔力が漏れ出す。
「リック、クロト……この技はお主らの訓練中に教えた。後は気づけ……どこかで知れ……この技を……わしはここまでじゃが、わしの意志、想いは……頼んだぞ」
「死ねぇ! ローガン・ボルフェノ!」
「西へ! 東はだめだ!西へ逃げろ!」
その日、リブ村が一級魔物ミノタウロスに襲撃された日。
東からジガルゼルドの放ったミノタウロスは現れた。家を薙ぎ倒し、人を踏み潰し、破壊の限りを尽くした。その一角では……
「じーさん!逃げよう!」
「リック、クロトはどうしたんじゃ?」
「わからないけどさっきお父さんの手伝いで森に行くって。だから多分まだミノタウロスには襲われてない。早く逃げようってば」
「うむ、リックや。先に逃げなさい。わしはまだやることがある」
「何言ってるんだよ!」
「この能力……ジガルゼルドじゃろう。わしは皆が逃げれるように時間を稼ぐ」
「そりゃじーさんは強いけどさ、流石にあの数は無理だよ!」
袖を引っ張るリックの両肩に手を乗せ、リックと同じ目線になるまでローガンは腰を落とす。
「リック、人には必ず“その時”が来る。流れ者のわしがここに住んでいたのはこの時を待っていたからじゃろう。だからわしはここで役目を果たす。リックは逃げろ!」
泣きじゃぐりながらもローガンの話を聞いていたリックの目に三人の影が映る。屋根の更に上を飛び、こちらへ近づいてくる影が。
「それは違うぞ。ローガン・ボルフェノ」
「来たか……ジガルゼルド」
ローガンはゆっくりと立ち上がり、後ろを振り返る。
アリスの土術によって浮かした土の上に三人が乗っていた。当時の四魔王デルドラ、そしてアリス。真ん中に立つのは大魔人ジガルゼルド。
「この村へはお前を消しに来た。お前がここに居たからこの村は襲われたんだ」
「……リック、行け!」
「……は、早く来てくれよ! “師匠”!」
リックはジリジリと数歩後ずさり、一気に駆け出した。
「師匠か……生き延びてくれ リック、クロト……」
「なんだ、孫でもいたのか?」
「いや、村の子供じゃ。わしはここにおる、この村からは手を引け!」
「それはできない相談だ。こんなに負のエネルギーが溜まってる」
ジガルゼルドは黒い魔石を取り出す。魔石は一人でに浮き、ジガルゼルドの右手の中で浮遊する。
「なんじゃ、それは」
「負の感情を貯め込む魔石さ。気にしなくていい」
「……お主達はここで殺す。四十年前果たせなかった約束、ここで果たす」
「老いたお前に全力を出すのも酷だろう、行け」
ジガルゼルドの合図で両サイドの家からミノタウロスが現れる。強引に来たせいで家が崩れている。
「ギャオオオオオオ」
「ブオオオオオオ」
素手で迫るミノタウロスだが、ローガンは動かない。そしてあと数センチで触れると言う時、ミノタウロスの首が落ちた。
「いくら老いたと言っても、この程度でわしを止めれると思っていたのか? ジガルゼルド」
「フッ……やはり強いな。デルドラ、やれるか?」
「任せてくだせぇよ。ジガルゼルド様。俺があんなじじい、五秒で潰してきまさぁ」
浮遊する土から飛び降りたのは銀髪を刈り上げている男、デルドラ。武器らしきものは持っていないが、この男に武器は必要ない。
「行くぜぇじじい」
「…………遅い」
デルドラが異能を発動しようと両腕を掲げた時、その腕が両方地面に落ちた。既に斬られていたのだ。
「……!? な、何だこいつ」
「ハァ……!」
デルドラのすぐ隣で剣を振り上げていたローガンが剣を振り下ろす。デルドラの首は驚愕の表情を浮かべながら宙を飛んだ。
「デルドラ!?」
「落ち着け、アリス。相手はローガン・ボルフェノ。もう少し腕が鈍ってるかと思ったが、まだまだ健在か?」
「おかげさまでのぉ」
ローガンは剣先をジガルゼルドに向け、左手を柄に添える。空気感がガラッと変わり、剣が少しキラキラと輝きを帯びる。
「またその技か」
「忘れてはなさそうじゃな。四十年前、お主の腹に穴を開けた技じゃ」
「忌々しい……」
「奥義、狼……」
「土術 土牢!」
アリスの詠唱で地面が盛り上がり、ローガンの下半身に食らいつく。魔力で凝縮された土が足に纏わりつき、思わずローガンは集中が切れる。
「やはり老いたか? 昔のお前なら避けれていただろう」
その場の緊張感が解け、剣の発光も止まる。
「はぁ……はぁ……技を出してもいないのに息切れとは……そう言うお主らは何も変わらんのぉ」
「魔族の寿命は妖精族を次いで生物の中で二番目。四十年程度では何も変わらないさ」
ローガンは下半身を土に掴まれたまま剣を鞘に戻す。
「諦めたのか? しかし、四魔王を一人削られた。やはりお前には散々な目に合わせられるようだ。デルドラ……お前の死は無駄ではない お前を殺したことで体力を使い、今この状態があるわけだからな」
「今更この体ではお主は殺せない……じゃが、わしの意志は必ずどこかで繋がる」
「お前にはこいつの力を見せてやる。その減らず口もきけなくなるほどの絶望をな」
ジガルゼルドの掲げた右手の上で魔石が光る。
黒い光を放ちながら、魔石からどす黒い魔力が漏れ出す。
「リック、クロト……この技はお主らの訓練中に教えた。後は気づけ……どこかで知れ……この技を……わしはここまでじゃが、わしの意志、想いは……頼んだぞ」
「死ねぇ! ローガン・ボルフェノ!」
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