最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
147話 あの日……
「おい、大丈夫か! 起きろ!」
誰だろう。俺、何してるんだっけ……
身体中が痛い……重い……指はかろうじて動くな。
「目を覚ませ! 死ぬぞ!」
誰なんだ……死ぬ?俺が?
まだ死ぬわけには行かない。エヴァを残しては死ねない。
「お前……誰だ?」
なんとか気力を振り絞り、声を発する。喋ると胸の部分がズキズキと痛む。目を開けるが眩しくてまだぼんやりしている。見えるのは遠くの緑と俺のすぐ近くにある赤い物。
「私だ。ナイアリスだ」
「あぁ……良かった。お前、無事だったのか」
「人の心配してる場合か! ドクターかシエラのどっちかがもうすぐ来る。それまで意識を保て! これ以上は本当にまずいぞ」
「あいつは……どうなった?」
「デルダイン王か? 私が戻ってきた時にはもう居なかったよ。捕えた魔族も居なかった」
「救出が目的……か」
「詳しい話はあとだ。お前も重症組なんだから気をしっかり持て!」
「あ、ああ……」
その後すぐにシエラが駆けつけてきて、俺の回復が始まった。
話を聞いたところによれば、夜が明ける少し前に戦いの音が止んだので恐る恐る覗いてみると八人が瀕死。デルダイン王と色彩魔女ラプツェラの姿は無く、大慌てで治療を開始したらしい。
所謂重症組というのが俺、レオ、リンリ、アジェンダ。軽症組がナイアリス、マスターボウ、雨刃、ヴァランらしい。
リンリとレオは強力な電気を浴びすぎたせいで、一時心臓が止まっていたらしい。現在は持ち前の生命力で回復してきているそうだ。アジェンダは疲労と蓄積されたダメージで現在も眠っているらしい。峠は超えているそうなので、命の危険は去ったようだが。
そして俺は全身にガタが来ていると診察された。おまけに両手足の筋肉がズタボロで暫くは痛むとの事。一番重症なのは胸部。肋骨が折れて内蔵にもダメージが及んでいる。武雷針を受けた時のダメージだろう。胸部が貫通しなかっただけ幸運だと思う。獄化・地装衣の鎧のお陰だろうか。
「一先ず治療は終わりでありんす。完治に一週間〜二週間はかかるでありんすから、あまり無理に動いたりしないように、でありんすよ」
「あ、ああ。ありがとう」
「わっちが寝ていなければ一緒に戦えたでありんすが……」
「いや、シエラはむしろ寝ててくれてよかったと思うよ。シエラまでやられてたら本当に助からなかった人がいたかもしれない」
「……他の人ももう一度診てくるでありんす」
「ああ」
シエラの癒術のお陰で歩くぐらいなら可能になった俺はブルーバードを見渡す。俺が倒れていたのはカウンターの裏の所で、周りを見渡すとブルーバードは殆ど原型をとどめていなかった。
エリック、ビリーがよく飲みつぶれているテーブルが置いてある場所や入店を知らせる鐘のついたドアは完全に吹き飛び、戦いの最中では残っていたカウンターや地下への階段がある場所もそこ自体は無事だが、その周りの壁や屋根はもう殆ど無い。
周りには家具や建物、グラスの具合を確認するレッグと忙しそうに駆け回っているナイアリス、シエラの他には誰もおらず、戦った他の七人は下で寝ているらしい。早く回復するといいけど……
「目的はラプツェラの奪還、と見ていいんだよな。でも、俺達を生かしておいたのは何故だ。殺そうと思えば殺せたはず……」
デルダインはアンデッドだった。これはほぼ確定だろう。て事はリヴァに命令されて動いている。命令が奪還のみだったから邪魔な俺達を跳ね除け、奪還だけを遂行したのか……
「わけわかんねーことばっかりだなぁ」
まずは全員が生きている事に喜ぼう。今後の事も考えないと。とりあえずレオとリンリの様子を見に行くか。
◇
「リック、デルダイン達が帰ったぞ」
いつもの古城にリヴァの声が響く。
「そうか ジガルゼルド様はフランケンポール様の所だ。待機させておこう」
それに答えたのはリックだ。
四魔王最後の一人、フードを被った火傷の男はクロトと共にリブ村で育ったリックだったのだ。
「うむ、お主が魔族になってから既に五年。すっかり板についたの」
「完全な魔族じゃない。半魔族半人族、異能も使えないしな」
「ハーフなのに四魔王トップの実力は割に合わないと思うけどね」
いつの間にか姿を現したのはリンリの元主、アリス。
「少し、話をしよう。リックや」
「その口調はやめろ、リヴァ。どっかのじじいを思い出す」
「ローガンか……我々は大陸を手にする為、四十年前に侵略してきた当時の将軍を抹消する事から始めた。思わぬ伏兵として出てこられたら厄介だったからのう。当時の将軍は四人じゃったか……水将軍シャーマル・エンポス、華将軍サルバンザ・レヴァン、剣将軍ブイラ・イジャージュ、そして剛力将軍ローガン・ボルフェノ……四人のうち水将軍と剣将軍は既に死亡、華将軍は所在不明。唯一居場所がわかったのが剛力将軍だった」
「……やめろ」
「あら、いいじゃない。たまには昔話も、ね?」
「そしてリックが加入する前、四魔王のトップに立っていた男デルドラ、そしてアリスとジガルゼルド様。この三人でリブ村へ襲撃に行った。そしてその日……」
誰だろう。俺、何してるんだっけ……
身体中が痛い……重い……指はかろうじて動くな。
「目を覚ませ! 死ぬぞ!」
誰なんだ……死ぬ?俺が?
