最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
107話 目かオブジェクトか
「土術 凝土弾」
アリスの魔術により浮いた複数の土が凝縮され、強度を上げて放たれる。
一メートルあるかないか程度の大きさの土が、岩の強度で真っ直ぐに飛んでくるのを私とシエラは左右に飛んで回避する。
「……はっ!」
「氷術 雹絶帝砲」
ただ避けるだけじゃない。地面を一回転し、すぐにアリスめがけて氷塊を放つ。シエラも三本同時に矢を放った。
だが、その攻撃はアリスの後ろにそびえ立つ土塊巨人の腕によって阻まれてしまう。
巨人は異能によって命を与えられたも同然。当然自分の意思で動く。つまりアリスは並の攻撃なら何もしなくても勝手に守ってくれる。
自分は攻めにだけ集中していればいい……って事?
「シエラ、あの巨人の目を射抜ける?」
「それはもちろん可能でありんすが……」
果たしてあの目を撃ち抜いて意味があるのか……と言いたがってるのが伝わってくる。巨人は人と言うだけあって顔にしっかりと目がついている。だが、本物の人間のように瞼や眼球の“形”をしているだけでその区別はない。
例えあの目を撃ち抜いても機能の無いオブジェクトを破壊するだけの可能性もある。
「やって!」
「させないわよ」
「あんたの相手は、私!」
右手を突き出し、手の平から氷塊を連続で放つ。一つ一つの練度は低いが、それでも氷塊。否が応でもこっちの相手をしなければならない。
その間にシエラに目を撃ち抜いてもらう。
「氷術 雹絶帝砲」
「土術 凝土弾」
氷と土の撃ち合いが続く。
数、威力においてはほぼ互角……だが、生成するスピードがアリスの方が早い。無から氷を出す私と、地面の土を操るアリスとでは魔力消費やスピードの点で如実に現れる。
「だったら……氷術 武器具現 『トマホーク』 氷斧両断二投撃」
手を鳴らすと同時に空中に二本の両刃斧を生成。回転を加えてアリス目掛けて放つ。
「その程度……土術 凝土弾」
アリスによって放たれた土塊だが、回転のかかった氷斧にことごとく両断され、辺りに散る。
「く……巨人よ!」
「させないでありんすよ。聖術 聖なる一撃!」
シエラの放った二本の矢が超高速で巨人の顔へ飛ぶ。
そのまま進めばちょうど鼻へ刺さる位置を飛んでいた二本の矢は、お互いに引き寄せられ、衝突。
その反発を利用して起動を変え、両目に命中。更に聖属性を纏っていた矢は爆発を引き起こし、土煙が巨人の顔を覆う。アリスを守ろうとしていた巨人は視界を奪われ、守る対象を見失い、腕の動きを静止させている。
「やっぱり視界を塞ぐのは有効なんだ! くらえっ!」
二本の氷斧は左右に分かれ旋回しながらアリスの首へと収束する。あと二秒でアリスの首が飛ぶ……はずだった。
限りなく首に近づいた時、なんの前兆もなく二本の氷斧は砕け散った。まるでアリスの全身に見えない鎧があるかのように。
「な、どうして……?」
「……! そう、ははは! その程度で私を倒せると思っていたの?」
「一体何をしたでありんすか?」
「ふふ……土術 凝土雨弾!」
アリスが指を鳴らすと巨人の体を形成していた土が浮かびだし……一斉に私達に降り注ぐ。
一発一発が地面を抉り、枝を折り、時には木をもなぎ倒す。
「結界術 展開防御壁・伍」
間一髪のところでシエラの作り出した、五枚の結界によりなんとか防いだ。けど、後ろの馬車は大丈夫かな。エリザベスとゴンザレス、大丈夫かな。
「なんとか防ぎきれそうでありんすよ」
「ありがとう、シエラ」
「それはいいでありんすが……さっきの攻撃はなぜ効かなかったでありんすか?」
「わからない……でも、シエラの女神の怒りの時は巨人によって守られていた。てことは今回も巨人かも」
「……巨人らしきものは何も見えなかったでありんすが」
「そう……だからわからないの」
次第に土の雨も収まり、辺り一帯は土煙に覆われたままだが、音は消えている。シエラも魔力の限界だったみたいで、結界もその後すぐに消えた。
次に砲撃が来たら、どう回避すればいい……木に紛れてもあの土は木をもなぎ倒していたし……
「エヴァ」
「ん?」
「アリスが……いないでありんす」
言われて目を凝らすと確かに居なかった。辺りはまだ薄っすらと煙が覆っているが、見間違いはない。さっきまで視界を埋め尽くすほどの大きさで立ちふさがっていた巨人も、その足元で凝土弾を放っていたアリスも……もう居なかった。
「巨人は多分、さっきの凝土雨弾で消えた。アリスは……」
「近くには気配を感じないでありんすよ」
「……探そう、二手に別れて」
「わかりんした。何かあれば空に合図を上げるでありんす」
「了解!」
アリスの魔術により浮いた複数の土が凝縮され、強度を上げて放たれる。
一メートルあるかないか程度の大きさの土が、岩の強度で真っ直ぐに飛んでくるのを私とシエラは左右に飛んで回避する。
「……はっ!」
「氷術 雹絶帝砲」
ただ避けるだけじゃない。地面を一回転し、すぐにアリスめがけて氷塊を放つ。シエラも三本同時に矢を放った。
だが、その攻撃はアリスの後ろにそびえ立つ土塊巨人の腕によって阻まれてしまう。
巨人は異能によって命を与えられたも同然。当然自分の意思で動く。つまりアリスは並の攻撃なら何もしなくても勝手に守ってくれる。
自分は攻めにだけ集中していればいい……って事?
