最弱属性魔剣士の雷鳴轟く

相鶴ソウ

142話 尋問

「おー、やってんなー」


 ブルーバードから出ると、アジェンダとレオが激しく暴れまわっていた。レオの小手先から繰り出される細かい技を巨斧で捌くアジェンダ。どう考えても質量を無視しているように見えるが……
 アジェンダは細身なのでそこまで筋肉があるようには見えないし、普通無理だと思うんだが。


「あ、起きたんだ」

「ナイアリスか。なんだか久しぶりな気もするな」

「約一日会ってなかったからね〜 昨日は大活躍だったそうね」

「そんな事ねーよ。結局雨刃に助けられなかったらやばかったしな」

「レオは話を聞いた時「俺じゃそいつには勝てそうにないな」って褒めてたよ」

「確かに相性は悪いかもな」


 単純な斬撃じゃアンノウンの再生速度が速すぎてジリ貧になる。でもレオなら硬い筋肉ごと核を斬り裂けそうだけどな。


「もう修行?」

「ああ、こういうのは継続が第一だからな。レオが終わったら俺もアジェンダに模擬戦してもらうかな」

「あんた達そういうの好きね~」





「サテ、一日ブリダナ」


 その夜。珍しくブルーバードは閉まっており、部屋には普段のメンバーしかいない。
 椅子に縛り付けられ、マスターボウの風の結界で力を封じられた色彩魔女をみんなで囲っている。
 あの時は気づかなかったが、エヴァと同じ金髪で顔立ちも整っている。これからなんの目的で魔族がこの大陸にいるのかを聞き出すわけだが、直感ではあまり喋ってくれなさそうな気がする。


「…………」

「正直ニ答エロヨ。オ前ラハ何ダ? 何ノ目的デ来タ?」

「…………」


 色彩魔女はそっぽを向いたまま喋る様子はない。雨刃のマントから片手剣が離れ、何十本もの剣先が色彩魔女を向く。
 加えて交代するようにマスターボウが前に出て色彩魔女の顔を覗き込み、ニッコリと笑う。


「貴女が寝てる時、『計画のために……私は帰らねば……計画に……』って呟いてたけど、生きて帰りたいんだったらここで素直に喋ったほうがいいわよ〜?」


 この寝言は事実言っていた。
 が、逆にそこまで決意が固ければ喋るぐらいなら死を、とか言いそうだが。


「……! わかったわ」


 少し驚いたような素振りを見せた後、諦めたように肩を下げた。


「んん〜いい子ね。貴女の名前は?」

「ラプツェラ」

「ラプツェラね、いい名前だわ」





 魔族領。大魔人達の根城では大魔人と四魔王のリヴァが机を囲んでいた。そこへ来客が現れる。


「ジガルゼルド」

「その声はフランケンポールか。ここまで来るとは珍しい」

「待っていても君は来なさそうだからね」

「こ、これはフランケンポール様」


 四魔王のうち、唯一その場にいるリヴァが慌てて頭を下げる。
 フランケンポールは相変わらずの白衣メガネスタイルで、いつの間にか後ろに控えているレイヴンも相変わらず神出鬼没だ。


「例の作戦だが、アリゲインが上手くやったようだ。あとはその時を待つだけ」

「加勢は?」

「必要ないよ。ただ、少し貸してほしい物と最後の調整がしたい」

「わかった、あとで行こう。俺からも少し話があったところだ」

「へぇ、何だい?」

「“正体不明”、“赤鬼”が死んだ。“色彩魔女”も捕らわれたらしい」

「大変じゃないか。前者の二人は補充できるとしても彼女は計画の要だろう?」

「ああ、あいつを失えば根本から計画を変えなければならない。来たる第二次魔人大戦のな」

「す、少しいいでしょうか。大魔人様、フランケンポール様」

「君も確か計画の要だったよね」

「なんだ、リヴァ」

「その、“正体不明”や“色彩魔女”とはなんの事でしょうか? そしてその計画というのは……」

「ああ、話していなかったな。“正体不明”、“色彩魔女”、“赤鬼”は第一次魔人大戦、つまり数十年前お前達が全てを奪われた戦いで生き残った八人の魔族、そのうちの三人だ。そんでもって作戦ってのは……」





「そんな魔族の生き残りがどうして今更この大陸へ?しかも三人だけで」

「……少し鬱憤が溜まったから人間相手に発散しに来ただけよ」 

「少しいいか」

「どうしたのん?クロトちゃん」


 こいつは大魔人や四魔王にも近い魔族。もしかすればあの事について詳しいかもしれない。


「お前の知ってる魔族で魔物を操れる奴はいるか?」

「……いないわ」

「じゃあ五年前、俺の村が襲われた事を知ってるか?」

「なんて言う村かしら?」

「リブ村……東の地にあるそれなりに栄えていた村だ」

「残念ながら知らないわ」

「……そうか」

「尋問を続けるわね」





「そ、そんな計画が……」

「君達にもいずれ詳しく話す時が来るはずだよ。それよりジガルゼルド、どうする?」

「捕らわれたなら助けるしか無い さっきも言ったがあいつは要。加えてあいつの調査結果も聞かなければならない」

「しかしなぜ捕まったとわかったのですか?」

「僕が作った意思送受石を持ってるからさ。対となる石を持っている者同士は簡単な会話ができるんだよ」

「なるほど……」

「しかし面倒だな。ラプツェラの情報が正しければオリハルコン級が二人、その他にも手練が勢揃いしている。助けるだけでもかなり激戦になる」

「僕達が数で攻めてもラプツェラが居なければ接近をすぐに気取られるからね。奇襲もほぼ意味をなさないだろう」

「アレを使うのはどうでしょうか? 数十年前から切り札としてずっと傍らに置いてきましたが、アレならば……」

「……今どこに置いている?」

「幸いにも大陸にありますので、アレの速度を持ってすれば数分で辿り着けるかと」

「よし、アレを使え、後はリヴァに任せる。俺はフランケンポールと共に一度ここを離れる」

「御意」

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