最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
106話 死魂召喚
「この程度で倒れると思ってねーよな」
「当たり前じゃ」
俺は爆散した体の欠片から再び再生し、じっと気配を探る。大爆発のせいで爆煙が立ち込め、お互いに視界を奪っている。
だが、俺には耳が、リヴァにも鍛え抜かれた勘がある。すぐにお互いの位置を見定め攻撃に入る。
「爆殺剣!」
煙に一太刀入ったかと思うと、その斬撃に沿って爆発が起こる。幸いにもすぐに後ろに飛んだ為ダメージはない。
「次はこっちの番だぞ。雷術 雷撃大砲」
手の間で作り出した巨大な雷丸を斬撃の出処へ向けて放つ。だが、それもリヴァには届かず、途中で切られてしまう。
「わしの異能について、少し教えてやろう」
いきなり何を……
いや、攻撃せずにお喋りしてくれると言うならそれはそれで好都合。今の内に作戦を……
「異能の名は死魂召喚。知っての通り死んだ者の魂を何かしらの物体に封じ傀儡とする異能」
エヴァ達とはかなり距離がある、とは言え今リヴァと一対一で勝てるのか……
「だがこの死魂召喚にも二種類ある。一つ目はヴァントでお前さんも戦ったであろう何も思考せず、話す事さえままならないただのアンデッド。昔からの習性や癖は残っているが、それ以外は全く判断しようのないアンデッド」
獄化・地装衣を使えば勝ち目はあるかもしれない……が、だめだ。
一人一殺のつもりで戦っているとは言えあれを使えば暫くは自力で動く事も出来なくなるほど体力や魔力を使う。
この後、アリスやエンリとリンリがもしもここまで追ってきた時、とても戦えないだろう。
「そして二つ目は意志的に一人の魂を呼び出し、その魂が入っていた生前の肉体に封じ込めるアンデッド。これは体が機能していない為、次第に腐り朽ち果てる事を除けば死者蘇生とも言える」
リヴァを倒すには剣術にだけ頼ってもだめだ。
雷化・天装衣と剣術を駆使した技で攻めるしかない。
「そのアンデッドは生前と同じ様に思考し、喋り、戦う……そう、他のアンデッドに比べてかなり強力じゃ」
「……なに?」
聞き流していただけだが、それが事実なら相手の戦力は大幅に強化されるだけじゃない。何度殺してもアンデットとなって襲って来るって事だ。強さも再現されるならば相手によってはこっちが詰みかねない。
「ふぉっふぉっふぉっ、年長の言う事はしっかり聞いておくべきじゃぞ。異能解放! 死魂召喚!」
いつの間にか煙は晴れており、現れたリヴァは地面に手を付く。低く鈍い地響きがなり、周りの木々が倒れていく。
それにより剥き出しになった地面がひび割れ、おぞましいうめき声のようなものが聞こえてくる。
「まさか……」
そしてあちこちから地面を破り、地上へと現れたアンデッドが顔を覗かせる。その数ざっと数十程度。
一年前に五万を相手にしたが、その時とは状況が全く違う。こいつらを相手にしつつもリヴァを倒さないと……
「わしの代わりにこいつらと……こいつが相手をする」
と、有象無象のアンデッドととは随分雰囲気の違うアンデッドがリヴァの隣に一人立っていた。
体はローブに包まれており、フードも被っている。僅かに覗いた顔にはピエロのような模様のお面が着けられている。
「逃げるのか?」
「まさか。もし全てが終わって生きていたらまた相手しようぞ」
とだけ言ってリヴァは霧のごとく消えた。また逃げられた。絶好の機会だったが、向こうに最初から俺と戦い続ける意思は感じられなかった。どうにも別の用件があるって感じだったが……
リヴァの事を考えていても仕方がない。今は目の前の敵を倒す事に集中すべきか。残ったのは俺を取り囲むアンデッドと、リヴァが自分の代わりとまで言った一体の特殊なアンデッド。
「お前らにかけてる時間はねーんだよ!!」
◇
同時刻、別の場所では。
森の中を颯爽と駆ける三つの閃光。一つは紫でもう二つは白色だ。
紫の閃光が木々の生い茂る森を人間離れした動きで駆け、その少し後を追いかける様に二つの閃光が駆けている。
「速いな」
「エンリ、このままじゃ追いつけないよ」
「任せておけ。波術 四方虎之陣」
エンリの左手から四つの水の塊が飛び出し、レオよりも早く動く。そしてレオを通り過ぎ、前後左右を位置取った。
水は虎へと形を変え、一斉にレオに迫る。
「ちっ……至天破邪剣征流 薙払の型 『横一文字斬り』!!」
レオは回転しながら抜刀し、虎之陣を相殺した。
だが、水圧の高い水の塊は強く、弾かれた水の衝撃は周りの木々をなぎ倒し、相殺して尚ちょっとした広場を作り出すほどの威力を見せる。
「軽いのにこんなに力が入る……流石デッテツのおっさん」
