最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
79話 本気の刃
「おーい! クロト! シエラ!」
どうやら鎮魂の儀式は終わったらしく、レオとエヴァが来た。二人共かなり回復したように見える。
「お、終わったか?」
「うん! 今日はもう寝るってさ」
「了解! 行くぞ、シエラ」
「うむ!」
◇
それから更に一週間、傷を癒やす事に専念した俺達は、ほぼ全快にまで回復していた。
そして、いつまでもここにいる訳にはいかない俺達は名残惜しくもあるが、ハングル公爵領を出ることを決めた。
「もう行ってしまうのか」
「ああ、いつまでもここに居る訳にはいかないからな。明日の朝には出ようと思う」
「うむ、そうか。よし、ならば今日は宴だ!すぐに用意しろ!」
「「「うぉぉ!!」」」
その後ハンター隊の迅速な準備のおかげで日が暮れる頃には宴の準備が完了した。鎮魂の儀式で使ったのとはまた別の組み木が組まれ、盛大なキャンプファイヤーが模様される。
立食式で、あちこちに並べられたテーブルの上には一ヶ月前に倒したロックドラゴンの肉が乗っている。グラキエースドラゴンは山の主でのあり、テリア山に住む魔物への抑止力にもなっているらしいので、気絶させるだけで殺したわけではない。
「飲めー!踊れー!叫べー!」
「今日は飲むぞーー!!」
「ヒャホーー」
おかしい。ここは女性ばかりのハンター隊のはずなんだが、この雰囲気はブルーバードと変わらない。
エヴァはまた酒を飲んでベロベロに酔っている。レオは大笑いしながら酒を樽ごと飲んでる。どうしてこうも極端なんだ……あの二人は。
「楽しんでるか? クロト」
ロックドラゴンの肉を食いながらアイリスが声をかけてくる。俺は皆とは少し離れた所に腰を下ろしていた。
「ん?アイリスか。ああ、楽しんでるよ」
「そうか、それなら良かった。ロックドラゴンの肉は美味いだろ?」
「ああ、昔この山で食べたオークやベアーも美味いと思ったが、こいつはまた格別だな」
「だろ? 魔物は強い程美味いからな」
「ところであの台はなんなんだ?」
俺は気になっていた事を聞く。指差した先にはキャンプファイヤーの前に置かれたでかい台があった。特に何にも使われていないようだし、誰も上に乗っていないので、最初は何かの催しに使うのかと思ったが、そうでもなさそうだ。
「ん? クロトが用意しろと言ったんじゃないのか?」
「……? いや、俺はそんなこと言ってないが……」
「言ったのはわっちでありんす」
すると俺の視界を遮ってシエラが現れる。
今はハンター隊特有のコートを着ておらず、シンプルなシャツにスカート、革の胸当てと肩当てがくっついた様な物を付けている。肩には矢が大量に入った矢筒と弓矢が背負われている。
他のハンター隊は特に武装していないので、シエラの格好が変に目立っている。
「お、シエラか。何かに使うのか?」
「……クロト。わっちと決闘してくんなまし」
「け、決闘?」
シエラは無言でコクっと頷く。オッドアイの綺麗な目はどこか決意のこもった、強い光を放っていた。いきなりなんだとは思ったが、その眼の本気さにそんな疑問はすぐに消える。
「……わかった」
俺は立ち上がりシエラに近づく。シエラも頷き、二人で台の上へあがる。
「お、なんだ? 決闘かー?」
「いいねー!もっとやりな!」
周りからは酔もあるだろうが、けしかけるような声援が飛んでくる。
よく考えれば二ヶ月前、偶然会っただけだが、随分長く一緒にいた気がする。何を思っての決闘かまでは読み切れない。
だが、本気で悩み、考え、その末にこの結果導き出したに違いない。確信はない。ただ目から伝わってくる。
ならこっちも、本気で応えないと失礼だよな。
「全力で行くぞ」
俺はテンペスターを抜く。
ロックドラゴンの腹部に刺さっていたこいつをシエラが持って帰ってきてくれたらしい。正直失くしたと思ってへこんでたから、かなり嬉しかった。
「雷化・天装衣!」
“仲間を守る時”
イザベラさんと約束したこの術の使用条件。でも、イザベラさん……これは、この戦いは、仲間の誇りを守る戦いだから……許してくれ。
「行くぞ」
「来なんし」
シエラは矢をつがえ、弓を構える。俺はテンペスターを両手で握り走り出す。
「雷帝流 雷鋼剣!」
雷を纏った剣を大きく振りかぶりシエラに接近。矢を構えていたシエラはフッと力を抜き弓矢を捨てた。
俺は慌てて止まろうとするが、シエラの目を見て再び振り下ろす手に力を込める。その目は手加減など望んでいない、本気で来いと言わんばかりの目だった。
「結界術 滅力結界 展開!」
赤い光を放つ結界が張られ、俺の雷鋼剣とぶつかる。ぶつかった瞬間、結界に吸い込まれるような感覚がして、雷鋼剣の勢いが止まった。
力を吸収、消滅させる結界なのか……
「本気の刃でぶつからなければ、わからない事もあるでありんす」
結界が消え、自由になったテンペスターはその場に留まる。強い力をかけていた反動もあり、振り下ろせない。
シエラは腰にさしてあるナイフを抜き、魔力を高める。俺は左手をテンペスターから離し、腰にさしたままのシュデュンヤーを握る。
「聖なる一撃!!」
「黒帝流 打上剣狼!」
