最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
88話 ゴブリンの脅威
クロト達一行と雨刃が出会うよりも少し前、クロト達が依頼を受けた頃。
一組のパーティがゴブリンの巣を叩く為に森に入っていた。
「ま! 巨大な巣って言ったって所詮はゴブリンでしょ!」
シエラと同じく弓を持ち、革鎧を着た薄緑色の髪の女冒険者。ドレッド・ビート。
「油断大敵と言う言葉もある」
チャクラムと呼ばれる円形で刃のついた輪っか型のブーメランの様な武器を腰から下げた赤黒い髪の男冒険者が応える。彼はトロイア・マゼラン。
「あんまり油断はしたあかんで。ゴブリンの群れは上位種がおったら統制されとる。野良とはわけが違うからな」
「何が来ようと私が蹴り飛ばしてあげるわよ」
このパーティのリーダーらしき関西弁の男、アーク・ゼルブス。両手に円形の盾を持ち、その縁には刃が付けられている。
動きやすい装備に黒髪を長く伸ばしたアウル・アンドラス。格闘家だ。
「井の中の蛙にならなければいいがな」
「で……これが巣?」
森の中にある突き出た岩。
根本が入り口のように割れており、奥へ続いている。ゴブリンたちが更に掘ったせいもあり、中は迷路と化しているらしい。
「ほな、入っていこか。前衛は俺とアウルが 後衛は二人に任せたで」
「まっかせといてよ〜」
「問題ない」
四人は二列縦隊で洞窟に入った。
暫くは何も起きずにただ薄暗い洞窟を歩いていた四人だが、突然状況はひっくり返った。まず最初に、今まで一本道だったにも関わらず後ろからゴブリンの奇襲が起きた。
だがしかし、シルバー級冒険者パーティにその程度の奇襲は効かない。
後ろから約二十のゴブリンが迫ってくるが、すぐさま前衛に居た二人は後衛の二人と入れ替わりアークは盾で攻撃を受け、隙きあらば盾についた刃でゴブリンを殺す。素手を得意としているアウルはアークに比べて殺傷力こそ劣るものの、スピード、パワーに置いてはアークを勝り、ゴブリン達を次々に組み伏せていった。
後ろからの弓矢による正確な射撃、そしてチャクラムの変則的な攻撃により奇襲して来たゴブリンの四分の三を倒した。
だが、アーク達は普段、洞窟内での依頼はあまりしない。故に洞窟の中ではチームワークが上手く取れず、次第に疲労も溜まってくる。
「う……痛っ!」
「あ、ごめん!」
「ギャァシャァァァ」
ドレッドの放った矢がアークの太ももに刺さってしまったのだ。
今までゴブリンの攻撃を耐えていたアークだったが、それによって体勢が崩れ、ゴブリンにのしかかられる。
更に洞窟の奥、つまりは反対側からも更にゴブリンが押し寄せてきた。
ナイフや剣、盾を持った前衛を務めるゴブリン、その後ろに弓矢を装備したゴブリン。そして一番後ろにはローブを着たゴブリンが居た。
「嘘だろ……」
「あれってゴブリンの上位種……魔術師小鬼!?」
「アーク、まずいぞ」
「はぁ!」
「グギャァァ」
アークにのしかかっていたゴブリンをアウルが蹴り飛ばし、アークを解放する。
「せ、せやかて……この状況どうしたら」
「つべこべ……ッ! 言わないで……ッ! 目の前の敵を、殺る事を考えて!」
アウルが蹴り、殴り、そしてまた蹴りを繰り出す。目の前にはゴブリンが四体。後ろからは四十体前後のゴブリンが押し寄せている。
「悪い!」
アークは目の前のゴブリンを一体盾で押しやり、刃付き盾を持ったまま殴る。
そしてアウルの踵落としで最後の一体が気絶するも、死んではいない。ゴブリンにトドメを刺そうとするアークだが、その前に戦況は動いた。
「アーク……!」
「きゃあ!!」
