最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
112話 剣征之斬、そして怒り再び
アリスの手に握られた剣が弧を描き、振り下ろされた。
が、土の剣はシエラを斬り裂くよりも早くシエラの頭上で止まった。いつの間にかシエラの隣に立っていたレオの持つ銀月によってだ。
「……!? お前は……」
「うちの仲間が世話になったな。礼はさせてもらうぜ?」
レオは土剣を力で押し上げ、土剣をアリスの手から弾き飛ばす。アリスは瞬時に後ろに飛び、レオと距離を取る。
遠距離相手だから近づいたが、元々アリスも遠距離タイプ。根っからの近距離タイプとあの距離でやっては勝てないと踏んだのだろう。
「レオ、あの双子はどうしたでありんす?」
「倒した、だが少し厄介な事になった」
「厄介な事でありんすか?」
「ああ、もう一人の魔王が来たんだ。名前は確か……フロリエルっつったかな。そいつが双子の姉貴の方を殺しちまった」
「……っ!! それは本当か!?」
レオの言葉に思わずアリスが反応する。
「本当も何も、お前らの作戦か何かじゃないのか?」
アリスは苛立った様子で何かを考えている。
「で、レオ。その魔王は……?」
「エヴァリオンが戦っている。何か訳有な様子だったが……」
「だったら早く助けに行った方が……」
「わかってるが、こいつをそのままにしては置けないだろ」
レオは銀月を鞘に戻し、抜刀の構えを取る。
対するアリスも膨大な魔力を撒き散らしながら何かを仕掛けようとしていた。
「悪いけどあんた達にこれ以上かまってる暇は無いわ。異能解放 土術奥義 巨兵創造」
アリスの後ろに再び巨人が立ち上がる。
だが今回は一体で終わりじゃない。続けて二体目が一体目の巨人に向かい合うように、つまりレオ達の背後から立ち上がった。
「おい、まさかこんなデクの棒おいていくつもりじゃないよな?」
「そのまさかよ」
アリスはそれだけ言い終えると森の中へと消えた。残った二体の巨人はレオとシエラを叩き潰さんと既に腕を振り上げている。
「くそ、シエラ!」
シエラは恐怖の対象が消えた放心感、エヴァを助けないとという焦り、そして女神の怒りレベルの攻撃でなければ倒せない強敵の出現。
その全てが一編に押し寄せ、混乱を起こしてしまっている。
「危ない!」
レオはシエラを抱え、大きく右に飛んだ。
片方の巨人が腕を振り下ろし、シエラがいた部分を殴りつける。レオの咄嗟の行動でなんとか巨人の攻撃を免れたシエラはなんとか正気を取り戻した。
「ご、ごめんなんし」
「気にするな。それよりどうする?」
「あの巨人一体ならわっちが倒せるかもしれないでありんす」
「そうか、じゃあおれがもう一体をやろう」
「わかりんした」
レオとシエラはお互いに背を合わせ、それぞれ巨人を見据える。デカさおよそ十メートル。
「いくぞ。至天破邪剣征流 薙払の型……」
抜刀したまま大きく飛んだレオは、凹凸のある巨人の体を逆手に取り、崖上りの要領で登りだす。ロックドラゴンの時にも見せたロッククライミングだ。そして太もものあたりまで登り詰め、抜刀。体を大きく回転させて一斬、巨人の太ももに大きく切り込みを入れる。
「『剣征之斬・大輪』!!」
だが、それだけでは終わらない。
その切れ込みを足場にし、更に上へ飛んだレオは更に三連撃を巨人に叩き込む。一撃一撃が大きな弧を描き、巨人の体を半分ほど両断、腹の部分に巨大で深い傷を残す。
それを無視もできない巨人ははたき落とそうと左腕をレオに向かって振り下ろす。レオは対抗するように腕へ斬撃を放つ。
斬撃は肘から下を捉え、蟹の鋏の様に綺麗に斬り裂いた。
「おらぁぁぁぁ!」
そのまま腕に飛び乗ったレオは体を丸め、前転に合わせて一斬、続けて回転したまま肘から先が二本の腕を輪切りにしていく。
「『剣征之斬・大風車』!! これで最後だ……『剣征之斬・画竜点睛』!!」
既に肘から下が無い巨人の腕を駆け抜けながら銀月を巨人の腕に付けて走る。
レオが通った後はガリガリと削れ線ができる。そのまま肩へ登り詰め、銀月を握る力だけを込め、腕全体を脱力し、目を閉じた。