「シエラ、あの巨人の目を射抜ける?」
「それはもちろん可能でありんすが……」
果たしてあの目を撃ち抜いて意味があるのか……と言いたがってるのが伝わってくる。巨人は人と言うだけあって顔にしっかりと目がついている。だが、本物の人間のように瞼や眼球の“形”をしているだけでその区別はない。
例えあの目を撃ち抜いても機能の無いオブジェクトを破壊するだけの可能性もある。
「やって!」
「させないわよ」
「あんたの相手は、私!」
右手を突き出し、手の平から氷塊を連続で放つ。一つ一つの練度は低いが、それでも氷塊。否が応でもこっちの相手をしなければならない。
その間にシエラに目を撃ち抜いてもらう。
「氷術 雹絶帝砲」
「土術 凝土弾」
氷と土の撃ち合いが続く。
数、威力においてはほぼ互角……だが、生成するスピードがアリスの方が早い。無から氷を出す私と、地面の土を操るアリスとでは魔力消費やスピードの点で如実に現れる。
「だったら……氷術 武器具現 『トマホーク』 氷斧両断二投撃」
手を鳴らすと同時に空中に二本の両刃斧を生成。回転を加えてアリス目掛けて放つ。
「その程度……土術 凝土弾」
アリスによって放たれた土塊だが、回転のかかった氷斧にことごとく両断され、辺りに散る。
「く……巨人よ!」
「させないでありんすよ。聖術 聖なる一撃!」
シエラの放った二本の矢が超高速で巨人の顔へ飛ぶ。
そのまま進めばちょうど鼻へ刺さる位置を飛んでいた二本の矢は、お互いに引き寄せられ、衝突。
その反発を利用して起動を変え、両目に命中。更に聖属性を纏っていた矢は爆発を引き起こし、土煙が巨人の顔を覆う。アリスを守ろうとしていた巨人は視界を奪われ、守る対象を見失い、腕の動きを静止させている。
「やっぱり視界を塞ぐのは有効なんだ! くらえっ!」
二本の氷斧は左右に分かれ旋回しながらアリスの首へと収束する。あと二秒でアリスの首が飛ぶ……はずだった。
限りなく首に近づいた時、なんの前兆もなく二本の氷斧は砕け散った。まるでアリスの全身に見えない鎧があるかのように。
「な、どうして……?」
「……! そう、ははは! その程度で私を倒せると思っていたの?」
「一体何をしたでありんすか?」
「ふふ……土術 凝土雨弾!」
アリスが指を鳴らすと巨人の体を形成していた土が浮かびだし……一斉に私達に降り注ぐ。
一発一発が地面を抉り、枝を折り、時には木をもなぎ倒す。
「結界術 展開防御壁・伍」
間一髪のところでシエラの作り出した、五枚の結界によりなんとか防いだ。けど、後ろの馬車は大丈夫かな。エリザベスとゴンザレス、大丈夫かな。
「なんとか防ぎきれそうでありんすよ」
「ありがとう、シエラ」
「それはいいでありんすが……さっきの攻撃はなぜ効かなかったでありんすか?」
「わからない……でも、シエラの女神の怒りの時は巨人によって守られていた。てことは今回も巨人かも」
「……巨人らしきものは何も見えなかったでありんすが」
「そう……だからわからないの」
次第に土の雨も収まり、辺り一帯は土煙に覆われたままだが、音は消えている。シエラも魔力の限界だったみたいで、結界もその後すぐに消えた。
次に砲撃が来たら、どう回避すればいい……木に紛れてもあの土は木をもなぎ倒していたし……
「エヴァ」
「ん?」
「アリスが……いないでありんす」
言われて目を凝らすと確かに居なかった。辺りはまだ薄っすらと煙が覆っているが、見間違いはない。さっきまで視界を埋め尽くすほどの大きさで立ちふさがっていた巨人も、その足元で凝土弾を放っていたアリスも……もう居なかった。
「巨人は多分、さっきの凝土雨弾で消えた。アリスは……」
「近くには気配を感じないでありんすよ」
「……探そう、二手に別れて」
「わかりんした。何かあれば空に合図を上げるでありんす」
「了解!」
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