「トロイア! ドレッド! アーク、そんなの後よ! 二人を助けましょ」
「ああ!」
後ろから詰めてくるだけだったゴブリンが一斉に走り出し、トロイアとドレッドに襲いかかっていた。
距離が少しあったこともあり、最初は矢とチャクラムで応戦する。が、弓矢は暗がりで狙いが逸れ、チャクラムは突き出た岩にぶつかり地面に落ちた。
「し、しま……」
「グギャギャギャギャ!」
スペルゴブリンから放たれた火球がトロイアに直撃し、トロイアは燃え上がる。
「トロイア……きゃぁぁぁ!」
火を消そうと躍起になり、暴れるトロイアをなだめる為、ドレッドが近付こうとするがゴブリン達に足を掴まれ、それを阻止される。
「ぎゃぁぁぁぁぁ……うあっあああああああああ!!」
そのままゴブリン達はドレッドに群がり、腹這いにすると……各々の武器でドレッドの腹を串刺しにした。
もがき苦しんだ後にドレッドはそのまま死んだ。
「ドレッド!!」
怒りを顕にしたアウルが飛び出してドレッドの死体に跨がるゴブリンを三体まとめて殴り飛ばす。だが、振りかぶり過ぎたせいアウルの体は殴った反動で他のゴブリンに対処できなかった。
直ぐにゴブリンに群がられ、地面に組み伏せられる。
「ぐぁぁぁ」
トロイアは転げ回って火を消したが、降り注ぐ矢が全身に突き刺さり更に苦しむ。そこへまた別のゴブリンが群がり武器でトロイアの体を何度も何度も突き刺す。
「やばい……やばいやばいやばいやばい。助けてくれぇぇ!!!」
リーダーであるアークは走りながら洞窟の出口へ走っていた。三人が殺られた時に、復讐心よりも恐怖心が勝り、走り出していたのだ。
「グギャァァァ」
「ギャシャァァァ」
「グゲゲゲゲギャァァ」
ゴブリンはそれを追いかける者とその場に残って死体を弄び、嬲り者にするものとで分かれた。
「アー……ク……あ……ああ……」
アウルの最後の声は、アークには届かない。
一組のパーティがゴブリンの巣を叩く為に森に入っていた。
「ま! 巨大な巣って言ったって所詮はゴブリンでしょ!」
シエラと同じく弓を持ち、革鎧を着た薄緑色の髪の女冒険者。ドレッド・ビート。
「油断大敵と言う言葉もある」
チャクラムと呼ばれる円形で刃のついた輪っか型のブーメランの様な武器を腰から下げた赤黒い髪の男冒険者が応える。彼はトロイア・マゼラン。
「あんまり油断はしたあかんで。ゴブリンの群れは上位種がおったら統制されとる。野良とはわけが違うからな」
「何が来ようと私が蹴り飛ばしてあげるわよ」
このパーティのリーダーらしき関西弁の男、アーク・ゼルブス。両手に円形の盾を持ち、その縁には刃が付けられている。
動きやすい装備に黒髪を長く伸ばしたアウル・アンドラス。格闘家だ。
「井の中の蛙にならなければいいがな」
「で……これが巣?」
森の中にある突き出た岩。
根本が入り口のように割れており、奥へ続いている。ゴブリンたちが更に掘ったせいもあり、中は迷路と化しているらしい。
「ほな、入っていこか。前衛は俺とアウルが 後衛は二人に任せたで」
「まっかせといてよ〜」
「問題ない」
四人は二列縦隊で洞窟に入った。
暫くは何も起きずにただ薄暗い洞窟を歩いていた四人だが、突然状況はひっくり返った。まず最初に、今まで一本道だったにも関わらず後ろからゴブリンの奇襲が起きた。
だがしかし、シルバー級冒険者パーティにその程度の奇襲は効かない。
後ろから約二十のゴブリンが迫ってくるが、すぐさま前衛に居た二人は後衛の二人と入れ替わりアークは盾で攻撃を受け、隙きあらば盾についた刃でゴブリンを殺す。素手を得意としているアウルはアークに比べて殺傷力こそ劣るものの、スピード、パワーに置いてはアークを勝り、ゴブリン達を次々に組み伏せていった。