まだ死ぬわけには行かない。エヴァを残しては死ねない。
「お前……誰だ?」
なんとか気力を振り絞り、声を発する。喋ると胸の部分がズキズキと痛む。目を開けるが眩しくてまだぼんやりしている。見えるのは遠くの緑と俺のすぐ近くにある赤い物。
「私だ。ナイアリスだ」
「あぁ……良かった。お前、無事だったのか」
「人の心配してる場合か! ドクターかシエラのどっちかがもうすぐ来る。それまで意識を保て! これ以上は本当にまずいぞ」
「あいつは……どうなった?」
「デルダイン王か? 私が戻ってきた時にはもう居なかったよ。捕えた魔族も居なかった」
「救出が目的……か」
「詳しい話はあとだ。お前も重症組なんだから気をしっかり持て!」
「あ、ああ……」
その後すぐにシエラが駆けつけてきて、俺の回復が始まった。
話を聞いたところによれば、夜が明ける少し前に戦いの音が止んだので恐る恐る覗いてみると八人が瀕死。デルダイン王と色彩魔女ラプツェラの姿は無く、大慌てで治療を開始したらしい。
所謂重症組というのが俺、レオ、リンリ、アジェンダ。軽症組がナイアリス、マスターボウ、雨刃、ヴァランらしい。
リンリとレオは強力な電気を浴びすぎたせいで、一時心臓が止まっていたらしい。現在は持ち前の生命力で回復してきているそうだ。アジェンダは疲労と蓄積されたダメージで現在も眠っているらしい。峠は超えているそうなので、命の危険は去ったようだが。
そして俺は全身にガタが来ていると診察された。おまけに両手足の筋肉がズタボロで暫くは痛むとの事。一番重症なのは胸部。肋骨が折れて内蔵にもダメージが及んでいる。武雷針を受けた時のダメージだろう。胸部が貫通しなかっただけ幸運だと思う。獄化・地装衣の鎧のお陰だろうか。
「一先ず治療は終わりでありんす。完治に一週間〜二週間はかかるでありんすから、あまり無理に動いたりしないように、でありんすよ」
「あ、ああ。ありがとう」
「わっちが寝ていなければ一緒に戦えたでありんすが……」
「いや、シエラはむしろ寝ててくれてよかったと思うよ。シエラまでやられてたら本当に助からなかった人がいたかもしれない」
「……他の人ももう一度診てくるでありんす」
「ああ」
シエラの癒術のお陰で歩くぐらいなら可能になった俺はブルーバードを見渡す。俺が倒れていたのはカウンターの裏の所で、周りを見渡すとブルーバードは殆ど原型をとどめていなかった。
エリック、ビリーがよく飲みつぶれているテーブルが置いてある場所や入店を知らせる鐘のついたドアは完全に吹き飛び、戦いの最中では残っていたカウンターや地下への階段がある場所もそこ自体は無事だが、その周りの壁や屋根はもう殆ど無い。
周りには家具や建物、グラスの具合を確認するレッグと忙しそうに駆け回っているナイアリス、シエラの他には誰もおらず、戦った他の七人は下で寝ているらしい。早く回復するといいけど……
「目的はラプツェラの奪還、と見ていいんだよな。でも、俺達を生かしておいたのは何故だ。殺そうと思えば殺せたはず……」
デルダインはアンデッドだった。これはほぼ確定だろう。て事はリヴァに命令されて動いている。命令が奪還のみだったから邪魔な俺達を跳ね除け、奪還だけを遂行したのか……
「わけわかんねーことばっかりだなぁ」
まずは全員が生きている事に喜ぼう。今後の事も考えないと。とりあえずレオとリンリの様子を見に行くか。
◇
「リック、デルダイン達が帰ったぞ」
いつもの古城にリヴァの声が響く。
「そうか ジガルゼルド様はフランケンポール様の所だ。待機させておこう」
それに答えたのはリックだ。
四魔王最後の一人、フードを被った火傷の男はクロトと共にリブ村で育ったリックだったのだ。
「うむ、お主が魔族になってから既に五年。すっかり板についたの」
「完全な魔族じゃない。半魔族半人族、異能も使えないしな」
「ハーフなのに四魔王トップの実力は割に合わないと思うけどね」
いつの間にか姿を現したのはリンリの元主、アリス。
「少し、話をしよう。リックや」
「その口調はやめろ、リヴァ。どっかのじじいを思い出す」
「ローガンか……我々は大陸を手にする為、四十年前に侵略してきた当時の将軍を抹消する事から始めた。思わぬ伏兵として出てこられたら厄介だったからのう。当時の将軍は四人じゃったか……水将軍シャーマル・エンポス、華将軍サルバンザ・レヴァン、剣将軍ブイラ・イジャージュ、そして剛力将軍ローガン・ボルフェノ……四人のうち水将軍と剣将軍は既に死亡、華将軍は所在不明。唯一居場所がわかったのが剛力将軍だった」
「……やめろ」
「あら、いいじゃない。たまには昔話も、ね?」
「そしてリックが加入する前、四魔王のトップに立っていた男デルドラ、そしてアリスとジガルゼルド様。この三人でリブ村へ襲撃に行った。そしてその日……」
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