逆手で抜いたシュデュンヤーをそのまま上へ斬り上げる。シエラも逆手で持ったナイフを横一閃に振り払う。
シエラのナイフには眩い光が纏われ……激しい金属音を伴い二つの技がぶつかり合った。
どうやら鎮魂の儀式は終わったらしく、レオとエヴァが来た。二人共かなり回復したように見える。
「お、終わったか?」
「うん! 今日はもう寝るってさ」
「了解! 行くぞ、シエラ」
「うむ!」
◇
それから更に一週間、傷を癒やす事に専念した俺達は、ほぼ全快にまで回復していた。
そして、いつまでもここにいる訳にはいかない俺達は名残惜しくもあるが、ハングル公爵領を出ることを決めた。
「もう行ってしまうのか」
「ああ、いつまでもここに居る訳にはいかないからな。明日の朝には出ようと思う」
「うむ、そうか。よし、ならば今日は宴だ!すぐに用意しろ!」
「「「うぉぉ!!」」」
その後ハンター隊の迅速な準備のおかげで日が暮れる頃には宴の準備が完了した。鎮魂の儀式で使ったのとはまた別の組み木が組まれ、盛大なキャンプファイヤーが模様される。
立食式で、あちこちに並べられたテーブルの上には一ヶ月前に倒したロックドラゴンの肉が乗っている。グラキエースドラゴンは山の主でのあり、テリア山に住む魔物への抑止力にもなっているらしいので、気絶させるだけで殺したわけではない。
「飲めー!踊れー!叫べー!」
「今日は飲むぞーー!!」
「ヒャホーー」
おかしい。ここは女性ばかりのハンター隊のはずなんだが、この雰囲気はブルーバードと変わらない。
エヴァはまた酒を飲んでベロベロに酔っている。レオは大笑いしながら酒を樽ごと飲んでる。どうしてこうも極端なんだ……あの二人は。
「楽しんでるか? クロト」
ロックドラゴンの肉を食いながらアイリスが声をかけてくる。俺は皆とは少し離れた所に腰を下ろしていた。
「ん?アイリスか。ああ、楽しんでるよ」
「そうか、それなら良かった。ロックドラゴンの肉は美味いだろ?」
「ああ、昔この山で食べたオークやベアーも美味いと思ったが、こいつはまた格別だな」
「だろ? 魔物は強い程美味いからな」
「ところであの台はなんなんだ?」
俺は気になっていた事を聞く。指差した先にはキャンプファイヤーの前に置かれたでかい台があった。特に何にも使われていないようだし、誰も上に乗っていないので、最初は何かの催しに使うのかと思ったが、そうでもなさそうだ。
「ん? クロトが用意しろと言ったんじゃないのか?」
「……? いや、俺はそんなこと言ってないが……」
「言ったのはわっちでありんす」
すると俺の視界を遮ってシエラが現れる。
今はハンター隊特有のコートを着ておらず、シンプルなシャツにスカート、革の胸当てと肩当てがくっついた様な物を付けている。肩には矢が大量に入った矢筒と弓矢が背負われている。
他のハンター隊は特に武装していないので、シエラの格好が変に目立っている。
「お、シエラか。何かに使うのか?」
「……クロト。わっちと決闘してくんなまし」
「け、決闘?」
シエラは無言でコクっと頷く。オッドアイの綺麗な目はどこか決意のこもった、強い光を放っていた。いきなりなんだとは思ったが、その眼の本気さにそんな疑問はすぐに消える。
「……わかった」
俺は立ち上がりシエラに近づく。シエラも頷き、二人で台の上へあがる。
「お、なんだ? 決闘かー?」
「いいねー!もっとやりな!」
周りからは酔もあるだろうが、けしかけるような声援が飛んでくる。
よく考えれば二ヶ月前、偶然会っただけだが、随分長く一緒にいた気がする。何を思っての決闘かまでは読み切れない。
だが、本気で悩み、考え、その末にこの結果導き出したに違いない。確信はない。ただ目から伝わってくる。
ならこっちも、本気で応えないと失礼だよな。
「全力で行くぞ」
俺はテンペスターを抜く。
ロックドラゴンの腹部に刺さっていたこいつをシエラが持って帰ってきてくれたらしい。正直失くしたと思ってへこんでたから、かなり嬉しかった。
「雷化・天装衣!」
“仲間を守る時”
イザベラさんと約束したこの術の使用条件。でも、イザベラさん……これは、この戦いは、仲間の誇りを守る戦いだから……許してくれ。
「行くぞ」
「来なんし」
シエラは矢をつがえ、弓を構える。俺はテンペスターを両手で握り走り出す。
「雷帝流 雷鋼剣!」
雷を纏った剣を大きく振りかぶりシエラに接近。矢を構えていたシエラはフッと力を抜き弓矢を捨てた。
俺は慌てて止まろうとするが、シエラの目を見て再び振り下ろす手に力を込める。その目は手加減など望んでいない、本気で来いと言わんばかりの目だった。
「結界術 滅力結界 展開!」
赤い光を放つ結界が張られ、俺の雷鋼剣とぶつかる。ぶつかった瞬間、結界に吸い込まれるような感覚がして、雷鋼剣の勢いが止まった。
力を吸収、消滅させる結界なのか……
「本気の刃でぶつからなければ、わからない事もあるでありんす」
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シエラは腰にさしてあるナイフを抜き、魔力を高める。俺は左手をテンペスターから離し、腰にさしたままのシュデュンヤーを握る。
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