剣征之斬という技は至天破邪剣征流の中でも一番最初に作られた技の一つで、麒麟駆けや神薙麒麟暴のような高速の連撃ではなく、一つ一つの技を繋げて連撃にするように作られた技だ。
故に一つ一つの技になるべく体力を使わないように、なおかつ次の動きへ移行しやすい様に改良が施されている。
しかし、画竜点睛はまた別だ。
必ず最後に使う技として決められ、完全に脱力した体に真っ直ぐな力を乗せることで他の技よりも大きな攻撃力を生む。最後の一斬必殺として作られた技だけあって、今までこの技を防いだ者は居ない。
「おりぁぁ!!」
横一文字に大きく振りかぶった銀月は巨人の首を捉え、大きく斬り込みを入れた。以前の銀月ならここで終わっていただろう。だが、デッテツにより調整が加えられた銀月はこの程度では終わらない。
目に見えるほどの斬撃の衝撃波が半円形に広がり、巨人の首はどんどん削られて行く。
そして首を両断しきった斬撃は霧となって消え、首が飛んだ巨人は全身の土が崩壊へと向かっていった。
土塊の巨人とはいえ人としての性質、つまりは脳から全身へ命令が行われるという部分は忠実に再現されており、その最も大事な神経である脊椎の詰まった首を切られれば機能を失い崩れる造りになっている。
「ふぅ……」
巨人が崩れた事で高さ十メートル程度から落下したレオだが、何事も無かったかのように立ち上がり服についた土を払う。
「神眼発動 “月の女神の投擲眼”。集え、月の光よ……」
そして、レオの後ろでシエラは右目の神眼を発動させていた。
「月之女神式魔法陣」
シエラから放たれた三本の矢は、巨人の頭上まで飛び上がり、素早く回転。
「展開! 女神の怒り」
シエラの掛け声と共に魔法陣が展開され、神眼“月の女神の投擲眼”の力で聖なる一撃の上位互換に当たる女神の怒りを放つ。
膨大な量の光が巨人に降り注ぎ、その身を崩れさせる。腕が関節で断ち切られ、手から指が飛び、指が粉々に消えさる。
こうして二体の巨人は斬り裂かれて土に返り、光に召され土に返った。
が、土の剣はシエラを斬り裂くよりも早くシエラの頭上で止まった。いつの間にかシエラの隣に立っていたレオの持つ銀月によってだ。
「……!? お前は……」
「うちの仲間が世話になったな。礼はさせてもらうぜ?」
レオは土剣を力で押し上げ、土剣をアリスの手から弾き飛ばす。アリスは瞬時に後ろに飛び、レオと距離を取る。
遠距離相手だから近づいたが、元々アリスも遠距離タイプ。根っからの近距離タイプとあの距離でやっては勝てないと踏んだのだろう。
「レオ、あの双子はどうしたでありんす?」
「倒した、だが少し厄介な事になった」
「厄介な事でありんすか?」
「ああ、もう一人の魔王が来たんだ。名前は確か……フロリエルっつったかな。そいつが双子の姉貴の方を殺しちまった」
「……っ!! それは本当か!?」
レオの言葉に思わずアリスが反応する。
「本当も何も、お前らの作戦か何かじゃないのか?」
アリスは苛立った様子で何かを考えている。
「で、レオ。その魔王は……?」
「エヴァリオンが戦っている。何か訳有な様子だったが……」
「だったら早く助けに行った方が……」
「わかってるが、こいつをそのままにしては置けないだろ」
レオは銀月を鞘に戻し、抜刀の構えを取る。
対するアリスも膨大な魔力を撒き散らしながら何かを仕掛けようとしていた。
「悪いけどあんた達にこれ以上かまってる暇は無いわ。異能解放 土術奥義 巨兵創造」
アリスの後ろに再び巨人が立ち上がる。
だが今回は一体で終わりじゃない。続けて二体目が一体目の巨人に向かい合うように、つまりレオ達の背後から立ち上がった。
「おい、まさかこんなデクの棒おいていくつもりじゃないよな?」
「そのまさかよ」
アリスはそれだけ言い終えると森の中へと消えた。残った二体の巨人はレオとシエラを叩き潰さんと既に腕を振り上げている。
「くそ、シエラ!」
シエラは恐怖の対象が消えた放心感、エヴァを助けないとという焦り、そして女神の怒りレベルの攻撃でなければ倒せない強敵の出現。