「何をブツブツと」
「追いつきましたよ」
その背後に白髪に褐色肌の双子の少女、エンリとリンリが立ちはだかる。だが、逃げていたわけでは無い。
アリスを一人にすればエヴァとシエラで倒せるという信頼があったからこそ、この二人を魔王から遠ざける動きをしていたのだ。
もうアリスと十分離したと判断したレオは闘志を放ちながら振り返る。
「悪いが手加減はしないぞ」
「フンッ……望むところだ!!」
「至天破邪剣征流 突破の型 『地を這う大蛇』 更に、『飛翔する鉤爪』!」
素早く銀月を地面に叩きつけ、地面を削りながら進む斬撃を放ち、刀を上げる時の力で飛ぶ斬撃を放つ。
それぞれの斬撃がエンリとリンリを狙い、地面、または空を斬りながら迫る。
「我流 虎ノ太刀!」
「水術 水圧爆散」
だが、炎を纏った剣の突きによって『飛翔する鉤爪』は破られ、水圧の爆発を纏った槍の一撃で『地を這う大蛇』も破られる。
舞いだした土煙が三人の姿を隠すが、風が強くそれもすぐに飛んでしまう。一撃ではあるが攻防を交え、お互いにお互いが強敵であると認めたちょうどその時、地面が揺れ、木々から鳥が一斉に飛び立った。
「なんだ、地震か?」
「これは……」
「アリス様の異能?」
その言葉の通り森の向こう、エンリとリンリの頭上には巨大な土塊の巨人が立ち上がる様に出現していた。
「なんだあれ。エヴァリオン、シエラ……いや、あの二人なら大丈夫だと思うが」
「何をよそ見している!」
「相手は私達ですよ!」
直後、巨人に注意していたレオは、炎剣と槍による猛威を食らう。炎剣を凌げば槍による攻撃を受け、槍を防げば炎剣による一撃を食らう。
レオは持ち前の反射神経と動体視力で二人の攻撃を銀月で受け止めるが、エンリとリンリの猛威は更に速度を増しレオを追い詰める。
「行くよ、エンリ。阿の呼吸」
「ああ、吽の呼吸」
一際強い二撃がレオを襲う。
なんとか銀月で受け止めはしたが、それでもレオの全身に響き、衝撃により後ろへ押される。
「「複合剣技 阿吽の太刀」」
炎剣と水槍が交差し、レオを斬り裂かんと迫る。
「至天破邪剣征流 突破の……くっ!!」
レオが技を出すよりも早く阿吽の太刀はレオに到達した。
咄嗟の判断で銀月を振り下ろして受けた。が、その衝撃は凄まじく、受けきれなかったレオは後ろに吹き飛ばされ、木に激突。
そのままぐったりと倒れてしまった。
「当たり前じゃ」
俺は爆散した体の欠片から再び再生し、じっと気配を探る。大爆発のせいで爆煙が立ち込め、お互いに視界を奪っている。
だが、俺には耳が、リヴァにも鍛え抜かれた勘がある。すぐにお互いの位置を見定め攻撃に入る。
「爆殺剣!」
煙に一太刀入ったかと思うと、その斬撃に沿って爆発が起こる。幸いにもすぐに後ろに飛んだ為ダメージはない。
「次はこっちの番だぞ。雷術 雷撃大砲」
手の間で作り出した巨大な雷丸を斬撃の出処へ向けて放つ。だが、それもリヴァには届かず、途中で切られてしまう。
「わしの異能について、少し教えてやろう」
いきなり何を……
いや、攻撃せずにお喋りしてくれると言うならそれはそれで好都合。今の内に作戦を……
「異能の名は死魂召喚。知っての通り死んだ者の魂を何かしらの物体に封じ傀儡とする異能」
エヴァ達とはかなり距離がある、とは言え今リヴァと一対一で勝てるのか……
「だがこの死魂召喚にも二種類ある。一つ目はヴァントでお前さんも戦ったであろう何も思考せず、話す事さえままならないただのアンデッド。昔からの習性や癖は残っているが、それ以外は全く判断しようのないアンデッド」
獄化・地装衣を使えば勝ち目はあるかもしれない……が、だめだ。
一人一殺のつもりで戦っているとは言えあれを使えば暫くは自力で動く事も出来なくなるほど体力や魔力を使う。
この後、アリスやエンリとリンリがもしもここまで追ってきた時、とても戦えないだろう。
「そして二つ目は意志的に一人の魂を呼び出し、その魂が入っていた生前の肉体に封じ込めるアンデッド。これは体が機能していない為、次第に腐り朽ち果てる事を除けば死者蘇生とも言える」
リヴァを倒すには剣術にだけ頼ってもだめだ。
雷化・天装衣と剣術を駆使した技で攻めるしかない。
「そのアンデッドは生前と同じ様に思考し、喋り、戦う……そう、他のアンデッドに比べてかなり強力じゃ」
「……なに?」
聞き流していただけだが、それが事実なら相手の戦力は大幅に強化されるだけじゃない。何度殺してもアンデットとなって襲って来るって事だ。強さも再現されるならば相手によってはこっちが詰みかねない。
「ふぉっふぉっふぉっ、年長の言う事はしっかり聞いておくべきじゃぞ。異能解放! 死魂召喚!」
