閑話　三人の魔族

　数十年前。領土を求めて魔族と人間族の大規模な戦争があった。今では第一次魔人大戦と呼ばれている戦争だ。
　数カ月、数年と続いた戦争の末、魔族が辛うじて人間族を撃退。しかし大陸を攻める力は既に失っており、引き分けという形で終わった。
　その際、魔族側は大魔人であるジガルゼルドや現魔王のリヴァ、フロリエル、アリス、そしてフランケンポールやそれに並ぶ数名の魔族を残し、殆どが全滅。
ジガルゼルドとフランケンポールの共闘により人間族を追い返したものの惨敗と言える結果だった。
　そんな生き残った魔族の内、現在はジガルゼルドの部下として活動する者達がいる。彼らはたった八人ではあるが、他の魔族と引けを取らず、相性次第では四魔王にも数えられる程の実力者である。
　そんな八人の魔族のうち、三人を紹介しよう。




　一人目はジャエレダ。通称“正体不明”、“アンノウン”
　「形態変化」と呼ばれる極めて強力な異能を保持しており、その多彩な戦闘スタイルと適応力から三人の中で最も強いとされている男。
　普段は人間に近い第三形態で過ごしている。　


　第一形態は人型で白いのっぺりした姿。頭にはたった一つの大きな目があり、形態を変化させる前兆として巨大な口が出現する。クロト曰く「不気味真っ白」
　感情がほぼ無く、ジャエレダ本人も形態変化以外での関与ができない為、体をコントロールできない。
　どんな強力な一撃を受けても、どんな切れ味の良い剣で斬られたとしても半液体の様な体はダメージを受けず、すぐさま再生する。
　魔術にも強い耐性があり、全身を吹き飛ばされても再生する。ただし炎には弱く、炎による攻撃で頭部、胸部を潰されると再生ができなくなり、死亡。別形態へ変化する。


　第二形態は人間から全身の皮を剥いだような姿で、筋肉に覆われている。
　第一形態がひょろっと細長いのに対し、第二形態はガタイが良い。
　物理攻撃に耐性はないが、筋肉に覆われた体は頑丈で、並の攻撃では浅い傷しか付けれない。
　更には背中から細く長い腕を何本も生やすことが可能な為、第二形態では欠点とされる本体の遅さを触手でカバーしている。
　再生速度は第一形態に劣るが、そもそも浅い傷しか付けれないので不死身に近い事に変わりはない。
　そんな反面。魔術による攻撃は耐性が低く、超火力による攻撃などを食らうと全身が消滅して死亡してしまう。


　第三形態は最も特徴のない形態。人間の姿で、物理攻撃も効くし魔術も効く。
　ジャエレダが生まれた時がこの形態である為、一番完成している形態でもある。
　内蔵や脳も一番発達しており、流暢に喋ったり、頭脳戦を行う事も可能。
　ジャエレダ本人の努力でスピードが極限まで高められており、それが強さに直結している。
　最高速度ではクロトの雷化・天装衣ラスカティグローマに追いつくレベル。


　第死形態。第一から第三形態の死亡を確認すると最後に変化する形態。三形態の死亡がトリガーであるので、自発的な使用は不可。
　また、この形態へ変化すると他の形態を徐々に回復させる。
　三つの形態が組み合わさっており、第二形態よりも体は一回り大きく、三メートルを越える。パッと見ただけでは第二形態と見た目はよく似ている。
　背中の触手の先端には尖った骨のような爪が付いている。
　全身に白いラインが入り、鼓動に合わせて脈を打っている。
　大きく一つしかなかった目は蜘蛛のように右に四つ、左に四つずつの計八個にまで増える。
　第一形態の柔らかさと再生速度を持っている。が、同じく火が弱点。
　胴体部分に核があり頭部と胸部は第二形態以上の硬度を持っている。雨刃ですら核へは届かなかった。
　触手は雨刃を若干勝る速度を出せる為攻防に隙が無い。
　第三形態の頭脳や意識がそのまま移るため、動きを先読みしたり、会話も可能。ただし声帯が少し劣っている為完璧には喋れない。
　第死形態が死ぬとジャエレダも絶命する為、倒すにはそれぞれ正しい方法で四度殺す事が必須。





　二人目はラプツェラ。通称“色彩魔女”
　本編で戦闘シーンは無かったものの、他の二人に勝るとも劣らない異能の持ち主。
異能「完全消術」は自分や他者の姿、声、匂いや気配、その者の行動によって起きる音、更には物理的な存在までもを消す事ができる。
　この術にかけられた者同士はお互いに姿を見えるようになるので、敵を分散させる時は有効だが、一対一で相手にかけるのは大した意味を生まない。
　また、殺傷能力が低いため本人は武器に頼る他ない。




　三人目はエンデル。通称“赤鬼”
　異能「羅鬼招来」の持ち主。赤色肌のオーガに体質を変化させる異能。
　身体能力や体格を倍増させるので、基礎的な能力が高い程効果がある。
　皮膚もただの剣では切れなくなるほど硬質化し、大木をも圧し折り、そして投げつける筋力を持つ。
　接近戦では最強に近い実力を持っており、アンノウンのようなバリエーションは無いが、持続力と耐性に優れる。




　以上が三名の情報である。