後ろからの弓矢による正確な射撃、そしてチャクラムの変則的な攻撃により奇襲して来たゴブリンの四分の三を倒した。
だが、アーク達は普段、洞窟内での依頼はあまりしない。故に洞窟の中ではチームワークが上手く取れず、次第に疲労も溜まってくる。
「う……痛っ!」
「あ、ごめん!」
「ギャァシャァァァ」
ドレッドの放った矢がアークの太ももに刺さってしまったのだ。
今までゴブリンの攻撃を耐えていたアークだったが、それによって体勢が崩れ、ゴブリンにのしかかられる。
更に洞窟の奥、つまりは反対側からも更にゴブリンが押し寄せてきた。
ナイフや剣、盾を持った前衛を務めるゴブリン、その後ろに弓矢を装備したゴブリン。そして一番後ろにはローブを着たゴブリンが居た。
「嘘だろ……」
「あれってゴブリンの上位種……魔術師小鬼!?」
「アーク、まずいぞ」
「はぁ!」
「グギャァァ」
アークにのしかかっていたゴブリンをアウルが蹴り飛ばし、アークを解放する。
「せ、せやかて……この状況どうしたら」
「つべこべ……ッ! 言わないで……ッ! 目の前の敵を、殺る事を考えて!」
アウルが蹴り、殴り、そしてまた蹴りを繰り出す。目の前にはゴブリンが四体。後ろからは四十体前後のゴブリンが押し寄せている。
「悪い!」
アークは目の前のゴブリンを一体盾で押しやり、刃付き盾を持ったまま殴る。
そしてアウルの踵落としで最後の一体が気絶するも、死んではいない。ゴブリンにトドメを刺そうとするアークだが、その前に戦況は動いた。
「アーク……!」
「きゃあ!!」
「トロイア! ドレッド! アーク、そんなの後よ! 二人を助けましょ」
「ああ!」
後ろから詰めてくるだけだったゴブリンが一斉に走り出し、トロイアとドレッドに襲いかかっていた。
距離が少しあったこともあり、最初は矢とチャクラムで応戦する。が、弓矢は暗がりで狙いが逸れ、チャクラムは突き出た岩にぶつかり地面に落ちた。
「し、しま……」
「グギャギャギャギャ!」
スペルゴブリンから放たれた火球がトロイアに直撃し、トロイアは燃え上がる。
「トロイア……きゃぁぁぁ!」
火を消そうと躍起になり、暴れるトロイアをなだめる為、ドレッドが近付こうとするがゴブリン達に足を掴まれ、それを阻止される。
「ぎゃぁぁぁぁぁ……うあっあああああああああ!!」
そのままゴブリン達はドレッドに群がり、腹這いにすると……各々の武器でドレッドの腹を串刺しにした。
もがき苦しんだ後にドレッドはそのまま死んだ。
「ドレッド!!」
怒りを顕にしたアウルが飛び出してドレッドの死体に跨がるゴブリンを三体まとめて殴り飛ばす。だが、振りかぶり過ぎたせいアウルの体は殴った反動で他のゴブリンに対処できなかった。
直ぐにゴブリンに群がられ、地面に組み伏せられる。
「ぐぁぁぁ」
トロイアは転げ回って火を消したが、降り注ぐ矢が全身に突き刺さり更に苦しむ。そこへまた別のゴブリンが群がり武器でトロイアの体を何度も何度も突き刺す。
「やばい……やばいやばいやばいやばい。助けてくれぇぇ!!!」
リーダーであるアークは走りながら洞窟の出口へ走っていた。三人が殺られた時に、復讐心よりも恐怖心が勝り、走り出していたのだ。
「グギャァァァ」
「ギャシャァァァ」
「グゲゲゲゲギャァァ」
ゴブリンはそれを追いかける者とその場に残って死体を弄び、嬲り者にするものとで分かれた。
「アー……ク……あ……ああ……」
アウルの最後の声は、アークには届かない。
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