その全てが一編に押し寄せ、混乱を起こしてしまっている。
「危ない!」
レオはシエラを抱え、大きく右に飛んだ。
片方の巨人が腕を振り下ろし、シエラがいた部分を殴りつける。レオの咄嗟の行動でなんとか巨人の攻撃を免れたシエラはなんとか正気を取り戻した。
「ご、ごめんなんし」
「気にするな。それよりどうする?」
「あの巨人一体ならわっちが倒せるかもしれないでありんす」
「そうか、じゃあおれがもう一体をやろう」
「わかりんした」
レオとシエラはお互いに背を合わせ、それぞれ巨人を見据える。デカさおよそ十メートル。
「いくぞ。至天破邪剣征流 薙払の型……」
抜刀したまま大きく飛んだレオは、凹凸のある巨人の体を逆手に取り、崖上りの要領で登りだす。ロックドラゴンの時にも見せたロッククライミングだ。そして太もものあたりまで登り詰め、抜刀。体を大きく回転させて一斬、巨人の太ももに大きく切り込みを入れる。
「『剣征之斬・大輪』!!」
だが、それだけでは終わらない。
その切れ込みを足場にし、更に上へ飛んだレオは更に三連撃を巨人に叩き込む。一撃一撃が大きな弧を描き、巨人の体を半分ほど両断、腹の部分に巨大で深い傷を残す。
それを無視もできない巨人ははたき落とそうと左腕をレオに向かって振り下ろす。レオは対抗するように腕へ斬撃を放つ。
斬撃は肘から下を捉え、蟹の鋏の様に綺麗に斬り裂いた。
「おらぁぁぁぁ!」
そのまま腕に飛び乗ったレオは体を丸め、前転に合わせて一斬、続けて回転したまま肘から先が二本の腕を輪切りにしていく。
「『剣征之斬・大風車』!! これで最後だ……『剣征之斬・画竜点睛』!!」
既に肘から下が無い巨人の腕を駆け抜けながら銀月を巨人の腕に付けて走る。
レオが通った後はガリガリと削れ線ができる。そのまま肩へ登り詰め、銀月を握る力だけを込め、腕全体を脱力し、目を閉じた。
剣征之斬という技は至天破邪剣征流の中でも一番最初に作られた技の一つで、麒麟駆けや神薙麒麟暴のような高速の連撃ではなく、一つ一つの技を繋げて連撃にするように作られた技だ。
故に一つ一つの技になるべく体力を使わないように、なおかつ次の動きへ移行しやすい様に改良が施されている。
しかし、画竜点睛はまた別だ。
必ず最後に使う技として決められ、完全に脱力した体に真っ直ぐな力を乗せることで他の技よりも大きな攻撃力を生む。最後の一斬必殺として作られた技だけあって、今までこの技を防いだ者は居ない。
「おりぁぁ!!」
横一文字に大きく振りかぶった銀月は巨人の首を捉え、大きく斬り込みを入れた。以前の銀月ならここで終わっていただろう。だが、デッテツにより調整が加えられた銀月はこの程度では終わらない。
目に見えるほどの斬撃の衝撃波が半円形に広がり、巨人の首はどんどん削られて行く。
そして首を両断しきった斬撃は霧となって消え、首が飛んだ巨人は全身の土が崩壊へと向かっていった。
土塊の巨人とはいえ人としての性質、つまりは脳から全身へ命令が行われるという部分は忠実に再現されており、その最も大事な神経である脊椎の詰まった首を切られれば機能を失い崩れる造りになっている。
「ふぅ……」
巨人が崩れた事で高さ十メートル程度から落下したレオだが、何事も無かったかのように立ち上がり服についた土を払う。
「神眼発動 “月の女神の投擲眼”。集え、月の光よ……」
そして、レオの後ろでシエラは右目の神眼を発動させていた。
「月之女神式魔法陣」
シエラから放たれた三本の矢は、巨人の頭上まで飛び上がり、素早く回転。
「展開! 女神の怒り」
シエラの掛け声と共に魔法陣が展開され、神眼“月の女神の投擲眼”の力で聖なる一撃の上位互換に当たる女神の怒りを放つ。
膨大な量の光が巨人に降り注ぎ、その身を崩れさせる。腕が関節で断ち切られ、手から指が飛び、指が粉々に消えさる。
こうして二体の巨人は斬り裂かれて土に返り、光に召され土に返った。
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