最弱属性魔剣士の雷鳴轟く

相鶴ソウ

136話 口、そして筋肉

 さっきのリンリの斬撃を見て気づいたことが二つ。
 一つ目は部位による再生速度の違い。人間の急所である頭や胴を弾き飛ばした時と末端の腕や脚とでは再生の速度が違う。
 そして二つ目。こいつは火に弱い。こいつの体はのっぺりしていて雷に打たれても弾けるだけで焦げたりはしない。なのにも関わらずリンリの斬撃で燃えているということは弱点とまではいかなくても有効打である可能性は高い。
 加えて今までは切断したとしても切断面同士を伸ばして再生していたのにリンリの炎剣で斬られ、分離した部位が燃えた時はそれらを繋げるのではなく、その部位を捨てて新たに再生させていた。


「少しずつ見えてきたぞ。お前の能力」


 少しでもリンリ回復の時間を取ろうと思った矢先、アンノウンに変化が訪れた。今まで大きな目が一つだけだった顔に大きな亀裂が入ったからだ。目のすぐ下に一本の亀裂。口の様に開いた亀裂の中は血が通っているかのように真っ赤で鋭くとがった白い牙が見える。唾液のような粘着質の液体も垂れている。


「ガ……ガ……グガ……ガ…………」


 声を、発しているのか……? だがその声色も実際の人間とはかなり違う。
 あれだけの再生速度、加えてあのパワー。そんなものを持っている奴が明らかに今までとは違う挙動を見せている。警戒しない理由はない。だが、起こる前に潰すことが出来たら……


「雷帝流 稲妻剣・獄」

「ダ……ダイ、第……二」


 一気に飛び上がり頭を狙う。が、焦り過ぎたせいか、少し右にれた。だが今更止められない。このまま肩を狙って振り下ろす!


「……ケイ……形態」


 次の瞬間、再びアンノウンに大きな変化が表れた。赤黒い筋の入った肉がアンノウンの全身を包み込む。
 大きな一つ目や口は変わらないが、肉は白い体を完全に覆い隠し、体格すらも大きく変えた。
 今まではひょろっとした背格好だったが、今はマルスに引けを取らない体格だ。そしてこの姿……昔本で読んだ、人間の皮をはいだ姿によく似ている。つまりは筋肉だけの状態。
 そして俺はアンノウンの肩にシュデュンヤーを振り下ろしたが浅く斬れただけで大したダメージは与えられなかった。硬度がけた違いに上がった。だが再生速度は健在らしく、その傷もすぐに塞がる。


「……マジかよ」

「行、く……ぜ……?」


 まだ途切れ途切れではあるがついに喋るようにもなった。
 正直白い一つ目の時もかなり不気味だったが、こっちはこっちで不気味だ。


「……ッ!」


 アンノウンが拳を突き出すと、二の腕や上腕の部分が伸びて迫ってくる。シュデュンヤーを斜めに構えて流したが、パワーはさっきよりも上がっている。
 唯一の救いは速度が若干落ちた事ぐらいだろうか。


雷化・天装衣ラスカティグローマ……続けて獄気硬化!!」


 雷化に加えて両手を硬化させ、アンノウンに対抗する。
 あの速度と強度、それと対抗できるだけの雷化・天装衣ラスカティグローマ
十分やり合えるはずだ。


「行くぜ……アンノウン」

「……ガ」


 雷化の伸縮性を利用して拳を飛ばし、アンノウンの肩に当てる。が、その体格は見せかけだけではないらしく、簡単に弾かれてしまった。腕をすぐに戻して次の攻撃に移ろうとするが、相手の拳が二本飛んでくる。
 ギリギリまで引きつけてかわし、アンノウンに接近する。腕が二本とも伸びてる状態じゃこれは受けれないだろう。


「雷帝流 雷撃一閃・獄」


 横薙ぎ払いの一撃を繰り出すが踏み込みが浅かったのか、アンノウンが後ろへ避けたのか、首を切断するまでには届かず、浅く斬っただけで終わる。
 もう一撃食らわせようと踏み込んだ所で俺の体が複数の衝撃で貫かれる。雷化しているのでダメージは無いが、飛んできた攻撃を見て更に冷や汗が流れる。
 飛んできたのは腕だった。だが、その飛んできた場所に問題がある。肩から生えていたのだ。三本目、四本目の腕が。
 瞬時に上空へ逃げ、体を戻す。
 よく考えればあいつは背中から大量の触手を生やしている所を目撃されている。この程度予想しておくべきだったか。


「やば……」


 アンノウンの背中から生えてきた大量の腕が空中へと伸び、俺の体を貫いたのだ。
 殆ど原型がなくなったせいで、シュデュンヤーを手から離してしまう。一旦離れた位置に体を再生させ、見失っているアンノウンへ狙いを付ける。


神鳴かみなり術 神鳴放電砲しんめいほうでんほう!!」


 片手で作り出した雷丸へ魔力を注ぎ込み、爆発的なエネルギーを持った雷丸を創り出す。そして雷丸を突き出し、まさにレーザービームの如きキャノンを打ち込む。真っ白な雷がアンノウンの腹を貫通、そのまま増幅し、全身を消滅させる程の威力で大爆発を引き起こした。

コメント

  • 330284【むつき・りんな】

    (*´ω`*)体、気を付けね。後ガンバ!

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