いつの間にか煙は晴れており、現れたリヴァは地面に手を付く。低く鈍い地響きがなり、周りの木々が倒れていく。
それにより剥き出しになった地面がひび割れ、おぞましいうめき声のようなものが聞こえてくる。
「まさか……」
そしてあちこちから地面を破り、地上へと現れたアンデッドが顔を覗かせる。その数ざっと数十程度。
一年前に五万を相手にしたが、その時とは状況が全く違う。こいつらを相手にしつつもリヴァを倒さないと……
「わしの代わりにこいつらと……こいつが相手をする」
と、有象無象のアンデッドととは随分雰囲気の違うアンデッドがリヴァの隣に一人立っていた。
体はローブに包まれており、フードも被っている。僅かに覗いた顔にはピエロのような模様のお面が着けられている。
「逃げるのか?」
「まさか。もし全てが終わって生きていたらまた相手しようぞ」
とだけ言ってリヴァは霧のごとく消えた。また逃げられた。絶好の機会だったが、向こうに最初から俺と戦い続ける意思は感じられなかった。どうにも別の用件があるって感じだったが……
リヴァの事を考えていても仕方がない。今は目の前の敵を倒す事に集中すべきか。残ったのは俺を取り囲むアンデッドと、リヴァが自分の代わりとまで言った一体の特殊なアンデッド。
「お前らにかけてる時間はねーんだよ!!」
◇
同時刻、別の場所では。
森の中を颯爽と駆ける三つの閃光。一つは紫でもう二つは白色だ。
紫の閃光が木々の生い茂る森を人間離れした動きで駆け、その少し後を追いかける様に二つの閃光が駆けている。
「速いな」
「エンリ、このままじゃ追いつけないよ」
「任せておけ。波術 四方虎之陣」
エンリの左手から四つの水の塊が飛び出し、レオよりも早く動く。そしてレオを通り過ぎ、前後左右を位置取った。
水は虎へと形を変え、一斉にレオに迫る。
「ちっ……至天破邪剣征流 薙払の型 『横一文字斬り』!!」
レオは回転しながら抜刀し、虎之陣を相殺した。
だが、水圧の高い水の塊は強く、弾かれた水の衝撃は周りの木々をなぎ倒し、相殺して尚ちょっとした広場を作り出すほどの威力を見せる。
「軽いのにこんなに力が入る……流石デッテツのおっさん」
「何をブツブツと」
「追いつきましたよ」
その背後に白髪に褐色肌の双子の少女、エンリとリンリが立ちはだかる。だが、逃げていたわけでは無い。
アリスを一人にすればエヴァとシエラで倒せるという信頼があったからこそ、この二人を魔王から遠ざける動きをしていたのだ。
もうアリスと十分離したと判断したレオは闘志を放ちながら振り返る。
「悪いが手加減はしないぞ」
「フンッ……望むところだ!!」
「至天破邪剣征流 突破の型 『地を這う大蛇』 更に、『飛翔する鉤爪』!」
素早く銀月を地面に叩きつけ、地面を削りながら進む斬撃を放ち、刀を上げる時の力で飛ぶ斬撃を放つ。
それぞれの斬撃がエンリとリンリを狙い、地面、または空を斬りながら迫る。
「我流 虎ノ太刀!」
「水術 水圧爆散」
だが、炎を纏った剣の突きによって『飛翔する鉤爪』は破られ、水圧の爆発を纏った槍の一撃で『地を這う大蛇』も破られる。
舞いだした土煙が三人の姿を隠すが、風が強くそれもすぐに飛んでしまう。一撃ではあるが攻防を交え、お互いにお互いが強敵であると認めたちょうどその時、地面が揺れ、木々から鳥が一斉に飛び立った。
「なんだ、地震か?」
「これは……」
「アリス様の異能?」
その言葉の通り森の向こう、エンリとリンリの頭上には巨大な土塊の巨人が立ち上がる様に出現していた。
「なんだあれ。エヴァリオン、シエラ……いや、あの二人なら大丈夫だと思うが」
「何をよそ見している!」
「相手は私達ですよ!」
直後、巨人に注意していたレオは、炎剣と槍による猛威を食らう。炎剣を凌げば槍による攻撃を受け、槍を防げば炎剣による一撃を食らう。
レオは持ち前の反射神経と動体視力で二人の攻撃を銀月で受け止めるが、エンリとリンリの猛威は更に速度を増しレオを追い詰める。
「行くよ、エンリ。阿の呼吸」
「ああ、吽の呼吸」
一際強い二撃がレオを襲う。
なんとか銀月で受け止めはしたが、それでもレオの全身に響き、衝撃により後ろへ押される。
「「複合剣技 阿吽の太刀」」
炎剣と水槍が交差し、レオを斬り裂かんと迫る。
「至天破邪剣征流 突破の……くっ!!」
レオが技を出すよりも早く阿吽の太刀はレオに到達した。
咄嗟の判断で銀月を振り下ろして受けた。が、その衝撃は凄まじく、受けきれなかったレオは後ろに吹き飛ばされ、木に激突。
そのままぐったりと倒れてしまった。
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